コンプレッションウェアでランニングタイツがきついと感じる悩みを解消!その効果にも迫る

コンプレッションウェアでランニングタイツがきついと感じる悩みを解消!その効果にも迫る

  • 2020/10/26 (月)
  • 2023/07/20 (木)

「ランニング中に足が痛くなる」「正しいフォームが分からない」「よくケガをする」など、ランナーにとって走りへの疑問や悩みはつきもの。

現状よりもワンランク上の走りを目指す人は、ランニングの際にぜひ「コンプレッションウェア」を着用する“新・習慣”を取り入れてみてはいかがでしょうか。

コンプレッションウェアとは、ランニング中に着用することで筋肉や関節などに適度な圧力を加えるアイテム。疲労回復・ケガの予防・姿勢の矯正などを目的に、多くのプロランナーが愛用しています。

最近では半袖・ショーツ・長袖・レギンスなど、各スポーツメーカーがランニングに合わせたモデルを販売。そうしたなか、デサントからランニングに最適な新たなコンプレッションウェア「ASU-LEAD(アスリード)」が登場しました。

“新・ランニング習慣”と銘打たれたコンセプトの背景に、どのような工夫やこだわりが詰まっているのでしょうか。

そこで今回は、コンプレッションウェアがもたらす効果を検証するため、大阪にある株式会社デサントのスポーツアパレル開発拠点「DISC OSAKA(ディスク オオサカ)」に潜入。

デザイナーの箕浦康隆氏と開発者の山田恵里氏に、「アスリード」の開発秘話やデサントにおけるコンプレッションウェア開発の変遷について伺いました。

富士通陸上競技部 鈴木健吾選手がアスリードを着用されてマラソン日本新記録を樹立いたしました。

新コンプレッションウェア「ASU-LEAD(アスリード)」とは

運動前後の膝屈伸トルク比較

――まずは「アスリード」のコンセプト、効果についてお聞かせください。

山田:「アスリード」は「20hPaの圧力をかけるとパフォーマンスの低下が抑制できる」(上表参照)という、「DISC OSAKA」での研究結果をもとに開発されました。当社の水着開発のノウハウを応用することで、伸縮性や着心地に優れたコンプレッションウェアを実現しています。

箕浦:アスリードには、ランニング後もはき続けることで翌日の負担軽減にも期待できます。このことから、「アスリート」「明日をリードする」という意味合いをかけて「アスリード」と名付けました。

――「アスリード」のラインナップとして展開されている、「ハーフタイツ」「ロングタイツ」「カーフタイツ」について解説をお願いします。

インタビューに答える箕浦氏

箕浦:研究を通して、運動中のパフォーマンス低下を抑制するためには「太もも」と「ふくらはぎ」に20hPaの圧力をかけることが有効だと分かりました。

そのため、まずは太ももを締める「ハーフパンツ」と、ふくらはぎを締める「カーフタイツ」を開発。運動後の着用時にもストレスを感じにくいよう「太もも」「ふくらはぎ」でアイテムを分け、アスリードの軸である“パフォーマンス低下を抑制すること”を意識しました。

インタビューに答える箕浦氏

山田:ランナーは走る頻度が多い方ほど、ロングタイツよりもサッとはけるハーフタイツを好む傾向があります。一方で、ロングタイツにも需要はあることを見込んで、「ロングタイツ」もラインナップに加えました。

――そのほか、開発の過程でこだわったポイントはありますか?

ハーフパンツタイプのアスリードの写真

箕浦:とにかく縫い目を少なくしたことですね。衣服において“縫い目”は肌への当たりが気になる要因になりやすく、着心地の悪さにつながります。特にコンプレッションウェアは肌に直接触れるものなので、ストレスの少ない着心地を目指しました。

山田:それと縫い目が多いことで、ウェアが全体的に固くなってしまうデメリットもあると言われています。そのため、太ももとふくらはぎには確実に20hPaの圧力が加わりつつも、必要ない部分には無駄な引っかかりが出ないよう縫う部分をなるべく少なくした設計にしました。

――素材へのこだわりもお聞かせください。

引っ張りながら素材を見ている様子

山田:生地を引っ張ったときに戻る力のことを「キックバック」と言うのですが、足の太さによってはキックバックの圧がきつく感じてしまうこともあります。

どのような方にも使っていただきやすいように、動きやすさを意識してキックバックを弱めた設計に。一方で、伸縮性のバランスに優れた素材を使用していますので、「キックバックが弱い=伸びやすい」といった心配もありません。

開発チームが目指したのは「機能性」と「着心地」の両立

実際に着てみて実験している様子

――改めて、「アスリード」の誕生までの経緯をお聞かせください。

箕浦:かつてデサントのコンプレッションウェアは、「SKINS(スキンズ)※」というブランドをメインに販売していました。そして「SKINS」の取り扱い終了に伴い、新たなコンプレッションウェア開発に取り組むべく「アスリード」のプロジェクトが始まりました。

※「SKINS(スキンズ)」は、2020年9月30日をもって取り扱いを終了。

山田:実はデサントでは、2014年頃から「20hPaの着圧」に関するデータは取れていました。そのため、「アスリード」は満を持してこの結果を2020年に製品化できたという形です。

――「アスリード」を開発するうえで、特に苦労されたのはどのような部分でしょうか?

