突然ですが、夏場に暑さを感じたとき、Tシャツの生地をつまんでパタパタとあおぐと涼しさを感じるはず。きっと、誰もがやったことのある行為ではないでしょうか。
これは、Tシャツの中にたまった暑い空気を換気することで涼しさを感じていると言えます。
では、もしもこういった「ウェア内の換気」を自然と行ってくれるランニングウェアがあったらどうでしょうか。きっと春夏のような暑い時期での運動中も涼しさを感じられるはず。
実は、そんなアプローチから生まれた“進化系ランニングウェア”がデサントから登場しました。自然にウェア内の換気を行うランニングウェアとは、一体どんなものでしょうか。ここで紹介します。
ランニングウェアと体の間に起こる「風の流れ」に着目
これまでのランニングウェアといえば、生地そのものの機能性が進化したウェアが多かったと言えます。例えば「通気性」や「吸汗速乾性」、「クーリング機能」などがその例ですよね。
しかし、生地そのものに加えて、ウェアの構造/デザインなどによって涼しさを生む方法もあります。
その一つが、ウェア内の「換気」。生地と体の間に起こる風の流れに着目し、ウェア内の換気を起こしやすくして、ウェア内の温度を快適にするアプローチです。
そんな考えで作られたのが、デサントの新ランニングウェア「D-AERO STREAM SHIRTS」。では、どうやってウェア内の換気を生むのでしょうか。
ランナーの悩み「夏場は背中に熱がこもる」という声がヒントに
通常のウェアは、空気が抜ける場所は限られています。換気を生むには、空気の抜ける場所を増やすことが必要。
そこで、ウェアの両脇から背中までと切替を設けます。これにより、腕を動かすと脇下の切替から空気が入り、背中から抜ける構造になるのです。こうしてできたのが今回のウェアです。
このデザインが生まれた背景にあったのが、ランナーからよく聞かれる「特に夏場は背中に熱がこもる」という声です。
運動中は背中の皮膚温度が上昇し、ウェア内の空気も温まるもの。そこから生まれる蒸れや不快感を軽減すべく、今回の独自のデザインが誕生しました。
研究開発拠点「DISC」にて、試行錯誤を繰り返し誕生
デサントでは、研究開発拠点「DISC/ディスク(DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX)」でさまざまな商品の研究開発を日々行っており、今回のウェアもここで研究開発されました。
今回のウェアで特に試行錯誤を繰り返してこだわったポイントは、切替部分を“最もはためく形”にすること。
ただ単に穴を開けて通気性を高めるのではなく、切替構造を採用した理由は“はためき”を生み換気をより強く促すためです。
例えば、切替部分を何点で留めるべきか、背部切替の上側の生地に重しを付けて重しの重量を変えながらどのくらいの重量感がはためきやすいか、などさまざまなものをDISCで試しながら“最もはためく形”を追求していったと言います。
夏場でも風を感じると、涼しくなるのはナゼ
ウェア内の換気性が高まると、涼しさを生むもう1つの効果が見込めます。それが「気化熱」による冷却効果です。
気化熱ってどんなもの?
