デサントが誇る名品「水沢ダウン」の技術を徹底検証!10年以上愛され続ける“高性能ダウンジャケット”の真髄に迫る

  • 2020/10/02 (金)
  • 2024/01/31 (水)

最先端技術を使った新施設で水沢ダウンの機能性を検証

研究開発拠点・DISK

大阪府茨木市にあるスポーツアパレルの研究開発拠点「DISC(ディスク)」。

訪ねたのは、大阪府茨木市にある株式会社デサントのスポーツアパレルの研究開発拠点、通称 “DISC(ディスク)” (DESCENTE INNOVATION STUDIO COMPLEX/デサントイノヴェーションスタジオコンプレックス)です。

アパレル研究開発拠点として2018年7月19日に開設。「世界一、速いウェアを創る。」をコンセプトに、競技で勝つための「スピード」を追求したウェアやグローバルマーケットで、他社に「先駆ける」ウェアを開発したいという想いを込めてスタートした研究所です。

DISC(ディスク)では人工的な雨を降らせる「人工降雨室」、アイデアやデザインをその場でタイムリーにカタチにできる「プロダクションスタジオ※A」、温度と室温をコントロールできる「クライマート(人工気象室)※B」など、最先端の技術を使った設備を整え、機能性などを検証しています。

※A プロダクションスタジオ…型紙作成から縫製まで、サンプル作成の全工程を行うスペース=通称アトリエ。※B クライマート(人工気象室)は2つ存在する。
クライマート1:温度0~40℃、湿度10~95%に設定可能。
クライマート2:温度-30~60℃、湿度10~95%(0℃以上の場合に限る)に設定可能。

今回は普段は見ることのできない施設内に潜入して、これらの設備で実際に検証しながら、水沢ダウンの本質に迫ってみました。

防寒着として冬は欠かせないダウンジャケットですが、次のような経験をしたことはありませんか。

  • 濡れると羽毛が傷むので、雨や雪の際にダウンジャケットを着るのはためらってしまう
  • 縫い目から羽毛が吹き出してしまった

ダウンジャケットに付いているデサントロゴをアップにした画像

従来のダウンジャケットは、「軽量性」と「羽毛自体の品質」という機能性に焦点が当てられがちでしたが、水沢ダウンは別の切り口で差別化を図りました。機能性に加えて、ユーザー目線で、ダウンジャケットの弱点を改善するというアプローチのもと、誕生したものなのです。

具体的には、「ステッチ」をなくした作りにしていること。それによって以下のことを実現しています。

  • 雨や雪でも縫い目から水が入り込まない(=防水性)
  • 体温を外に逃がさない(=保温性)

聞いただけではリアリティが薄いので、どれだけのものなのかを実証するべく、今回3つの実験を行いました。

  1. 気温5℃の部屋で実験!体温を外に逃がさない?保温性チェック
  2. 雨を降らせて実験!本当に水が浸入しないか?はっ水性・耐水性チェック
  3. 生地を引っ張って実験!ファスナー部分の接着耐久性チェック

では早速、実験を行っていきましょう。

実験①気温5℃の部屋で実験!

まず向かったのは、温度と湿度をコントロールできる「クライマート(人工気象室)」。この部屋では、温度を0~40℃、湿度を10~95%に設定することができます。

今回は、室温5℃、湿度50%に設定。入った瞬間、寒さで凍えてくるこの部屋で、水沢ダウンを着用したマネキンから、ダウンジャケットの接着部を通じて放熱しないかサーモグラフィーカメラを使って検証します。

マネキンの表面温度を33℃に設定。サーモグラフィーは青いほど温度が低く、赤いほど温度が高いことを示しています。

マネキン実験の様子

マネキンの体温変化の様子

このマネキンは、表面の平均温度が33℃になるように設定されています。

「人の平熱は36~37℃では?」と感じられるかと思いますが、それは「深部体温※C」のことで一般的に皮膚表面の平均温度は33℃と言われています。

※C 深部体温…身体の内部の体温のこと。

次に、室温5℃の部屋で33℃の表面温度になるように熱を供給する設定にし、水沢ダウンを着用させたマネキンを設置。水沢ダウン表面は室温で冷えているので青くなっています。

青いままであれば、表面から熱が逃げていないので内側は暖かいことになります。つまり、サーモグラフィーが青い=着用者は寒さを感じにくいということです!

