サステナブルブランド「BRING」の古着再生プロジェクトメンバーに聞く、エシカルなものづくりへの取り組みとは

サステナブルブランド「BRING」の古着再生プロジェクトメンバーに聞く、エシカルなものづくりへの取り組みとは

  • 2020/07/22 (水)
  • 2023/12/04 (月)

デサントも参加し、エシカルでサステナブルな取り組みとして業界を超えて注目を集める日本環境設計株式会社のサステナブルブランド「BRING™」。

その革新を起こし続けている現場、北九州響灘工場でBRING担当者の高杉さん(写真:左)、工場長の濵田さん(写真:右)にBRINGの現在やこれからのビジョンについてお話を伺いました。

服から服をつくる!?「BRING」の仕組みとは

デサント・BRING担当者・高杉氏

――まずはBRING™というブランドについて教えてください。

高杉:BRING™はシンプルに言えば、「服から服をつくる」ということをコンセプトにしているブランドです。ただ、ブランドと言っても範囲は広く、再生素材を使った洋服の販売だけではなく、服の回収からリサイクルまで手掛けています。

このコンセプトに賛同してくださる企業様の店舗で皆さんが着なくなった不要な服を回収していただき、当社のソーティングセンターで分別。そのうちポリエステル製品に関しては工場で再生ポリエステル樹脂に生まれ変わらせ、そのほかの素材はパートナー企業のもとでリサイクルします。

当社では、ポリエステル100%の衣料品のみならず、ほかの繊維が混紡している製品も、染色剤などの不純物を取り除くことができる独自の技術でリサイクルすることができます。

こうしてでき上がった再生ポリエステル樹脂は、従来の石油を原料としたものと同じ品質でありながらサステナブルであることから、BRING Material™として商社様やアパレルブランド様にも評価をいただき、商品にご活用いただいています。

「服から服をつくる」サイクルを自社内で完結させるために、BRING™という名前でD2Cブランドも立ち上げており、Tシャツをはじめ、ドレスシャツ・ポロシャツ・アンダーウェアといったプロダクトもECで販売しています。

回収した洋服をソーティングセンターで分別

――デサントとはどのような形で協業しているのでしょうか?

高杉:デサントの直営店舗にBRING™の回収ボックスを設置し、お客様が不要になった同社の衣料品を回収していただいています。ほかの企業様からのものと合わせると、これまでに累計約3,000tもの衣料品を回収してきました。

――デサントと実際に取り組みを進めるなかで印象が変わったことや感じたことはありますか?

高杉:協業を開始する前から、機能性の高い「水沢ダウン」をはじめとした先進的なものづくりに取り組んでいる印象を持っていましたね。しかし、実際にBRING™に参加していただいたことで、新しい分野に挑戦していく企業姿勢に改めて感銘を受けました。これまでも素晴らしい企業だとは思っていましたが、そのイメージが一層強まった形です。

――デサントがサステナブルな取り組みをすることについて、業界にどのような影響を与えていると思いますか?

高杉:デサントは国内だけでなく、海外へも大きな影響力がある企業だと認識しています。スポーツウェア業界のみならず、世界のアパレル企業にサステナブルな取り組みが広がっていく一つのきっかけになるのではないかと期待しています。

イメージキャラクターのミツバチが描かれた工場

――BRING™という名前に込められた意味やかわいらしいハチのキャラクターについて教えてください。

高杉:BRING™は「持ってくる」という意味の英語を由来としています。1人でも多くの方に1着でも多くの着なくなった服を持ってきてほしいという当社の取り組みをシンプルにブランド名としました。

また、イメージキャラクターはミツバチで、ハチがいろいろな花から蜜を集めて糧にする習性を、いろいろな場所から服を集めて次の資源をつくり出すBRING™の仕組みを体現したものになっています。

――BRING™は現在どのくらいの規模に広がっているのでしょうか?

高杉:以前は環境に対して積極的に取り組む企業もそれほど多くなかったため、数社との取り組みからスタートしたのですが、開始から約10年間で賛同してくださる会社様が増え、今や100社以上の企業様と一緒に取り組んでいます。

1社が複数店舗に展開してくださっている場合も多く、数千店舗の規模に広がっています。ただし、日本全国という意味ではまだまだ広めていく余地があると考えています。

リサイクルされた資源の写真

――エシカルな消費やサステナブルへの興味関心は広がってきているという実感はありますか?

高杉:BRINGが開始した10年前と比較すると、エシカル・サステナブルといった言葉が、ニュースや雑誌、メディアで数多く取り上げられるようになってきました。モデルや芸能人の方々の間でも、こうした取り組みに興味を持つ方が増えてきているのは間違いありません。

このトレンドはこれからもますます広がっていくと考えていますし、広がってほしいという願いもあります。

BRING™の革新的な技術の裏には隠れた苦労も

工場長の濵田さんの写真

――工場内では、どのような工程で新たなポリエステル樹脂が作られるのでしょうか?

