毎日忙しくしていると、「休んでいるのに疲れが取れない」という状態に陥ってしまうことがあります。一口に「疲れ」と言っても原因はさまざまで、その原因に合わせた回復方法を行うことが大切です。
今回は、主な疲れの原因とその対処法に加え、疲労時にあえて軽く体を動かす「アクティブレスト」について、トレーナー・中川翔太さんが解説します。
さらに、自宅や職場でできる簡単なアクティブレストの方法もご紹介します。
中川翔太(なかがわ しょうた)
京都府福知山市出身
海上自衛隊に6年勤めたのち、トレーナーとして数多くのトップアスリートのフィジカル、ランニングトレーニングを指導。またトレーニング、栄養学、心理学の資格を保有し、パーソナルトレーナーとして年間2,500セッションを越える一般の方のダイエット、食事管理、姿勢改善、生活習慣のサポートをはじめ、メディアでの発信など幅広く活躍中。
主な疲れの原因と対処法
主な疲労の原因は3つあります。肉体的疲労、精神的疲労、そして脳疲労とも言われる神経的疲労です。
肉体的疲労
肉体的疲労は、高強度の運動により筋肉の繊維が損傷して炎症を起こしている場合や、継続的な運動により蓄積された疲労物質が原因となり発生します。
ただ、運動をしていなければ問題ないわけではありません。座りっぱなしでいるなど、長時間同じ姿勢を続けていると、一部の筋肉だけが緊張した状態となり疲労物質がたまってしまうのです。
このような肉体的疲労には、あえて体を動かす「アクティブレスト」が効果的です。ストレッチや軽いランニング、入浴などで血流を良くすることで、効果的に疲労物質を排出することができます。
精神的疲労・神経的疲労(脳疲労)
精神的疲労は、人間関係や仕事のプレッシャーなどのストレスから来る疲労です。スポーツの大会前の緊張やプレッシャー、恐怖なども精神的疲労の一因となります。
神経的疲労は自律神経の乱れから来る疲労で、デスクワークで脳が緊張した状態が続いたときや、天気や気圧の変化によっても起こります。
精神的疲労・神経的疲労には、リラックスできる趣味に打ち込んで気分転換をしたり、しっかりと睡眠・休養を取ったりすることが効果的です。
“幸せホルモン”とも呼ばれるセロトニンや、やる気や幸福感を得られるドーパミンが分泌されることで、自律神経が安定し、疲れを軽減することができます。
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疲れているときこそ、体を動かす!アクティブレストとは?
アクティブレストは、アスリートが運動するなかで編み出したとされる疲労回復方法です。
疲労がたまって体が硬くなっているときや疲れ切っているときに、あえて軽い強度で運動し、骨や筋肉を動かして柔軟性を上げて血の巡りを良くすることで、疲労物質を排出させます。
「肉体的疲労」でもお伝えしましたが、同じ姿勢を続けるだけでも疲労物質はたまるため、在宅ワークなどであまり動いていない人にもアクティブレストはおすすめです。
いきなりトレーニングなどの強度の高い運動をすると、アドレナリンやノルアドレナリン※、ドーパミンが過剰に分泌されて眠りにつきにくくなってしまったり、体に負担がかかり怪我をしてしまったりする恐れがあります。
そのため、運動や筋トレを習慣化する際にも、まずはアクティブレストから始めてみましょう。
※ノルアドレナリン:交感神経の情報伝達に関与する神経伝達物質。交感神経を刺激し、血圧や心拍数を高める作用がある。
また、疲れているからといって動かずにいると、血流が悪い状態となり、筋肉の回復も遅くなってしまいます。
よく、マラソン後はすぐに止まらずに歩くと良いと言われていますが、歩くことで血の巡りを良くして疲労物質の排出を促し、筋肉の回復を助けているのです。
肉体的疲労の回復だけではない!万能なアクティブレスト
アクティブレストは、肉体的疲労の回復だけではなく、精神的疲労や神経的疲労にも有効な場合があります。
自律神経は背骨に付着して通っているため、背骨が硬くなっていると自律神経が乱れやすくなります。そのため、例えば背骨を動かすアクティブレストを行えば、自律神経を整える手助けになるのです。
また、セロトニンは腸で作られるため、お腹をひねるなど、腸に関わる筋肉を動かすアクティブレストを行うことで、腸を活性化させてセロトニンの分泌を促し、リラックス効果が期待できます。
アクティブレストの方法
アクティブレストは、心地良いと感じるぐらいの強度で行いましょう。きついと感じるほどの運動をしてしまうと、さらに疲労がたまってしまいます。
体がほど良く温まり、心身ともに心地良さを感じる程度の運動にとどめることが大切です。
アクティブレストには次のような方法があります。
ストレッチ
手軽に継続できるストレッチを行うことで、血の巡りが良くなります。筋肉を無理に伸ばして負荷をかけすぎないように注意しましょう。
このあと、自宅や職場でできる簡単なストレッチをご紹介します。
ウォーキング・軽いジョギング
ウォーキングやジョギングは、「疲れを感じない程度」を目安に行いましょう。
長時間歩いたり息が切れるような速いペースで走ったりすると、アドレナリンやノルアドレナリン、ドーパミンが過剰に出てしまい逆効果です。
