肩こり・腰痛の改善に!プロが教える肩まわりと股関節のストレッチ

肩こり・腰痛の改善に!プロが教える肩まわりと股関節のストレッチ

  • 2023/04/06 (木)
  • 2023/07/05 (水)

昨今のスポーツシーンでは、体の可動域を広げるアプローチが積極的に行われています。関節可動域が広がると、姿勢向上や怪我の予防、そして競技パフォーマンス向上につながります。

また、スポーツをしていない人にとっても、楽しんでいる人はもちろん、大人になって運動する機会がほとんどないという人にとっても、体の可動域を広げることはとても重要です。

特に肩まわりと股関節の可動域が広がると、肩こりや腰痛の改善につながります。長時間のデスクワークなどにより、猫背や反り腰に悩んでいる人にもおすすめです。

そこで今回は、MLBやNPBといったプロスポーツの世界でフィジカルコーチを務めてきた武井敦彦さんに、肩まわりと股関節の可動域を広げるストレッチを教えていただきました。

<プロフィール>
アスレティックトレーナー
武井敦彦さん

1980年9月21日生まれ。高校卒業後、渡米。2006年よりMLBのアスレティックトレーナーとして数々の選手をサポートし、07年にはパイオニアリーグベストトレーナー賞を受賞。09年からのフリー活動を経て、11年に横浜DeNAベイスターズのアスレティックトレーナーに就任。13年、Passion Sports Trainingを立ち上げ代表に就任。ビーチサッカー日本代表のフィジカルコーチ等を務め、現在はテニス、フットサル、馬場馬術を中心に、プロからジュニアアスリートのパーソナルトレーニングや各種スポーツ医科学セミナー講師などを行う。博士課程在籍。

武井敦彦さんのプロフィール画像

肩まわり・股関節の可動域を広げるメリットとは?

——肩まわりと股関節の可動域を広げるストレッチを行うとどのような効果があるのでしょうか?

武井:関節可動域を広げるメリットは「姿勢向上」「障害予防」「パフォーマンス向上」です。

肩まわりに関してですが、現代ではスマートフォンやタブレットの普及により、体が前傾になる姿勢が多くなりました。前かがみになる動作を繰り返すと猫背になってしまいます。その結果、内巻き肩になることで両肩が丸みを帯び、肩こりや頭痛などの症状を引き起こします。

それを解消するには、胸郭(胸椎・肋骨・胸骨で構成される骨格)の可動域を広げることが重要です。胸郭のストレッチを行い、その可動域を広げることで肩関節がスムーズになり、その結果、肩まわりの可動域を広げることになります。

また、胸郭の可動域が狭いと、肩や腰など周辺の身体部位への負担も大きくなってくるので要注意です。

ストレッチについて話す武井さん

一方の股関節に関してですが、長時間座る動作や立ち動作を行うことで、股関節まわりの筋のタイトネスが起こり、骨盤の過度な前傾や後傾が起こります。その結果、腰痛や膝痛などの症状が現われることが多くなります。

ストレッチによって肩まわり(胸郭)や股関節の可動域を広げると、肩こりや腰痛といったこれらの症状を改善・予防ができ、同時に日常やスポーツ活動時のパフォーマンス向上につながります。

ストレッチを効果的に行うためのポイント

——ストレッチは1つの動きにどれくらいの時間をかけたほうが良いのでしょうか?