パソコンを見る様子

箕浦:コンプレッションウェアを作るときに一番簡単なのは、いくつものパーツを縫い合わせる手法。しかし先ほどお話したように、着心地も重視する「アスリード」は縫い目が少ない点にこだわりがあります。

「こんなに切り替えが少ないのに、20hPaの圧力が必要な箇所にきちんとかかる」というインパクトを大切にしたかったので、デザインもシンプルにライン1つにしました。

コンプレッションウェアの作成時の縫い合わせについて話す

だからこそ、このラインを入れる場所には徹底的にこだわりましたね。シンプルがゆえにごまかしはきかないので。ラインがきちんとふくらはぎに沿っているか、ヒップラインがきれいに見えるかという点を重視しました。

コンプレッションウェアのラインがきれいに見えているか話す

山田:私の場合は素材選びの段階ですね。誰がはいても20hPaの圧力がかかるように設計しなくてはいけないので、生地のデータを取ったり、過去のデータを引っ張ってきたり…。とにかくコンプレッションウェアに最適な素材探しに奔走しました。

――今回「DISC OSAKA」での研究結果をもとに商品開発されていますが、「DISC OSAKA」では普段どのような方法で研究されているのでしょうか?

研究・開発施設のDISC OSAKAの外観写真

山田:「DISC OSAKA」では「発想を物に」という考えのもと、湧き出た案をすぐに具現化し、試して、修正するというスピード感を大切にしています。今回も箕浦さんにコンプレッションウェアを着用してもらって、測定装置を装着して走る試験を何度も繰り返しながら開発していきました。

箕浦:スポーツウェアにおいて、確かなエビデンスは何より重要でしょう。ほかの製品についても言えることですが、「DISC OSAKA」があることで僕らも自信を持って商品を発売できます。

――「DISC OSAKA」で実施する試験は、どのようにデータを取っていますか?

タブレットに表示されている実験データの写真

山田:今回は呼気量を測定するマスクと、心拍数を測定するバンドを用いました。両装置を装着し、コンプレッションウェア着用時、そして通常時を比較することでデータを取得していきます。

ランニングの可能性を広げるデサントのコンプレッションウェア

実際に走った実験をしている様子

――デサントでは過去にGENOME(ジェノーム)というコンプレッションウェアも販売されていましたが、「アスリード」との違いを解説お願いします。

箕浦:ジェノームは、もともと「より速い走りをサポートする」というコンセプトで売り出していた商品。「アスリード」は「運動中、運動後のパフォーマンスの低下を防ぐ」ということにフォーカスした製品なので、機能的には異なります。

――今後のコンプレッションウェア開発にも期待が持てそうですね。

各タイプのアスリードが並んでいる写真

箕浦:コンプレッションウェア自体がまだ一般的に認知されていないと感じています。知ってはいても「どれも一緒だろうな」「自分には必要ないな」と考えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

そのため、今後は日常的に使える着心地やデサントならではの機能性を感じていただくことを課題として、製品開発に取り組んでいきます。

まとめ

スポーツで得た活力を明日へと活かす「アスリード」。今回の取材では開発過程における細やかな工夫と、研究開発拠点「DISC OSAKA」での測定によって裏付けられたエビデンスを実感できました。

日頃の努力の成果をより感じるために、アスリードを取り入れて“新・ランニング習慣”を感じてみてはいかがでしょうか。

富士通陸上競技部 鈴木健吾選手がアスリードを着用されてマラソン日本新記録を樹立いたしました。

<プロフィール>

山田さんと箕浦さんのプロフィール写真

開発担当
山田恵里(画像左)

2013年度入社。現在はコンプレッションウェアの開発と、アリーナのレーシング水着の開発を中心に担当。開発では自身も1人のユーザーであるという気持ちを忘れず、選手に寄り添いながらもスピード感のある業務を意識している。

デザイナー
箕浦康隆(画像右)

1990年度入社。野球・ランニング・バレー・バスケなど、さまざまな商品開発に携わる。常に新しいことにチャレンジし、インプット&アウトプットを実行することがモットー。ユーザー視点に立ち、仮説と実証を繰り返すことを心掛けている。

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