気化熱とは、液体が蒸発(気化)するときに周りから吸収する熱のこと。
汗が乾いて気体になるとき、その汗は皮膚の熱を吸って気体になり、皮膚は熱が吸われた分だけ温度が下がります。実は運動をしていると、この気化熱を感じる機会もたくさんあります。
例えば汗をかいた後に風が吹くと、夏場でもひんやり感じることがありますよね。これは、風によって汗がより乾いて気体になり、その気化熱で周りの皮膚温度が下がり、ひんやりするのです。
ウェア内に風が抜けることで、汗の気化で温度を下げる
この気化熱をより発生させれば、ランナーの涼しさにつながります。そこで今回のウェアに話を戻すと、ウェア内に風が抜けることで、皮膚表面の汗がより乾き、気化熱が起こりやすくなります。
また、ウェアにしみた汗も風が抜けることで乾きやすくなり、こちらも気化熱が発生。2つの気化熱で衣服内の温度を快適に保ちます。
生地そのものにもこだわり。高い水準の吸汗速乾性
さらに、実は今回のウェアに吸汗速乾性のなかでも高い水準の生地を使っています。
ウェアが汗を吸うときにも気化熱が発生するので、ウェア内に風が抜けることによる冷却効果に加え、この吸汗速乾性によっても冷却効果が高まります。
実証実験により、このウェアの効果も確認済み
では、このデザインによって本当に効果はあるのでしょうか。DISCで実証実験を行いました。
今回の検証では、素材は同じでありながら今回の構造/デザインを採用していないウェア(比較品)と採用したウェア(開発品)を、それぞれ発汗サーマルマネキンなるものに着せ込み、発汗状態における10分間の模擬歩行動作を実施。
両ウェアを着用した際のマネキンの背部の放熱量、衣服内の背部の湿度を測定しました。
※背部の熱量、湿度は模擬歩行動作時の測定10分間を平均したデータ。
※人工気象室内、発汗マネキンによる検証であり、あらゆる環境で同様の効果を保証するものではありません。
こうして出たのが、上の結果です。今回の構造/デザインを採用していないウェア(比較品)と採用したウェア(開発品)では、明確な差が表れました。
特に背部の放熱量を見ると、開発品は比較品に対して放熱量が増加しています。また、衣服内の背部の湿度も、開発品のほうが低くなっていることが分かりました。
ランナーは本当に涼しさを感じる?アスリートが試してみた
ウェアのデザインや生地、実証実験結果が分かったところで、気になるのは実際にこのウェアを着て走ったランナーの感覚です。
ということで、今回2名のアスリートによる実験をDISCで実施。
トライアスロンアマチュア選手をサポートするプロジェクト「チームデサント」のメンバー、森川雅樹さんと中村順子さんに協力していただき、その着心地を確かめていただきました。
2人は、2種類のウェア(D-AERO STREAM SHIRTSと切替のない市販Tシャツ)を着て、トレッドミルでランニング。実験を終えると、森川さんはこんな感想を口にしました。
「走っているときの空気の抜け感が、今までのウェアと違いましたね。普通なら脇と背中にとどまる暑い空気が抜けていくというか。広背筋は発熱量が多い場所で、走るといつも暑さを感じていたので、この仕組みは良いと思います。」
中村さんも、ランニング中にウェア内を自然と風が抜けていく感覚があったようです。
「腕を振るごとに脇から空気が入り、背中から抜けていく感じがしました。気持ち良く腕を振れましたね。今日は室内のトレッドミルという風を感じにくい条件でもこの感覚があったので、これで外を走ったらもっと気持ち良さそうですね。」
また、2人はウェアの生地にも着目。森川さんはこんな感覚を抱いたそうです。
「見た目や触った感触が綿に近かったので、ポリエステル100%というのは意外でした。走ってみると、汗ジミも目立たず、ベタつかなかったですね。かなり汗をかいても見た目がサラッとしているので、街中ランの後でも人目が気にならないと思いました。」
中村さんは、通常のスポーツウェアとの比較をこう説明してくれました。
「通常のスポーツウェアは汗を吸収するとピタッと体に張り付いてしまうので、苦手な人も多いはず。特に女性は見た目も気になりますから。それと、汗を吸った生地がお腹にくっつくと冷えるんですよね。今回の生地は、汗を吸ってもサラサラ感があってくっつかないのが良いと思います。」
「汗をかいても見た目が気にならないので、みんなで走りに行ったり、シティランをしたりするのに良いのでは?」と中村さん。そんな使い方が合うかもしれません。
普段使いできるデザインで、ランニング以外でも活用を
今回のウェアは、ランニングだけでなく普段使いできるようなシンプルなデザインも特徴。外にいるだけで汗が流れるような暑い日や夏場のアウトドアなど、幅広いシーンでも使えるのではないでしょうか。
商品はハーフスリーブとロングスリーブの2種類を展開しています。
ウェア内の“換気”に目を付けた新たな“進化形”ランニングウェア。夏場のランニングをはじめ、さまざまなシーンで「暑さをしのぐ味方」として活躍してくれるかもしれません。
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