武井:伸ばしたときにハリを感じる位置で、ストレッチを30秒かけて行うと、関節可動域を向上させる効果があります。同じ部位を長時間伸ばすのではなく、基本的には30秒のストレッチを1セット行った後は、他部位に移行してください。

——ストレッチをするおすすめのタイミングを教えてください。

武井:理想はお風呂上がりや就寝前の体が温かいときで、このタイミングで行うとより効果が期待できます。

そして一番重要なことが「継続すること」です。みなさんが一番リラックスでき、無理のない範囲で続けられるタイミングを見つけて、ぜひストレッチを習慣化してください。

ストレッチは習慣化したほうが良いと話す武井さん

肩まわりの可動域を広げる3つのストレッチ

先ほど武井さんのお話にもあったように、肩まわりの動きをスムーズにするためには、胸郭(胸椎・肋骨・胸骨で構成される骨格)の可動域を広げることが重要です。

そのため、肩まわりの可動域を広げるストレッチは、すべて胸郭にアプローチする動きとなります。

①仰向けで上肢(じょうし)※をひねるストレッチ

仰向けで上肢をひねるストレッチの様子

※上肢:人の腕や、上腕・前腕・手までを含めて言う。

最初に紹介するのは、仰向けで行うストレッチです。

(左の肩まわりを伸ばす場合)仰向けの状態から左足の膝を上げ、そのまま右側にクロス。膝が浮かないように、右手でロックします。

次に、左肩を地面につけ、左手を伸ばして上半身をひねっていきます。左手は地面につかなくても良いので、できるところまで力を抜いて真っ直ぐに伸ばしましょう。

仰向けで行うストレッチの様子

「このとき、左膝が浮かないように注意してください。この状態でひねることで、胸郭だけでなく背骨にもアプローチします。ゆっくり呼吸を繰り返し、反対側も同様に行います。」(武井さん)

②後ろ手を組んで上肢を伸ばすストレッチ

ストレッチをレクチャーする武井さん

次は立った状態で行う手軽なストレッチです。仕事の合間にもできるので、デスクワークなどで凝り固まった肩まわりのほぐしに最適です。

やり方は簡単。両腕を後ろ手に組んで、そのまま後ろ方向に伸ばしていきます。このとき、腰が反らないように注意してください。

そして目線は真っ直ぐ前に。肩甲骨を下げて、左右の肩甲骨をくっつけるイメージで行うと、胸郭がしっかり広がっていることを感じられるはずです。

立った状態で行うストレッチの様子

「組んだ手を後ろに伸ばして、ちょっとキツいかなという位置で30秒キープします。椅子に座りながらでも行っても良いので、仕事の合間やミーティング後に取り入れてみてください。」(武井さん)

③壁を使って立位で上肢をひねるストレッチ

壁を使って立位で上肢をひねるストレッチの様子

次に紹介するのは、壁を使って大胸筋を伸ばすストレッチです。壁さえあれば簡単にできるので、仕事の休憩時間などにも取り入れられます。

(右の肩まわりを伸ばす場合)壁の横に立って、右手を上げて90度に曲げ、そのまま前腕と手の平を壁に当てます。そして右足を少し前に出し、壁を支えにして、手は固定したまま左方向に体をひねります。

背骨を回転させるイメージで行うと、肩から胸骨までがしっかり伸びていきます。左右どちらも同様に行います。

壁を使って大胸筋を伸ばすストレッチの様子

「さらに後ろを見るように行うと、肩甲骨が内側にグッと入っていく感覚があるはずです。肩に力が入らないように気を付けて、肩甲骨の下あたりを意識しながら行うのがポイントです。」(武井さん)

股関節の可動域を広げる3つのストレッチ

股関節の可動域を広げるためには、股関節のまわりの筋肉を伸ばすストレッチが有効です。今回は内転筋・臀部(でんぶ)・腸腰筋(ちょうようきん)の3ヶ所を伸ばすストレッチを紹介します。

お風呂上がりで体が温まっているときや、就寝前のリラックスタイムなどにぜひ取り入れてみてください。

①内転筋を伸ばすストレッチ

内転筋を伸ばすストレッチの様子

内転筋とは太ももの内側の筋肉で、足を閉じる働きをする筋肉群の総称です。この内転筋を伸ばすことで、股関節に柔軟性が生まれます。

まず股を広げて床に膝と手をつきます。次に両肘を床につけて手を合わせ、前腕で体を支える姿勢になります。

この状態から体を前に倒していきます。内転筋が伸びていることを感じながら、徐々に腰を前に出します。

内転筋が伸ばすストレッチを前から見た様子

「このストレッチは、リラックスして行うのがポイントです。内転筋をジワーッと伸ばしていくイメージで行ってください。」(武井さん)

