1人でフェンシング・水泳・馬術・レーザーラン(射撃・ランニング)の5種目をこなし、キング・オブ・スポーツと呼ばれる近代五種競技。
そんな近代五種競技で国内トップクラスの実績を持ち、モデルとしても活躍するのが、スポーツブランド「デサント」のアンバサダーを務める才藤歩夢選手です。
常に複数の競技を想定したトレーニングを積んでいる才藤選手に、日々のトレーニング内容や一般女性が自宅でできるトレーニングメニューについて聞きました。
近代五種選手のトレーニング内容とは
——それぞれの競技に向けて、普段はどのようなトレーニングをしているのか聞かせてください。
例えば馬術競技は、本番でどの馬に乗れるか当日まで分からないので、どんな馬とも走れるようにさまざまな馬に乗りながら練習しています。馬にも気性があるので、それぞれの馬に合わせた乗り方をしなければいけないんです。
また、フェンシングは基本的に本番同様の対人練習がメインで、あまり1人で練習することはないですね。
水泳やランは、その日によって長い距離をゆっくり泳いだり走ったり、スピードを意識したインターバルトレーニングなどメニューもさまざまです。
——それぞれのトレーニングが、別の競技に活きることもあるのでしょうか?
ありますね。例えばランや水泳で培われたスタミナは、フェンシングやほかの競技で活かされています。普段から走り込んでいるからこそ、試合の後半になっても集中力を切らさずに戦えていると思います。
また、馬術で磨かれた体幹やバランス感覚は、ランやフェンシングにも活きていますね。軸を崩さずに走れたり、フェンシングで攻めるときもバランスを崩しにくくなりますし、もし崩してもすぐに戻れるようになりました。
——まったく別の競技であっても、実は影響し合っているんですね。すべての競技に共通して行っているトレーニングもあるのでしょうか?
週に1~2度はウエイトトレーニングをしていますし、水泳の前にも筋力or自重トレーニングをしています。特に意識して鍛えているのが「体幹」(※)です。
体幹を鍛えてうまく使えるようになれば、腕や脚にかかる負担を減らし効率的に動けるようになりますし、馬に乗るときも軸がブレないので馬に負担をかけることもありません。
また、ウエイトトレーニングは身体を鍛えるだけでなく、体幹を含めどの筋肉を使うのか意識することも目的です。どの筋肉を使っているのか練習中に意識できていれば、本番でも使いたい筋肉が使えて安定したフォームを持続できるので。
逆に、筋肉を意識できず、普段使わない筋肉が疲れたときはフォームが乱れている証拠なので、フォームを修正するきっかけにもなります。
※体幹トレーニング:頭部と四肢(手足)を除く胴体を強化するトレーニングのこと。表層にあるアウターマッスルではなく、深層部にあるインナーマッスルを鍛えるのが一般的。バランス感覚を鍛え、身体の安定性が高まり、効率的に身体を使えるようになる。
——水泳前にどのようなトレーニングをしているのかも教えてください。
水泳の前は、腕立て伏せやV字腹筋など、道具を使わない自重トレーニング(※)をしています。
ここでのトレーニングは、より身体の感覚を意識する目的が強いです。水中では筋肉を意識するのが難しいので、泳ぐ前に大きな筋肉を刺激して、泳いでいるときも大きな筋肉を使えるようにしています。
時間にして10~15分程度、種目にして10種類ほどのトレーニングをしていますね。
※自重トレーニング:道具を使わず、自らの体重で身体に負荷をかけるトレーニングのこと。道具を使わないため、筋肉への負荷を調整しやすく、怪我をしにくいのが特徴。
女性にこそ勧めたい「体幹トレーニング」
——今回は読者に向けて体幹トレーニングを教えてもらいたいのですが、一般の方が体幹トレーニングをするメリットがあれば聞かせてください。
体幹トレーニングは、筋トレに比べてサイズアップしないのがメリットだと思います。筋トレをすることで筋肉が大きくなってしまい、着たい服が着れなくなることに抵抗を感じている女性も多いはずです。
体幹トレーニングで主に鍛えられるのはインナーマッスルという、身体の奥にある筋肉でなかなか肥大しないため、鍛えても身体が大きくなりづらいです。
自宅でできるメニューばかりなので、気軽に行えるのもメリットだと思います。
——トレーニングを続けるために、どのようにモチベーションを保っていますか?
