自律神経は体全体に張り巡らされている神経で、内臓や血管の働き、代謝や体温などを24時間自動でコントロールしているとても大事な神経です。この自律神経が乱れることで、さまざまな体調不良や内臓疾患を引き起こします。
そこで今回は、自律神経を整えるヨガポーズをご紹介。ヨガインストラクターの中橋まやさんに、誰でも自宅で簡単にできる5つのポーズを教えていただきました。
ヨガインストラクター
中橋まやさん
ヨガ歴10年を超えるインストラクター。仕事の疲れで心身が不調だった20代前半にヨガと出会い、その魅力に引き込まれる。20代後半にバリ島で単身ヨガを学び、帰国後はインストラクターとして都内のスタジオを中心にレッスンを行う。初心者でも楽しめるように心掛け、誰も置いていかないことをモットーに年間1,000時間以上のレッスンをこなす。現在はヨガスタジオ「AGNIYOGA」のほか、都内スタジオを中心にさまざまなカテゴリーやレベル別のレッスンを行い、ハンモックを使ったエアリアルヨガの指導も行っている。
自律神経を整えるメリットとは?
今回は自律神経を整えるポーズを紹介していきますが、その前に、なぜヨガのポーズが自律神経を整える効果があるとされているのでしょうか?そのメカニズムを中橋さんにお伺いしました。
「自律神経を整えるために、ヨガでは背骨まわりを柔軟にしていくこと、背中の凝りを取っていくことをやっていきます。自律神経は脊柱に接しているため、背骨まわりや背中を動かすことで整えることができます。
自律神経が整っている状態とは、交感神経と副交感神経がバランス良く保たれている状態を指します。体が起きている日中は交感神経が優位な状態にあります。例えば緊張状態も含めて体が活動的になっている状態です。
一方、リラックスしているときや寝ているときなどは、副交感神経が優位な状態です。多くの場合、この副交感神経にうまく切り替えられないことが原因で、自律神経が乱れてしまいます。
そのため、背中の凝りをほぐし背骨まわりを柔軟にして、自律神経を整えることが大事です。」
「また、背すじを伸ばすと呼吸が自然と深くなります。この深い呼吸も自律神経を整える効果があります。
ヨガの呼吸は鼻から息を吸って鼻から吐く腹式呼吸。お腹を膨らませてお腹でゆったり深い呼吸をしていくことでリラックス状態になり、副交感神経が優位になるんです。
交感神経と副交感神経の切り替えがうまくできるため、心も体もリラックスして睡眠の質も高まります。睡眠の質が高まるとストレスや疲労感を軽減できるので、自律神経が整っていきます。
今回紹介するヨガのポーズは、この副交感神経を優位にしていくポーズです。深く呼吸しながら行い、心と体のリラックスタイムをぜひ作ってみてください。」
自律神経を整えるヨガポーズ①:広背筋を伸ばすストレッチ
最初に紹介するのは、広背筋という背中にある大きな筋肉のストレッチです。この広背筋の凝りを取ることで、自律神経を整える効果が得られます。
このストレッチはあぐらで行いますが、あぐらの姿勢も大事なので説明します。
まず左右の臀部(でんぶ)をかき分けて、座骨(骨盤の先端にある骨)を床へとグッと根付かせます。骨盤が後ろに傾いていると背骨が丸まってしまうので、しっかり骨盤を立てて背中を真っ直ぐに伸ばします。
足はかかとと恥骨を一直線上に合わせるのが理想ですが、つらい場合は少し崩してもOKです。足は楽にして座っても良いので、背骨をスッと長く伸ばすことが重要です。
次に、あぐらの状態で両手をアップして、右手で左の手首をつかみます。息を吸いながら少し上に伸ばし、息を吐きながら左腕を引っ張り、体を右側へ伸ばしていきます。
左腕をグーッと引っ張っていくと、背中から伸びている感覚が分かると思うので、気持ちが良いところでキープします。目線は正面でも天井に向けてもどちらでもOKです。
この状態でゆっくり深く5回ほど呼吸を繰り返してください。5回呼吸を終えたら腕を中央に戻し、息を吐いてリラックスしながら両手を開放しましょう。これを同様に反対側も行います。
「腕を引っ張るときに前かがみにならないように、少し胸を広げて息を吸うのがコツです。そして息を吐きながら腕を引っ張って伸ばしていきます。