濵田:ソーティングセンターで分別された衣料品は、まず「解重合」という工程で化学的に分解されます。その後、「脱色・精製」という工程で色素やポリエステル以外の異物を除去します。

そして、「重合」という工程で再生ポリエステル樹脂として生まれ変わり、連携する紡績会社様で糸や布として加工するために出荷します。

今でこそ安定してこれらの工程をスムーズに行えていますが、そこに至るまでには多くの苦労があり、現在も「より良い品質」と「高い効率性」を求めて日々試行錯誤を続ける毎日です。

ポリエステル樹脂が作られる工場の写真

――ずばり、BRING™の強みはどこにあるのでしょうか?

濵田:一番は、衣料品の回収から再製品化・販売までを一手に担っていることではないでしょうか。一部の工程を行っている企業はほかにもあると思いますが、一連のプロセスで実施できるのはユニークだと自負しています。

また、小ロット生産に対応している点も特徴的です。これによって、技術的には種類の違うポリエステルの製造を日替わりで行うことも可能になっています。

一番の強みは、「服から服をつくる」という取り組みに誰もが参加できる、つまり社会全体で服を軸にした循環型のものづくりが実現できるという点です。

――製造工程にはどのようなチームが関わっているのでしょうか?

濵田:現在ソーティングセンターで約10名、製造現場で約20名が働いており、響灘工場全体では45名ほどが在籍しています。工場は24時間365日稼働させる必要があるため、製造現場の社員は3班2交代制で業務に当たります。比較的年齢が若いので、和気あいあいとした雰囲気で働いていますよ。

工場内でトラクターを運転する男性の写真

――このお仕事に携わるなかでうれしかったこと、やっていて良かったと思った瞬間はありますか?

濵田:世界でも先進の技術を取り入れた工場で、今後需要が見込まれる再生ポリエステルを使った繊維づくりに関われるのは非常に貴重な経験です。

また、当社の取り組みに多くの方々が共感してくださり、一緒に循環型社会形成に向けた取り組みができることにやりがいを感じています。

日々の仕事は地道ですが、さまざまなメディアの方に取り上げていただくとき、実際に製品になった物を見たときには、微力ながら社会の役に立っているという実感が湧きます。

BRINGのTシャツの写真

――自社D2CブランドBRING™のプロダクトを実際に購入してみたことはありますか?

濵田:シャツもスウェットも購入しました(笑)。日常的に愛用し、とても気に入っています。

ポリエステルでできているとは思えないほど着心地が良いうえ、速乾機能があるので夏場も汗で体にまとわりつくということがないのでとても快適です。でき上がった製品を初めて手に取ったときにはとても感慨深いものがありましたね。

目指すは世界進出!BRING™が見据えるビジョンとは?

BRINGの回収Boxの写真

――BRING™として目指しているビジョンはありますか?

高杉:国内の衣料品は毎年200万t廃棄されています。まずはこれらすべてをリサイクルするという気合いのもと、取り組みを続けている最中です。

また、世界に目を向ければ、毎年9,200万tもの衣料が廃棄されているという深刻な現実があります。最終的にはこれらもリサイクルし、「価値のある9,200万t」に変えたいと思っています。

それだけの繊維ごみを減らすと同時に、その繊維ごみが新たな服を作る資源になれば、服づくりで使われる大量の石油を使わなくて済みます。

それがサーキュラーエコノミーの実現につながり、いつの日か「あらゆるものを循環させる」という当社のビジョンの実現にもつながると信じています。

――そのビジョンを実現するために乗り越えるハードルはありますか?

高杉:今でこそやっと巷でサステナブルやエシカルという言葉が聞かれるようになりましたが、まだまだ考え方そのものが浸透しているとは言い切れない状況です。私たちはBRING™を通じ、まずは循環型社会の実現に向けた認知を拡大させていく必要があると考えています。

あとは、「サステナブルだから」という理由だけではなく、「かっこいいから着たい」と思っていただけるような商品づくりを続けることですね。

BRING担当者の高杉氏と工場長の濵田氏

――最後にウルマグの読者へメッセージをお願いします。

高杉:私たちは素材の質にとことんこだわり、「本当にリサイクルされた服なの?」と驚かれるような、完成度の高い製品を作っているというプライドがあります。

そんな取り組みをしている会社があることをぜひ知ってほしいですし、もし興味があればD2CブランドとしてのBRING™製品も実際に手に取ってもらえたらうれしいです!

また、ハチが描かれた当社の衣料品回収箱を見かけたら、家庭で不要になった衣料品を持ってきてくださいね。

――高杉さん、濵田さん、貴重なお話をありがとうございました!

RE: DESCENTE BIRTH(リ:デサント バース)でBRINGと協業

RE:DESCENTE BIRTH(リ:デサントバース)

デサントが「持続可能なモノ創りへの挑戦」として、サステナビリティを考慮し取り組んでいる「RE: DESCENTE(リ:デサント)」。

このプロジェクトの軸となる「RE: DESCENTE BIRTH(リ:デサント バース)」では、デサント直営店に設置した回収BOXでデサントブランドの衣類を回収し、新たな衣類として生まれ変わらせています。

“服から服へ”という新しい生産システムづくりを目指すRE: DESCENTE BIRTH(リ:デサントバース)の商品を、ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

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