なぜ塩尻和也は「厚底シューズ」を選ばないのか。彼が薄底にこだわる理由は、蹴り出しの感覚
#DESCENTE(デサント)

なぜ塩尻和也は「厚底シューズ」を選ばないのか。彼が薄底にこだわる理由は、蹴り出しの感覚

カーボンプレート入りの厚底シューズを使用するトップランナーが増え、市民ランナーにもその流れが波及するなか、薄底シューズにこだわり続ける選手がいます。国際大会にも出場し、メダル獲得の実績を持つ塩尻和也選手です。

2021年4月には、5000mで自己新記録となる13分22秒80のタイムを記録。塩尻選手はなぜ薄底を履き続けるのでしょうか。その裏には、彼が大切にする1つの“感覚”があると言います。詳しい話を聞きました。

厚底を履いたときに感じた地面に対する違和感

厚底を履いたときに感じた地面に対する違和感

――厚底シューズが流行するなか、塩尻選手は薄底を履き続けています。しかも、2021年4月上旬の大会では、5000mで自己新記録を出すなど、パフォーマンスも上がっていますよね。なぜ、塩尻選手は薄底を選び続けるのでしょうか?

実は、過去に厚底シューズを試したこともあるんです。ただ、そのときに走りにくさを感じました。というのも、僕が走法のなかで大切にしているのは「地面の蹴り出し」です。着地の瞬間に地面をしっかり蹴って、足を前に出していく。その感覚です。

カーボンプレート入りの厚底シューズは、自分の蹴り出しにプラスで反発が加わり、跳ねすぎる印象を持ちました。蹴り出す瞬間、あるいは蹴った足が前に出ていく際、自分のイメージと違う動きになります。

このとき、率直にフォームが崩れてしまうリスクを感じたんです。履き続ければ慣れる可能性もあるかもしれませんが、蹴り出しの感覚を重視する自分にとって「厚底は向いていない」と思いましたね。

蹴り出しの感覚が、上半身の動きと連動してくる

蹴り出しの感覚が、上半身の動きと連動してくる

――それほど塩尻選手にとって「地面を蹴る感覚」は重要ということでしょうか?

そうですね。地面の蹴り出しはとても大切にしています。レース中も、必ず蹴り出しが上手くできているかを確認していますね。この感触は、言葉では説明しづらいのですが(笑)。

タイムが伸びないときは、上手く蹴り出せていないことが多いですね。蹴り出しが悪いと、下半身はもちろん、上半身の動きも小さくなります。前に進んでいかない感覚になるというか。上半身にも連動してくるんですね。

つまり、蹴り出しの感覚がフォームの中心にもなってくるので、そこに不安のある厚底は選ばなかったというのが理由です。

――これまでのシューズ選びも、やはり同じような観点で選んでいたのですか?

はい。学生の頃から、しっかりと地面を蹴れる、蹴り出しの感覚がはっきりしているシューズを履いてきました。

例えば大学の頃は、薄底でソールも固め、地面をきちっと捉えられる感触のシューズを選んでいましたね。いくつかのシューズを履き比べながら、そのとき一番感覚に合ったものを使っていました。

怪我を経て、改めて薄底を選択。デサントのGENTENを相棒に選んだポイントは?

デサント GENTENのシューズ

――厚底シューズが存在感を増してきたのは、塩尻選手にとって大学生の終盤あたりでしょうか?大学を出て、2019年4月に実業団入りしましたが、その後、9月に膝を怪我して手術を経験されました。練習に復帰したのは2020年1月でしたが、シューズ選びに変化はありましたか?

大きな変化はなかったですね。怪我をした後にも、厚底シューズを少し履く機会がありました。しばらく走らない期間を経て履いたのですが、以前抱いた蹴り出しの違和感は消えなかったですね。それもあって、復帰後も薄底を履き続けています。

笑顔でインタビューに答える塩尻選手

――復帰後は、デサントの薄底シューズ「GENTEN」を履いています。塩尻選手はデサントとアドバイザリー契約を結び、このシューズの開発段階から協力していただきました。実際に履いてみての印象はどうですか?

GENTENという新シューズの話を聞いたのは、ちょうど怪我で休養していた頃だったと思います。シューズの考え方に共感するところが多く、開発から参加させていただきました。

復帰後は完成品を履き続けていますが、良い感触を持っています。やはり大切にしているのは蹴り出しで、GENTENはしっかりとその感覚をキャッチできる印象ですね。

GENTENのシリーズはいくつかのシューズタイプがあるので、場面ごとに使い分けています。レースやポイントとなる練習では、ソールにカーボンプレートが入ったGENTEN-ELを、普段のジョギングではクッション性のあるGENTEN-RCを使い分けています。

――今年はGENTENのニューモデルを履いてレースに出ていると思います。前モデルからの変化などはどのように感じていますか?

ニューモデルであるGENTEN-EL+は、前のモデルに比べてソールが柔らかくなっています。

これは僕の意見を反映していただいたのですが、前のモデルは、ロードを走るときに少しソールが硬いと感じました。トラックは問題ないのですが、より地面の硬いアスファルトになると少し走りにくさを感じて。周りのランナーからも同じ指摘があったので、その点を反映してもらいました。

実は2020年11月の東日本実業団対抗駅伝競走大会では、本来はGENTEN-ELを履く予定でしたが、ニューモデルのGENTEN-EL+のプロトサンプルの仕上がりが良かったので、そちらを履いてしまいました(笑)。

結果として区間賞を獲ることができたので、GENTEN EL+はより進化したという手応えを感じていますね。

ほとんどのトップランナーは、かつて薄底を履いた期間があったことを忘れてはいけない

デサントのウェアを着用している塩尻選手

――塩尻選手から見て、ランナーが薄底・厚底を選ぶ際のポイントや、「こんな人には薄底を使ってみてほしい」というアドバイスはありますか?

やはり、僕のように地面を蹴り出す感覚を大切にしている人は、薄底が良いのかなと思いますね。

今は厚底を選ぶランナーが増えていますが、シューズはあくまで自分の感覚にフィットすることが一番です。ほかの人が履いているシューズを選ぶというより、自分に合っている靴を選ぶべき。最初から選択肢を狭めず、一つひとつ確かめながら決めるのが良いのではないでしょうか。

個人的に思うのは、今、厚底で結果を出している選手も、期間の差はあれど、おそらく全員がかつて薄底を履いてきたはずです。むしろその期間のほうが長いかもしれません。

その期間があったうえで、今、厚底で結果を出していることは忘れてはいけないかなと。つまり、きちんとフォームを作る時期は薄底のほうが良い可能性もあると思います。

――最後になりましたが、塩尻選手の一層の活躍を期待しています!

ありがとうございます。今後も日本代表を目指して頑張りたいと思います。その後はロードシーズンになりますので、連覇のかかる年明けの全日本実業団対抗駅伝大会に向けて調整していきたいですね。

みなさん、ぜひ応援よろしくお願いします!

文/有井太郎

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<プロフィール>

塩尻和也(しおじり かずや)
富士通所属

リオデジャネイロ2016オリンピック出場。2018アジア競技大会で銅メダルを獲得。2021年に5000mの自己新記録を更新するなど、さらなる活躍が期待されている。

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