長距離やマラソンを疲れにくく効率的に走る「ランニングエコノミー」とは?押さえるべきコツや走り方を紹介

長距離やマラソンを疲れにくく効率的に走る「ランニングエコノミー」とは?押さえるべきコツや走り方を紹介

  • 2022/04/13 (水)
  • 2023/07/03 (月)

フルマラソンなどの長い距離を走るためには、身体に負担が少なく、長距離に適した効率の良い走り方、方法を意識する必要があります。

フルマラソン完走にチャレンジしたい方やタイムを縮めたい方、長い距離を走りたい方が念頭に置いておくべきことやコツを、姿勢改善専門パーソナルトレーニングジム「ウィンゲート・パルス」のランニングパーソナルトレーナー・齋藤大輔さんが解説。

セルフチェックの方法や、最後には、長い距離を楽しく走りたい方のニーズに応える新機能ランニングシューズも併せて紹介します。

 

<プロフィール>

齋藤大輔さんのプロフィール画像

株式会社ウィンゲート 齋藤大輔

鍼灸マッサージ師の資格を取得後、独学でトレーニングを学ぶ。School of movementの朝倉全紀氏の「ムーブメントファンダメンタルズ」から大きく影響を受け、ストレングストレーナーとしても活動。2018年よりメディカルとフィジカルの両方の観点から女子100mハードルの寺田明日香選手のサポートを始め、目標であった東京大会の出場を果たす。現在は、板橋区志村3丁目にある「ウィンゲートトレーニングセンター」で、一般の方から市民ランナーや実業団所属ランナー、陸上短距離選手、マウンテンバイク、実業団柔道選手、スノーボード(アルペン競技)日本代表など、幅広いカテゴリーのクライアントを指導。

“走る”の前に知っておきたい。長距離走で疲れにくい姿勢とは?

“走る”の前に知っておきたい。長距離走で疲れにくい姿勢とは?

長距離を走るうえで知っておいてほしいのが「ランニングエコノミー」という考え方。

つまり、いかに少ないエネルギーで、効率的に走り続けるかということが、フルマラソンなどの長い距離を走るためには大切になります。

効率が悪い走りの原因

では、“効率が悪い走り”の原因となるのはどのようなポイントなのでしょうか。

1つは「マルアライメント」と言われる不良姿勢。もう1つは「マルユース」、つまり誤ったフォーム、悪いフォームのことです。

そこでまず、“走る”フォームを考える大前提として、姿勢について知ることから始めましょう。

フルマラソンなどの長距離を走る場合、数時間の間は身体を動かし続け、走り続けなければいけません。その際に不良姿勢のまま走るのか、理想的な姿勢で走るのかによって効率性は大きく異なります。

走る姿勢の例

※左から「反り腰」「理想」「猫背」の姿勢イメージ。

例えば猫背の人の場合、頭が前に出ている分バランスを保とうとして、かかと荷重になりがちです。自分では前に進もうとしているのに、後ろに体重がかかっている状態になってしまうので、走るときにも非効率です。

まずは日常生活において、基本的な正しい姿勢を意識することが、疲れにくく効率的な走りを実現するための基盤になります。

そこで、私たちの場合はトレーニングに先立ち「シセイカルテ」というシステムで、姿勢を見直すことから始めています。AI姿勢分析機能により、身体の傾きや歪み、柔軟性を知ることができます。

シセイカルテの比較

このようなシステムを使えないケースでも、例えば自分で鏡を見たり写真を撮ったりして左右のバランスを把握し、ストレッチなどによって改善することは、不良姿勢の対策として効果的です。

フルマラソンや長距離に適した、疲れにくくペースを保てるランニングフォームとは?

フルマラソンや長距離に適した、疲れにくくペースを保てるランニングフォームとは?

フルマラソンのように長距離を走るうえでは、疲れにくく、ペースを保てるフォームが記録向上の肝となります。そこで、理想のフォームに近付くために気を付けるポイントについて紹介します。

かかと着地は非効率!まずはミッドフット走法を心掛ける

走る3つのフォーム

走るときのフォームには、大きく分けて3つのスタイルがあります。

つま先から着地する「フォアフット走法」、かかとから着地する「ヒールストライク走法」、足裏全体で着地する「ミッドフット走法」。

どの走法もそれぞれメリット、デメリットがありますが、長距離を走る際の効率性という視点で考えると、ヒールストライク走法はリスクがあります。

ヒールストライク走法

ヒールストライク走法。

ヒールストライク走法はかかとから接地し、つま先で蹴り出すので、単純に足の裏が接地している時間が長くなり、その分足にストレスがかかり多くのエネルギーを要するという考え方です。