マネキンにダウンを着せた実験開始時

では、実験開始。

室温5℃の部屋で、10分経過後までの水沢ダウン表面の様子を、数分ごとに見てみました。

実験開始5分後

5分経過後のサーモ画像データ。

実験開始10分後

10分経過後のサーモ画像データ。

なんと、10分たっても、黄~赤い部分はあまり見られません。体の熱が外に逃げるのを水沢ダウンがシャットアウトしてくれていることが分かります。これは、羽毛がしっかりと充填されているからです。

脇下が赤いのは通気性を確保するベンチレーション機能が備わっており、蒸れを防ぐため放熱できるようになっています。

また、前述したように、もしステッチがあるとそこから熱も逃げてしまいます。しかし水沢ダウンは、「熱接着」という「ノンキルト加工※D」で羽毛を詰めているので、縫い目のないダウンジャケットを実現。

袖などの縫製が必要な部分には、「シームテープ加工※E」で水の浸入を防ぎ、保温性を高めることにもつながっています。

※D ノンキルト加工…生地を縫わずに、表地・羽毛・裏地の3層を重ね合わせて特殊な熱圧着を施すこと。
※E シームテープ加工…レインウェアなどに取り入れられている防水テープを利用。

縫い目から逃げてしまう熱を防ぐと同時に、縫い目から浸入してくる雨や風を防ぐ優れもの。羽毛が吹き出すこともありません。

実験②人工の雨を降らせて実験!

続いては、はっ水性・耐水性の実験です。人工的な雨を降らせる「人工降雨室」で行います。先ほどと同様に、マネキンに水沢ダウンを着せてファスナー部分はすべて閉め、フードもかぶせます。

雨の強さと降り方も調整することができますが、今回は「強い雨」に当たる30mm/時間で実験。イメージとしては、どしゃ降りで、傘をさしていても濡れるような雨です。では、雨を降らせてみましょう。

雨粒が水滴となり、滑り落ちていくのが伝わるでしょうか。ファスナー部分には、止水ファスナーを採用することで、そこからの水の浸入も防いでいます。

はっ水性があるので、付着した水滴も手で払うだけでほとんどが落ちます。タオルがあれば、サッとひと拭き。

水沢ダウン表面

はっ水性を担保するためには、生地そのもののはっ水性はもちろんのこと、接着縫製であることは欠かせません。こうした技術面の品質の高さが、水沢ダウンの真髄かもしれません。

実験③生地を引っ張って実験!

水沢ダウンでは、ポケットやファスナー部分も縫うのではなく接着技術を使って取り付けています。そうすることで、やはり雨や風の浸入を防ぐことになります。

その接着の強度を実証できる実験が行えるのが「機能・品質評価ラボ」。素材やプリントなどの品質の基礎データを収集できる部屋です。ここでの研究により、デサント製品の品質の根幹を支えています。

使用するのは、生地の引っ張り強度をチェックできる機械。ファスナー部分の生地を機械にセットして、一定の速度で引っ張ります。

早速、スイッチON!

引っ張り実験

あるところまで引っ張ると、ファスナー部分ははく離することなく、生地のほうが先に破れました。つまり、生地の強度よりもファスナーの接着強度のほうが強いということですね。

(注…生地の強度が弱いというわけではありません。生地も一定の強度を満たしています。)

これだけ強力に接着してあれば、雨風の浸入や、体温が外に逃げる心配もありません。

 

以上3つの実験を紹介してきましたが、水沢ダウンの「価値」、実感いただけたでしょうか。

「雨に強い」ということを繰り返しお伝えしてきましたが、あくまでも街中で着用するために作られたダウンジャケットです。レインウェアとしての着用はおすすめしていません。

しかし、通常、機能性の高いダウンジャケットというとスポーティーなデザインのものが多いなかで、水沢ダウンなら外出の際に突然の雨が降ってもスマートな着こなしが可能というわけです。

一度着てみると、その魅力に取りつかれるはず。今年の冬は、ぜひ水沢ダウンを試してみてはいかがでしょうか。

ここではご紹介できなかった機能も数多くあります。ぜひ専用サイトをご覧ください。

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水沢ダウン10周年 限定記念モデル特集

水沢ダウンジャケットの2020FW 新モデル「STTRATUM」の写真

水沢ダウンジャケットの2020FW 新モデル「STTRATUM」

2018年には10周年を記念して限定モデルを発売

2008年に「今までの概念を覆すようなダウンジャケットを生み出したい」との思いから誕生した水沢ダウン。2018年で10周年を迎えたことを機に、限定の「記念モデル」を発売しました。