②臀部を伸ばすストレッチ

臀部を伸ばすストレッチの様子

次は太ももの外側にあたる臀筋、いわゆるお尻の筋肉を伸ばすストレッチを紹介します。

(右の臀部を伸ばす場合)立った状態で右足を前に出し、ランジポジションになります。ランジとは、足を前後に開いた状態で、股関節や膝の曲げ伸ばしを行う筋トレです。このランジの姿勢、つまり足を前後に開いた状態で行います。

このランジポジションから、膝が外を向くように右足を寝かせます。右足が開かないように注意しながら、体を前に倒していきます。これを左側も同様に行います。

ランジポジションから右足を寝かせた様子

体を前に倒している様子

「右膝は90度に曲げて行うのが理想ですが、無理のない範囲でOKです。それよりも、右足が開かないように真っ直ぐ前に出して行うことが大事です。

また、最初は体が横になってしまうかもしれませんが、そこから徐々に始めて、体を真っ直ぐにして行えるようになると良いですね。肩の力を抜いて、自然に呼吸しながらストレッチしてください。」(武井さん)

③ランジ動作で腸腰筋を伸ばすストレッチ

ランジ動作で腸腰筋を伸ばすストレッチの様子

最後は、先ほど説明したランジの動きを取り入れた、腸腰筋を伸ばすストレッチを紹介します。腸腰筋とは、上半身と下半身をつなぐ筋肉で、股関節の柔軟性に大きく関わる筋肉です。

(左の腸腰筋を伸ばす場合)右足を前に出し、ランジの姿勢で両手を床につきます。次に右手を少し上げて肘を90度に曲げ、そのまま上体を倒していきます。

腸腰筋を伸ばすストレッチを横から見た様子

右手が床につくまで体を倒すのが理想ですが、体が硬い人はできるところまででOKです。同様に左右を入れ替えて行います。

体を前に倒した様子

「これは左の腸腰筋、左足の太ももの付け根が伸びている状態です。体を倒して肘を床につけるというよりも、腰を前にした状態で太ももの付け根をグーッと伸ばしていくと、自然に肘がつくというイメージです。

シンプルな動きですが、奥が深いストレッチです。まずはお風呂上がりなどにできる範囲で伸ばして、無理のないところで止めて腸腰筋をジワジワと伸ばしてみてください。可動域が広がってくると、さらに深くできるようになります。」(武井さん)

可動域を広げると肩こりや腰痛の改善につながる

今回はアスレティックトレーナーの武井敦彦さんに、肩まわりと股関節の可動域を広げるストレッチを教えていただきました。動き自体はシンプルなので、ぜひ日常に取り入れてみてください。

「肩まわり(胸郭)の可動域が低下すると姿勢不良になり、肩こりなどの悪影響が出てきます。そして、テニスのサーブを打つ、ボールを投げるといった動作がスムーズにできなくなると同時に、無理して体を酷使するため怪我にもつながります。

また、股関節の可動域が低下すると周辺の腰や膝に負担がかかり、その結果、腰痛などを引き起こし、好きなスポーツに取り組めないだけでなく、QOL(生活の質)も低下する可能性があります。

これからはこの2ヶ所のストレッチに重点的に取り組んでいただき、体のコンディションを上げ、思う存分スポーツや日常生活のパフォーマンスを向上させていただければと思います。」(武井さん)

 

参考資料

Clark, M.A., Lucett S.C., McGill, E., Montal, I., & Sutton, B.G. (2018). NASM Essentials of Personal Fitness Training. (6th ed.). Jones & Bartlett Learning.

McGill, E. A., & Montel, I. (Eds.). (2019). NASM Essentials of Sports Performance Training. Jones & Bartlett Learning.

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