私達はやっぱり薄底シューズが好き!薄底愛好家座談会

私たちはやっぱり薄底シューズが好き!薄底愛好家座談会

  • 2021/06/29 (火)
  • 2023/07/05 (水)

厚底シューズがブームのなか、薄底シューズを愛してやまない鹿居二郎選手(800m、日本陸上競技選手権出場)と西出優月選手(3000m障害、日本陸上競技選手権5位)、古川大晃選手(マラソン、熊本城マラソン優勝)に、薄底を選ぶ理由や薄底と厚底の違い、履き分けなどについてお話を伺いました。

薄底は地面をしっかりと捉えられる感覚が気持ち良い

薄底は地面をしっかりと捉えられる感覚が気持ち良い

――現在、どのようなシューズを履いていますか?

鹿居:私は靴オタクなので、いろいろなメーカーのシューズを試しています(笑)。ただ、そのなかでも薄底のシューズが気に入っていますね。軸として薄底、履き分けとして厚底のシューズも使用しているという感じです。特にジョギングやスピード練習では薄底を履いています。

西出:私は練習時は薄底、ジョギングでは少し厚みのあるシューズを履いています。レースでは、1500mや3000m障害はスパイク、3000mや5000m、駅伝のときなどは薄底を履いています。

また、練習時とレース時のシューズを一緒にしたくないというこだわりがあるので、レースのときだけ履くシューズを作っておくことで、レースに入り込めるようなルーティンを作っています。

古川:私は練習では薄底を履くことが多く、レースでは厚底を履いています。練習のなかでも、マラソンの練習時期やトラックでのスピード練習では薄底を着用しています。

――どのような理由でそれぞれのシューズを選んでいるのでしょうか?

シューズを持っている画像

鹿居:私は陸上を始めた中学生のときから、薄底を履いています。当時もクッション性のある少し厚めのシューズが販売されていて試したのですが、やはり薄底のほうが良いなと感じました。薄底は素直な作りになっているので、地面を踏み込んだ分きちんと前に進んでくれます。

努力をした分きちんと応えてくれる感覚があるので、そこが好きです。接地から蹴り出しのときに地面を芯で捉えられる感覚もあるので、その感覚を得られる点と、逆に調子が悪いときには厚底に比べ改善点が分かりやすい点も良いと思います。

厚底に関しては、あくまで私の経験ですが、厚底を試していた時期に足首の状態が悪くなってしまい、すねの怪我につながるということがありました。足首に不安がある方は厚底は避けたほうが良いかもしれません。

西出:私は中学1年生のときから薄底を履いています。今は、ジョギングで少し底が厚いシューズを履いていますが、それ以外はすべて薄底です。

厚底も海外メーカーのものを購入し試してみたのですが、1回目のジョギングのときに、足で地面をしっかりと捉えることができず、2~3回足をひねった経験がありました。

私は、地面をしっかりと捉える感覚をとても大切にしていて、薄底は接地がブレないので、薄底のほうが合っていると思い愛用しています。

古川:高校生から陸上を始め、そのときから薄底を履いていますが、やはり足が地面を捉える「気持ち良さ」があります。練習時、自分が良いと感じたところで足が地面を捉える感覚は、とても気持ち良いんです。推進力も出るので、きちんと走れているという感覚をつかめます。

それが、ランニングの醍醐味の一つでもあると思いますし、スキルの積み上げにもつながると思います。

一方で、レースでは、記録を狙うという理由で厚底を履いています。厚底で何回かマラソンを走ったところ、以前は30kmを過ぎると体がガクッと動かなくなっていましたが、それがなくなりましたね。

厚底は接地のタイミングが少しズレてもシューズの反発性がカバーしてくれるので、レースで後半にスプリントを上げたいと考えている人や記録を狙いたいと考えている人には良いと思います。

薄底で「走る楽しさ」を経験してから自分に合ったシューズ選びを

薄底で「走る楽しさ」を経験してから自分に合ったシューズ選びを

――薄底シューズとして、実際にデサントのGENTENを着用しているとのことですが、理由を教えてください。

鹿居:私がGENTENを履く理由は、「薄い」+「硬さ」がある点が好みだからです。そして、地面のすぐ近くにカーボンプレートが入っていることで、自分の求めている、プレートを曲げてそれを推進力に変えて速く走れる感覚があるのでGENTEN-ELを使っています。

西出:昨年12月末に開催された駅伝大会で、GENTEN-ELを履いて大会に出場しました。試合の前に何回か試走したときに、前に進む感覚やフィット感などがすごくしっくりきたので、このシューズに決めました。