ウォーキングであれば20〜30分程度を目安に、軽く息が上がる程度にしましょう。
お風呂
お風呂につかることも効果的です。体温を上げることで、血の巡りが良くなります。
お湯が熱すぎると汗をかきすぎ、アドレナリンが過剰に出てしまうため、自律神経が乱れやすくなってしまいます。38~40℃のお湯で、10~15分ほどつかりましょう。
なお、長くつかっていると脱水してしまい、血の巡りが悪くなってしまうので注意しましょう。
また、お風呂上がりにコップ1杯の水を飲むとさらに血の巡りが良くなり、心身ともにリラックスすることができます。
自宅や職場でできる、簡単なストレッチ
アクティブレストに最適なストレッチメニューを5つご紹介します。
最後に動画も載せているので、ぜひ一緒にやってみましょう。
自宅でできる背中のストレッチ
背中の筋肉を伸ばすストレッチです。背骨を動かすことで自律神経も刺激されるため、肉体的疲労だけではなく、精神的疲労・神経的疲労にも効果があります。
- 両手・両膝をついて、それぞれ肩幅・腰幅程度に開く
- 息を吐きながら骨盤を後傾させ、腰から首にかけて丸めていく
- 息を吸いながら骨盤を前傾させ、腰から首にかけて反らせていく
※肩甲骨を中央に寄せることで、より背中が収縮します
②~③を10回繰り返し1セットとして、2~3セット行います。できる限り大きく動かすことがポイントです。
自宅でできる広背筋のストレッチ
腰から背中、腕にかけて伸びている広背筋を伸ばします。巻き肩予防にも効果が期待できます。
- 両手・両膝をついて、指先を正面に向けて手を中央に寄せる
- 右手と左手が縦に並ぶように、左手の指先の前に右手を置く
- お尻を後ろに引きながら、重心を真っ直ぐ下に落とす
- 目線を左側に向け、20~30秒ほどかけて右脇の下の広背筋を伸ばす
※呼吸を止めないように注意 - 元に戻り反対側も同様に行う
②~⑤を1セットとして、2~3セット行います。
自宅でできるハムストリングスのストレッチ
デスクワークなどで座りっぱなしの場合、前ももの筋肉だけが引っ張られている状態が続き、ハムストリングスがまったく動いていない状態となり、むくみやすく、垂れやすくなってしまいます。
- 右膝を床について、左足は軽く曲げる程度で大きく前に出してしゃがむ
- 右足のかかとの上にお尻を乗せ、両手は軽く床について上半身を支える
- 左足のつま先を床に対して45度になるように上げる
- お腹と左ももを近付けて、左のハムストリングスを伸ばす
- 呼吸をしながら20~30秒ほどキープする
- 元に戻り反対側も同様に行う
①~⑥を1セットとして、2~3セット行います。
自宅でできる大臀筋のストレッチ
お尻にある大臀筋は、座りっぱなしだと硬くなり垂れやすくなってしまいます。腰まわりの筋肉も動かすため、腰痛予防も期待できます。
- 仰向けになる
- 左膝を90度に曲げて右側に倒し、右手で左膝を抑えるように床に押し付ける
- 左肩が上がらないよう、左手を真っ直ぐ伸ばして床に付け、目線を左側に向ける
- 上半身は右側、下半身は左側に引っ張られるのを意識して、呼吸をしながら20~30秒ほどかけて伸ばす
- 元に戻り反対側も同様に行う
②~⑤を1セットとして、2~3セット行います。
職場でもできる腸腰筋のストレッチ
背骨から前ももにかけて伸びている腸腰筋を動かすことで、腸を刺激して活性化させます。
セロトニンの分泌を助けるため、肉体的疲労だけではなく、精神的疲労・神経的疲労にも効果があります。また、腰痛予防・ぽっこりお腹解消・脚痩せの効果も期待できます。
- 椅子に座り上半身をリラックスさせ、両手は握りやすい位置で椅子の側面を持つ
- 左足を90度に曲げて床につけ、右足はかかとと膝が床に対して60度になるように軽く上げる
- 右足のかかとで、左足側面の足首から膝までをなぞるように上下に10~20回動かす
※呼吸を止めないように注意 - 元に戻り反対側も同様に行う
②〜④を1セットして、2~3セット行います。
職場でもできる胸椎・頚椎(けいつい)のストレッチ
デスクワークで背骨が丸くなってしまいがちなときにおすすめのストレッチです。背中が熱くなる程度に行います。
肩こり・首こりの予防効果も期待できます。
- 下半身をリラックスさせて椅子に座る
- 両手を90度に曲げ、お腹の横で両手のひらを上に向ける
- 両肘を後ろに引いて、背中を収縮させて肩甲骨を寄せる
- 親指を外側に開くように動かす
- 目線を上に上げ、天井を見る
- 呼吸をしながら、20~30秒ほどキープする
※手が緩んだり、頭の位置が元に戻ったりしないように注意
②~⑥を1セットとして、2~3セット行います。
まずはできることからやってみよう
アクティブレストは、肉体的疲労の回復や自律神経を整えることが目的です。ストレッチを高い強度で行うと「トレーニング」になってしまうため、目的を意識して、頑張りすぎないようにしましょう。
また、いきなり全メニューをこなすのは大変だと思うので、最初は1メニューから始めて、徐々にできる範囲で回数を増やすなど、自分のペースで実践してみてください。
撮影/佐々木謙一
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