胸を広げながら背中のほうまで呼吸を広げていくようなイメージで、深く呼吸を繰り返しながら少しずつ伸ばしていってみてください。」
自律神経を整えるヨガポーズ②:背骨を伸ばすストレッチ
次はあぐらの姿勢で、背骨まわりを柔軟にするストレッチです。さまざまな動きをミックスしたストレッチになるため、順を追って紹介していきます。
まず両手を胸の前で組んで息を吸います。吐く息に合わせて両手を前に伸ばし、背骨を丸めて骨盤を少し後ろに傾けます。
目線をおへそに向け、息を吸いながら一旦元の姿勢に戻り、吐く息でもう1回伸ばします。背骨を丸めて、吸って戻る。これを3回くらい繰り返します。
背骨を丸めて伸ばすストレッチを終えたら、肘を少し緩めます。肘を緩めると肩甲骨の力がフワッと抜けて緩んでいきます。
この状態で左右にユラユラと上半身を揺らします。両手で大きなボールを抱えているイメージで、八の字を描くように揺れます。
背中が伸びていることを感じながら左右に上半身を揺らし、ある程度動いたら手のひらをひっくり返し、息を吸いながら両腕を天井の方向に引き上げます。
手のひらで天井を押し上げるようなイメージで上に伸びていきましょう。伸ばし終わったら体を中央に戻し、息を吐きながら両手を解放します。
「このときに肩がすくみやすいので、肩をリラックスして耳と肩を遠ざけるように意識してください。この状態で、できれば左右にユラユラと上半身を揺らして、背骨をしならせるようなイメージで動いてみましょう。」
次に両手を後ろ手に組みます。後ろ手の状態で肩と肩甲骨をグッと下げて、息を吸いながら胸を天井に引き上げていきます。
肩先を外側に広げて、目線は息が苦しくない程度に自然と遠くへ向けます。余裕がある人は組んだ両手を少しずつ体から離していきます。
顎は少し引いて、目線を遠くに向けた状態で5回ほど呼吸を繰り返しましょう。
「後ろ手に組むのが苦手な人は、両手を解放したときにギュッと肘を背骨に寄せて、一旦肩と肘を下にグッと下ろします。
そうすると肩甲骨が背骨に寄りますので、肩甲骨が寄った状態で両手を後ろで組んでみましょう。体が固い人はこのほうが組みやすいと思います。」
後ろ手を解放したら、今度は両腕を前でクロスします。クロスして手の甲を床に向けながら、肘を床に近付けるように体を前に倒していきます。
指先を遠くに引っ張るようなイメージで行い、息をハーッと吐きながら脱力。気持ちが良いと感じるところでキープし、5回ほど呼吸を繰り返してゆっくり体を起こします。
「呼吸しているうちに筋肉が緩んでくるので、もう少し伸ばせそうな場合は腕のクロスを深めて、指先を遠くに引っ張っておでこも床につけてみましょう。
この背骨まわりを伸ばすストレッチは肩こり改善にもおすすめです。また、動きが多いので全部やらなくてもOKです。できる範囲の動きを取り入れてみてください。」
自律神経を整えるヨガポーズ③:半分の魚の王のポーズ
ストレッチで背中が柔らかくなったところで、ここからはヨガのポーズを紹介していきます。
まずは体をツイストする「半分の魚の王(半魚王)のポーズ」です。これは「アルダマッツェーンドラーサナ」と呼ばれるヨガの有名なポーズです。
「このポーズにはさまざまな効果があります。背骨まわりを柔軟にするほか、内臓が刺激されるため内臓機能の改善や便秘解消、デトックス効果もあるため花粉症を軽減するとも言われています。」
まず正座のように座り、足を左側に崩します。お尻を右側に下ろして人魚のような座り方になり、左足を右足にクロスしてかけます。
足をかけたときに両方の座骨をしっかり床につけます。また、このとき骨盤が後ろに倒れて背骨が丸まりやすいので、お腹を引き上げて背骨を真っ直ぐ伸ばします。
そして両手で膝を抱えて、息を吸いながら膝を少し自分のほうに引き寄せていきます。お腹を引き上げながら、そのまま前ももをお腹に近付けていきましょう。
ストレッチを兼ねて、この状態を少しキープした後、左手を体の後ろに置きます。
「足首が硬い人は足先が前を向いていても良いですが、できれば足先を後ろに向けて、左足の裏を床につけて前を向いてください。」
次に左手を体の後ろに置きます。息を吸いながら右手を上げて、息を吐きながらお腹を左側にツイストしながら、右手の肘を左膝の外側にかけます。