限定モデルは2種類。1つは水沢ダウンのなかでもハイスペックなライン「マウンテニア」。もう1つが、初期から引き継がれる人気の定番モデル「アンカー」です。

それぞれをベースとして、表地にultrasuede®という独特な滑らかさを持ったスエード調の生地を使用しています。

ここからは、10周年記念モデルの「マウンテニア」と「アンカー」それぞれのスペックと特徴を紹介します。

水沢ダウンジャケット“マウンテニア”10th ANNIVERSARY

マウンテニア

機能:耐水性(20,000mm)・防風・保温・パラフードシステム・デュアルジップベンチレーション

ハイスペックな「マウンテニア」をベースに、スエード調で上品な肌触りのultrasuede®を表地に採用。豊かな風合いで高級感を保ちつつも、熱接着ノンキルトとシームテープ加工による耐水性を兼ね備え、これまでにない美しさと快適性の高さを両立しています。

使用しないときにフードをしまい、使いたいときには素早く開くことができる「パラフードシステム」は、フードの中に水や雪がたまるのを防ぎます。

デュアルジップベンチレーションとは、フロントの2列のジッパーとその間に配置されたメッシュ生地のこと。気密性が高い水沢ダウンならではの機能です。メッシュ生地が空気を取り込むため、衣服内にこもりやすい熱や湿気を逃がします。

また、裏地のデサントオリジナル保温素材HEAT NAVIもジャケット内を快適な温度に保ちます。

水沢ダウンジャケット“アンカー”10th ANNIVERSARY

アンカー

機能:耐水性(20,000mm)・防風・保温・パラフードシステム・デュアルジップベンチレーション

初期からのモデルとしてロングセラーを続ける「アンカー」。記念モデルでは、表地に豊かな風合いと上質な肌触りを併せ持つultrasuede®を採用しています。

水沢ダウン最大の特徴である熱接着ノンキルトとシームテープ加工による気密性の高さ、耐水性を維持しつつ、上品で美しく、どんなコーディネートにもマッチするベーシックなデザインが魅力です。

裏地には光を熱へと変換し、積極的な保温性能を発揮するHEAT NAVIを採用。

フロントは2列のジッパーとメッシュ生地になっていて、暑すぎるときはジッパーをずらして閉めれば、メッシュから適度に空気を取り込み、熱や湿気を逃がしてくれます。

DESCENTE BLANC代官山で10周年記念イベントの実施も

2018年6月29日には、DESCENTE BLANC代官山を会場に水沢ダウン10周年を記念したイベントを開催。

DESCENTE BLANCのアートディレクションを手掛ける長嶋りかこ氏プロデュースのもと、水沢ダウンの製造時に出る不要となった生地を活用した独創的な空間展示で、プレス関係者やバイヤーをはじめ、多くのゲストを迎えました。

2008年の初期モデルや、原点とも言える2010年冬の祭典での日本代表選手団公式ウェアなど歴代モデルから、最新の2018 FALL/WINTER COLLECTION、10周年限定モデルまでを⼀堂に展示。

そのほか、水沢工場での製造工程を伝える動画も放映したりと、水沢ダウン10年の記録と記憶を振り返るとても貴重な時間となりました。

モノづくり技術を活かした究極のハイテクダウン

水沢ダウンの機能性の高さは、どのように実現されているのでしょうか。それを決定付けているのが、「熱接着」による羽毛のパッキング手法です。

通常、ダウンジャケットには縫い目があります。雨の日は水が浸入して羽毛が濡れてしまったり、羽毛が縫い目から吹き出してしまうこともあります。こうしたことが保温性が失われる原因でした。

そこで、水沢ダウンは熱によって接着する特殊な技術で縫い目をなくし、どうしても縫うことが必要なファスナー部分には、裏面から特殊なテープを利用。防水性と保温性を大幅にアップさせました。

羽毛の量を減らしても暖かさが保たれるようになり、水沢ダウンならではの軽さを実現しました。

生産は熟練職人たちの手作業

「水沢」の名の通り、岩手県奥州市の水沢地区にあるデサントの自社工場で作られています。

最先端の技術とデザインを兼ね備えているにもかかわらず、機械でのオートメーション生産ではなく職人の手作業。

生地の裁断・ダウンパックの形成・熱による圧着加工・ダウン詰めまで、すべての工程を1つの工場で行い、1着1着丁寧に、熟練した職人の手で仕上げることで、日本の「モノづくりの神髄」とも言える品質の高さが保たれているのです。ほかのダウンジャケットとは一線を画す存在。

そして、世界中に多くのファンを持つ理由がここにあります。

高品質のアウターは、何年も着ているうちに愛着が湧いて、宝物のような1着になるもの。限定の記念モデルともなれば、さらに格別です。

無駄なものはそぎ落としつつも、日本の職人の技術やデザインへのこだわりが詰まった、ハイスペックなダウンジャケット。水沢ダウンファンなら、ぜひとも手に入れたい逸品です。

 

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