基礎スキーで最も大きな大会である全日本スキー技術選手権大会で、20代前半から活躍してきた、金子あゆみ選手と春原優衣選手にインタビュー。前後編にわたってお届けします。
前編では、第57回の技術選が中止になってしまった今の率直な気持ちや、技術選の今と昔、アイテムのこだわりなどを伺いました。
(写真左:春原優衣選手、右:金子あゆみ選手)
(ライター|デサント編集部、カメラマン|矢田部裕)
※インタビューは2020年3月3日に実施しました。
――技術選は中止になってしまいましたが、今の率直な思いを聞かせてください。
金子:やっぱり滑りたかったなっていうのはありますね。しょうがないですけど。
春原:1年に1回の大会なので、去年の全日本が終わってから今年の大会に向けてみんなそれぞれ調整してきて、違う技術も練習してきてるから、なくなるっていうのはやっぱり大きいですよね。
――もし今年も全日本があったら、どんな意気込みで臨もうと思っていましたか?
春原:みんな優勝を目指してたんじゃないですかね。私の目標も優勝。それと自分のベストの滑りをすること。応援してくれているお客さんたちに迫力のある滑りを見せたいなと思って、いつも大会に挑んでます。
――去年と比べて今年変えてきたことはありますか?
春原:(武田)竜さんが出てきたことによって、去年は技術の方向性が競技的な要素に変わっていって、どういう滑りをしたら良いのか分からなくて、自分のなかで迷走していた1年だったんです。でも今年はそういうことは考えずに、自分らしさである長身を最大限活かしていこうと思っていました。
春原選手は身長162cmで、トップ選手のなかでは長身が際立つ。
――金子選手の意気込みは?
金子:みんな一緒ですよね。私も優勝狙って取り組んでました。意識してたのは、すの(春原選手)とかぶるところもあるんだけど、点数の出る滑りがレーシング寄りになってカービングとかをみんな練習してきてはいるけど、結局は自分らしさがないとダメだなって去年気付いて。
自分が納得できる「自分の良い滑り」の質を高める。今さら新しいことって言われても私はできないと思うし、自分らしさで今までやってきたから、それは消さなくても良いんじゃないかなって。
自分の良さは残しつつ、精度を上げる。失敗しないとか体の向きを整えるとか。その照準をいかに大会に定められるかを意識して調整してきてました。
金子選手は身長151cmと小柄ながらも、力強い滑りを見せる。
――最近の滑りのトレンドを教えてください。
金子:武田竜。竜さんは何しても点数が出る。ああいう波に乗りたいなって思いますよね。
春原:スキーの動きがずば抜けて違う。張り付き感っていうか。すごく楽に滑ってるように見えるんだけど、でも乗っている位置がすごく良いからスキーが走ってる感じも見える。
武田竜選手は、2019年の第56回全日本スキー技術選手権大会の男子の優勝選手。
――印象に残っている過去の大会はありますか?
金子:私は、大会2週間前に捻挫して、直前は全然練習できないまま大会に出たけど、良い滑りができて2番だったときかな。苦しかったシーズンだから、よく覚えています。
春原:私は、2番になった、初めて表彰台に乗った年はやっぱり印象に残ってるけど、でもそこを見てると勝てないから。次に進まないとね。
当時の春原選手。
春原:その頃は、あゆみのほうが先に大会出てたし、あゆみみたいになりたいなって思ってて。前の年の順位も11番くらいだったんですよ。だからプレッシャーのないなかで、淡々と自分のしたい滑りをして、その2番になれました。そのときの気持ちに戻りたいです、あのときはスキーを純粋に楽しんでたので(笑)。
金子:あの頃は2番でもうれしかったけど、今は2番じゃ嫌じゃん。優勝しないと喜べないよね。
――今までの大会で、アクシデントや珍エピソード、大転倒などあれば教えてください。
春原:ないかも、意外と多分順調にきてるかな。
金子:珍エピソードはないけど、私はほぼ転んでると思う(笑)。最近は減ってきたけど、一時は2分の1くらいの確率で転んでた(笑)。
――大会中、ライバル選手同士、意識したりピリピリしたりしますか?
金子:意識はしますね。でも、今より昔のほうが点数追って1種目ごとに一喜一憂してたかな。
春原:多分、みんな自分が一番うまいと思ってると思います。点数見て、「なんで今負けたんだろう」とか「私のほうがうまいじゃん」みたいな、そういう気持ちはそれぞれ持ってる(笑)。
金子:トップ選手のレベルはみんな変わらないですからね。
春原:「私のほうが良かったでしょ」とか、そのくらい強気ではいる(笑)。
――今後活躍しそうな、注目している選手がいれば教えてください。
金子:北海道の大場優希(おおばゆうき)ちゃんかな。でも若手って言ってももう30歳か。
春原:年齢私たちとあんまり変わんないよね。デモもやってるから歴も長いよね。
金子:本当に強い若手が出てきたら辞めるかも。技術選で今まで1回も年下に負けたことないんですよ。唯一負けそうになったのは優希ちゃんだったと思う。負けなかったけど(笑)。
春原:負けたくないよね。負けないで終わりたいよね。
金子:ね。負けるギリギリで辞めたくて途中棄権するかも(笑)。でもまだ大丈夫かな(笑)。
――ストックは伸縮できるものを使っていますか?それぞれ何cmにしていますか?
春原:私は変えてます。ロングが105cmで、ショートが100cmにしてます。コブも大体そのくらい。結構雪質とかそのときの調子によって変えてます。101cmのときもあるし。
金子:すごい、敏感だね(笑)。私はコブに合わせてて、ロングも変えてないです。95cmくらい。ロングあんまりストック使わないし良いかなって。こぐときだけ、空こぎしないように気を付けてます。
コブの撮影で、躍動感のある滑りを見せてくれた両選手。赤いウェアが春原選手、イエロー×ネイビーのウェアが金子選手。
――こんな種目があったら面白いのに、という種目はありますか?
金子:ウェーブは復活しても良いかなと思いますね。昔結構あったじゃないですか、名木山とかでも。
春原:何だろうなあ、年々いろいろな種目が出てくるから対応するのが大変で(笑)。
金子:韓国で出た大会に2人同時に滑ってくる種目があったんですけど、採点の基準がちょっと分かりづらかったので、そこにショートポールとか立てたら面白いかなと思うけど、そうするとまた武田竜の時代が来るから(笑)。
でもお客さんは喜ぶんじゃないかなと思う。そこでターンの質も見たりして。観客にとって採点基準が分かりやすいものが良いと思います。
――金子選手と春原選手のインタビューは後編に続きます!
<プロフィール>
金子 あゆみ
奥只見丸山スキークラブ
1987年12月22日生まれ
2019年 全日本スキー技術選手権大会女子総合 2位
SAJナショナルデモンストレーター
春原 優衣
小賀坂スキークラブ
1987年9月8日生まれ
2019年 全日本スキー技術選手権大会女子総合 3位
SAJナショナルデモンストレーター
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