走るフォームの確認

通常、人が歩くときはかかとから接地してつま先から抜けるので、ランニングするときも同様にかかとから接地するのが一般的と捉えがちですが、徐々に走るスピードが上がるにつれ、着地する部分が足の前方へと移るのが通例。短距離走の選手の場合には、つま先寄りの部分で接地します。

ミッドフット走法

ミッドフット走法。

かつては長距離の走法もウォーキング寄りだったことから、ヒールストライク走法やミッドフット走法が主流でしたが、長距離走の高速化によりつま先に近い前足部で接地するフォームを取り入れる選手が増加。

ヒールストライク走法より、ミッドフット走法やフォアフット走法のほうが推進力も出て、効率的な走りができるというメリットがあります。

フォアフット走法

フォアフット走法。

ただし、つま先で接地することを意識しすぎると、股関節や脚に負担がかかり、ケガにつながることも。

フォアフット走法を取り入れるには、ウエイトトレーニングなどにより、しっかりと脚の筋力を強化した状態であることが重要になるため、一般のランナーの方は、まずミッドフット走法を心掛けると良いでしょう。

ケガが起きやすい「ニーイン&トゥーアウト」に注意。

ニーイン&トゥーアウト

ランニングの際には、股関節の動きも意識したいポイントです。

股関節の動きには足を上げるときと、足を下げるときの動きがあります。長距離を走る際、これらの動きのなかで陥りやすいエラーとして、2つのパターンがあります。

股関節の動きについて解説している画像

1つ目は、膝が内側に入ってしまい、つま先は真っ直ぐもしくは外側を向いてしまうケース。これは股関節の内転と内旋という動きが原因です。

この場合、膝の内側に非常に大きな負荷がかかってしまい、非効率な走り方であるだけでなく、故障の原因にもなります。内転・内旋は女性に多く見られるという傾向があります。

2つ目は、つま先が外側を向き、膝も外側に開いてしまっているケース。いわゆるガニ股のような格好です。股関節の外転・外旋という動きに原因があります。

カルテ画像

つま先/膝が外側に開いているとO脚になりやすく、太ももの外側が硬くなりやすい。

こういったエラーを改善するためには、筋肉を緩めるストレッチが効果的です。

例えば、股関節の内転・内旋によってX脚になっている場合は、内ももが硬くなりやすいので内ももを柔らかくする内転筋のストレッチを。

X脚に効く内転筋のストレッチ

X脚に効く内転筋のストレッチ。

逆に外転・外旋によりO脚気味になっている人は、中臀筋と呼ばれる太ももの外側をストレッチで柔らかくするのが効果的です。

O脚に効く中臀筋のストレッチ

O脚に効く中臀筋のストレッチ。

使いすぎて硬くなっている太もも外側の筋肉をストレッチで緩めたら、今度は普段からうまく使えていない太もも内側の筋肉を鍛えていく。このサイクルによって、バランスの良い屈曲伸展の動きが可能になります。

X脚に効く中臀筋のトレーニング

X脚に効く中臀筋のトレーニング。

O脚に効く内転筋のトレーニング

O脚に効く内転筋のトレーニング。

肩だけを動かすのはNG!腕振りは肩・肩甲骨・胸椎の連動を意識

腕振りの方法

走る際、腕だけを振ってもあまり推進力にはつながりません。腕だけでなく、肩甲骨・胸椎を連動させて動かすことを意識して腕振りをするようにしましょう。

例えば右肘を引いたら、それに伴って胸椎を中心に身体が右回転でねじれ、反動で自然に左肩が前に出やすくなります。反対側も同じです。

カルテ画像

肩が上がるかのチェック。

この動きをスムーズに行うためには、あらかじめしっかり肩が上がるかどうか、肘がしっかり後ろまで引けるかなど、肩の柔軟性をチェックしましょう。

加えて、左右の腕振りのバランスが取れていることも重要。片側はしっかりと連動した腕振りができているのに、反対側は肩から下だけを振って胸椎を中心に身体がねじれていないというケースも見られます。

腕振りについて解説する齋藤さん

しっかり後ろに引くことができていないほうの腕は横に逃げるような形になり、前から見ると脇が空いているように見えます。動画などを撮影してフォームを確認するようにしましょう。

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