また、今年3月に行われた全国招待大学対校男女混合駅伝でも履きました。2kmという短い距離で、スピードレースになったこともあり、スピードを出せば出すほど推進力が感じられ、ストライドも伸び、すごくスピードが出しやすかったです。結果として区間記録1位と1秒差の6分14秒というタイムを出すことができました。

古川:GENTEN-ELを練習時に履いていますが、きちんと踏み込むと本当に良い感触を与えてくれるので、レスポンスの良いシューズだと思います。自分の出した力に対して、返ってくるものがすごくストレートで、パフォーマンスが上がっていることをきちんと実感できます。

またGENTEN-ELのプレートは、ほかの薄底シューズに比べると硬いんです。踏み込んだときに最大限の力を加えると、高い反発力を発揮するので、それが非常に良いと感じています。

――薄底と厚底、それぞれどのような人におすすめできますか?

薄底と厚底がおすすめな人について話す3人

鹿居:厚底は、マラソンランナーであれば履いたほうが良いのかなと思います。楽に速く走れると言いますか…フォームが少し崩れても走れてしまうんです。実は昨年1年間、厚底を履いていましたが、自分の納得がいく走りではなかったのに良い記録が出ることがありました。

普通、納得がいかなければ好記録なんて出るわけはないのですが、結果が出てしまうのでそこに乖離を感じ悩んでいました。結局、私は自分の感覚と結果の乖離に対する違和感が拭い切れず、薄底に戻しましたが、少しフォームが崩れても走れてしまう分、記録は出やすいのかもしれません。

一方で、薄底は「走るということを知る」という意味で、どんな人にでも履いてほしいですね。走っているなかで、足裏の感覚で気持ち良いところが絶対にあって、それを見つけることも楽しみの一つだと考えていて、それは薄底じゃないと味わえません。

だからこそ、まず薄底から試してみて、もしクッション性のあるほうが良いとなれば、厚底に移れば良いと思います。陸上は、メニューやシューズにしても正解がなく、試行錯誤しながら成長していくものなので、トライ&エラーを繰り返し、自分に合ったものを選んでほしいですね。そこが楽しみでもあります。

西出:厚底はシューズに走らされている感覚がある一方で、自然とペースが上がっていく感覚もあります。現在公式のトラック競技では厚底が禁止されているので(※世界陸連は800m以上のトラック種目で靴底の厚さ上限を2.5cmと定めている)、トラック競技では着用できませんが、マラソンランナーの方におすすめできると思います。やはり記録が出ればうれしいですからね。

薄底は陸上をしている方、全員に履いてみてほしいです。速く走るためにはフォームがすごく大事なので、薄底でしっかりと正しい位置で地面を捉える感覚を身に付けていってほしいです。ただ長距離を走る人は、薄底だと足への負担が大きい部分もあると思うので、厚底とうまく使い分けて履くことも大事かなと思います。

古川:先ほども申し上げましたが、レースで記録を狙いたいという方には厚底がおすすめです。後半にスプリントを上げたいと考えている人や記録を狙いたいと考えている人には良いです。

しかし、厚底はシューズに走らされているような違和感が少し気になります。タイムが良くなったときに、「今まで練習で積み上げてきた成果ではなくシューズのおかげかもしれない」と考えてしまい、悩んでしまうことがあるかもしれません。

また、足首が弱い人や試して捻挫が多いようなら厚底は避けたほうが良いと思います。

薄底は、陸上を始める学生さんなどにおすすめしたいですね。鹿居さん、西出さんも話していますが、薄底は適切な位置で地面をきちんと捉えられる感覚が身に付きます。それを積み上げていくことで、レベルが上がります。まずは薄底でスキルを積み上げて、走る楽しさを体験してほしいです。

 

<プロフィール>

選手3人のプロフィール画像

画像右:鹿居 二郎(しかい じろう)

1997年生まれ、愛知県出身。一般社団法人 Grow Sportsに所属。専門種目は800m。中学生のときに陸上を開始。2018年日本学生陸上競技個人選手権大会3位入賞、2019年日本陸上競技選手権大会出場。

画像中央:西出 優月(にしで ゆず)

2000年生まれ、大阪府出身。関西外国語大学4年生。専門種目は、1500m、3000m障害。中学生のときに陸上を始め、全日本インカレ(3000m障害)3位入賞、2020年日本陸上競技選手権(3000m障害)で9分55秒01の関西学生新記録を打ち出し5位入賞、2021年6月の日本学生陸上競技個人選手権大会(3000m障害)優勝。

画像左:古川 大晃(ふるかわ ひろあき)

1995年生まれ、熊本県出身。専門種目は5000m、10000m、マラソン。2018、19年と熊本城マラソンで連覇を達成。現在は、東京大学大学院で“走り(追尾走)”についての研究活動を行いながら、競技を続けている。

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