この状態で息を吸いながら背骨を引き上げ、息を吐きながらもう少し左にツイスト。この体をひねった状態でゆっくり5回呼吸し、正面に戻って足を崩します。足を入れ替えて反対側も同様に行います。
「ツイストするときは胸をグッと向けるのではなく、まずはお腹、そしてみぞおちの裏側のほうからねじりを深めて、最後に胸と目線を後ろのほうに向けてください。
余裕がある人は肘を曲げてみましょう。肘と膝の外側で押し合うことで少しずつひねりが深まっていくので、背骨をしならせてツイストしていくようなイメージで、吐く息に合わせて少しずつひねりを深めてください。
これはウエストをひねるポーズですが、今回は背骨をひねって背骨まわりを柔軟にしていく意図で行います。そのため、胸からひねるのではなく、背骨を1本ずつ順番に動かすようなイメージでツイストしていきましょう。
初心者には若干チャレンジ的なポーズですが、やっていくうちに背中の凝りもほぐれるし、背骨が動いている感覚も味わえると思います。」
自律神経を整えるヨガポーズ④:チャイルドポーズ
続いて紹介するのは、ヨガで一番有名な「チャイルドポーズ」です。背中と背骨を一緒に伸ばしていくポーズで、とても簡単なので初心者にもおすすめです。
四つん這いになって、お尻をかかとに置きます。このとき足先を内側に向けて、親指同士を軽くつけておきます。
そのまま両手を前に伸ばし、おでこも床につけて脱力します。これがチャイルドポーズです。
「お尻がかかとにつかない人は、両膝をマット幅ぐらいまで広げてみてください。足先を内側に向けて膝の間に上半身を通してあげると、かかとにお尻を預けやすくなります。」
次にチャイルドポーズの状態から、両手を思い切り前に伸ばして床をつかみます。床をつかんだら、そのまま座骨を後ろにグーッと引っ張っていきましょう。そうすると背骨が長く伸びて、背中の筋肉が全体的に伸びていきます。
この体勢でゆっくり5回呼吸を行います。呼吸が終わったら体を起こします。
「両手を前に伸ばすとお尻が浮いてしまう人は、お尻を後ろに引いて座骨と指先で引っ張り合うようなイメージで背中を伸ばすと良いでしょう。
また、このときにお腹がつぶれやすいので、お腹や胸、そして背中いっぱいに呼吸を広げていくようなイメージで深く呼吸するのもポイントです。
本来のチャイルドポーズは休憩のポーズとして使われますが、今回は背中を伸ばしたいので思い切り両手を前に伸ばしてストレッチとして紹介しました。
すごく簡単なポーズですが、気持ちもすっきりするのでおすすめです。」
自律神経を整えるヨガポーズ⑤:ガス抜きのポーズ
最後に紹介するのは「ガス抜きのポーズ」です。ヨガでは休憩がてら行うポーズなので、誰でも簡単に取り入れられます。
まず仰向けになります。次に膝を立てて上半身のほうに引き寄せ、両手で両足を抱きしめます。
そして息を吐きながら、自分が気持ち良いと思うところまで、さらに両足を引き寄せます。これがガス抜きのポーズです。
「息をフーッと吐いて、足をクーッと引き込んであげると、お尻や腰のほうまで伸びていく感覚があると思います。」
この状態で後頭部を床に預けたまま、左右にコロンコロンと転がって、背骨まわりの筋肉をほぐしていきます。
背中がほぐれてきたなと感じるくらいまで、ある程度転がったらストップ。最後にガス抜きのポーズのままリラックスした状態でゆっくり深く5回呼吸し、息を吐きながら手足を開放して終わりです。
「ベッドのようなフカフカなところではなく、ヨガマットくらいの硬さの上で行うと、背中がコリコリほぐれていくのが分かりますよ。」
自律神経を整えて心身共にリラックス
今回は自律神経を整えるストレッチ&ヨガポーズを、ヨガインストラクターの中橋まやさんに教えていただきました。
自律神経を整えるとリラックス効果が得られ、睡眠の質も向上するため疲労感やストレスの軽減にもつながります。
どれも自宅で簡単にできるポーズなので、中橋さんによるお手本動画も参考にしながら、ぜひ日常に取り入れてみてください。
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