私はトレーニングが好きなので、あまりモチベーションを意識したことはありませんが、自分の成長を実感すればモチベーションになると思います。
例えば最初は5回しかできなかったメニューも、トレーニングを続けて10回できるようになったら大きな成長ですよね。
日々の生活であまり変化を感じられないという方は、トレーニングを続けることで自分の成長を実感し、生活にもメリハリが生まれると思います。
——トレーニングの効果を高めるために、意識していることがあれば教えてください。
トレーニングが終わった後は、できるだけ時間を置かずにプロテインを飲むようにしています。自宅ならプロテインも摂取しやすいと思うので、ぜひトレーニング後30分以内に摂取するよう意識してみてください。
また、疲労を回復するためには、普段の食事から摂る栄養も重要です。
ただし、食事だけで十分な栄養を摂取するのは難しいと思うので、足りない分はサプリメントなどを活用するのもおすすめですね。
トップアスリートが教える自宅でできる体幹トレーニング3選
才藤選手へのインタビュー後、アスリートではない一般女性でも自宅でできる体幹トレーニングを3つ教えていただきました。
自宅でも取り組める内容になっているので、ぜひチェックして今日からトライしてみてください。
体幹トレーニング①
まずは写真のように横を向いて、左手と両足で身体を支えます。
このとき、両足から頭まで真っ直ぐになるように腰の位置を意識してください。姿勢が保てたら右手で水を入れたペットボトルを持って、天井に向けて高く上げます。
姿勢を維持するだけで精一杯の方はペットボトルを持たなくても良いですし、より負荷を高めたい方は大きなペットボトルにチャレンジしてみましょう。
ペットボトルを持った右手を左脇の下を通して、目一杯後ろに持っていきます。再び天井に向けて腕を上げ、元の姿勢に戻す。この動きの繰り返しです。
10~15回を目安に左右両方を行い、1日に1~3セット行ってください。余裕のある方は、下になる腕を曲げて肘で身体を支えると負荷が高まります。
体幹トレーニング②
続いてのトレーニングは、腕立て伏せの姿勢から足を少しだけ開いた状態でスタートします。
肘と膝を曲げた反動で身体を浮かせたら、両手両足を少しだけ開きます。5回かけて少しずつ両手両足を開いていき、最終的に次の写真のように目一杯両手両足を開いてください。
両手両足を開いたら、今度は同じように元の状態に戻っていきます。「5回跳んで開き、5回跳んで戻る」を1回として、10回を1セットとします。1日1~3セットを目安に続けてください。
5回跳ぶのが難しい方は「1回で両手両足を開き、1回で戻る」ことから始めてみましょう。慣れてきたら2回、3回と跳ぶ回数を増やしていきます。
いきなり両手両足で跳ぶのが難しい方は膝を地面につけて、腕だけでやってみてください。
体幹トレーニング③
続いてのトレーニングは壁を使います。腕立て伏せの状態から、壁に足をつけて身体が水平になるようキープします。
この姿勢が厳しい方は、足を壁の高いところにつけてみましょう。ただし、足から頭まで真っ直ぐになるように腰の位置は意識してください。
姿勢が安定したら、左手を右肩につけて、また地面に戻します。
今度は右手を同じようにして、左右交互に10回繰り返します。こちらも1日1~3セットを目安に続けてみてください。
余裕がある方は、右手と左足を同時に上げて戻し、今度は左手と右足を上げてを繰り返します。手や足を上げても、腰が上がったり下がったりしないよう意識してください。より体幹への負荷を強められます。