パターは、キャディバッグに入れる14本のなかで最も使用頻度が高いクラブです。ゴルフ場は一般的に18ホールを72ストロークでプレーするように設計されています。
パー3は1ショット+2パット、パー4は2ショット+2パット、パー5は3ショット+2パットが規定打数です。つまり、36ストロークがパターに割り当てられています。
それにもかかわらず、多くのアマチュアゴルファーはパターを重視していません。使用頻度50%のクラブなのに練習をほとんどしません。ゴルフ場に行ったときに練習グリーンで何球か転がす程度です。
しかし、クラブフィッターに話を聞くと、最もフィッティングをしてほしいクラブがパターだと言います。その理由は、パッティングは小さな動きなので、体力が衰えても自分に合ったクラブをずっと使い続けることができるからです。
しかしながら、最もフィッティングが難しいのもパターです。ヘッドのタイプだけで3種類あり、ネック形状やシャフトの長さ、ヘッドの素材の違いなども含めると、バリエーションが豊富です。
クラブフィッターは何を基準にアマチュアゴルファーのパターを選んでいるのでしょうか。ポイントを聞いてみました。
Alpen TOKYO
ゴルフ5 フラッグシップストア 新宿店
大川舞子さん
渋野日向子選手や勝みなみ選手と同学年のいわゆる“黄金世代”。高校時代はプロゴルファーを目指していましたが、大学時代にエンジョイゴルファーに転向。現在はゴルフ5認定レッスンプロ兼クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーのクラブ選びをサポートしています。
パターとは?
パターはグリーンに乗ったボールを転がしてカップを狙うクラブです。ボールがグリーンに乗っていなくても、パターで転がせる場所であれば、どこでも使用することができます。
使用頻度が高い割にパターの練習をしない人が多いのは、OBや池ポチャ、ダフリ(※1)やトップ(※2)などのダメージの大きいミスが発生するクラブではないので、苦手意識がないからだと思われます。
※1)ダフリ:クラブでボールの手前の地面を打ち、ボールがあまり飛ばないミス。
※2)トップ:クラブの刃でボールを打ち、ゴロになったり飛びすぎたりするミス。
ただ、アマチュアゴルファーのなかには、ショットはそれなりに打てるようになったのに、グリーン上で3パットや4パットを連発し、スコアを崩している人もいます。
そういう人は改善の余地がありますし、その原因は自分に合ったパターを使っていないからかもしれません。
ヘッドの形状と基本の役割
パターのヘッド形状は大きく分けて3タイプあります。
ヘッド形状によって適した打ち方がありますから、自分好みの打ち方に合ったヘッド形状を選ぶ必要があります。
■ピンタイプ
米国のクラブメーカーPING(ピン)が最初に発売した、上から見たときに長方形のシルエットをしたパター。
ピン以外のメーカーはブレードタイプと呼びます。フェースを開閉しながら打ちたい人に適しています。
■マレットタイプ
ピンタイプよりもフェースの開閉を抑えてボールを打ちたい人向けに開発されたパター。日本ではカマボコ型とも呼ばれます。
ネオマレットタイプ(次項にて説明)が存在しない時代は直進性能の高さがウリでしたが、ネオマレットタイプが誕生してからは直進性と操作性のバランスが取れたモデルと表現されるようになりました。
■ネオマレットタイプ
マレットタイプが好評を得たことにより、メーカー各社がさらに直進性の高いモデルを開発するなかでヘッドの大型化が進んでいきました。
最初は大型マレットと呼ばれていましたが、モデル数がどんどん増えていき、ネオマレットタイプという呼称が生まれました。ヘッドを真っ直ぐ引いて打ちたい人に適しています。
ネックの形状と基本の役割、シャフトの長さについて
パターはヘッドの形状だけでなく、ネックの形状もいくつかの種類があります。
スタンダードなのがクランクネックです。自動車教習所のクランクのようにネックが屈折しています。ピンタイプのパターで多く採用されています。
一方、マレットタイプで採用されていることが多いのがベントネックです。ネックがほとんどなく、シャフト自体が湾曲しており、ヒール側に折れ曲がっています。
このほかにセンターシャフトやショートスラントネックといったタイプもありますが、パターを選ぶ際に重視するのはヘッド形状であり、ネック形状で選ぶことはありません。
ヘッドの動きをスムーズにするためにネック形状に工夫が凝らされていると理解しておけば大丈夫です。
パターのシャフトの長さは、標準的なサイズが33インチ(83.82cm)~35インチ(88.9cm)です。
一般的には身長に合わせてパターの長さを選んだほうが良いと言われますが、背が高くても深い前傾角度でパッティングしたい人もいます。
ボールを打ちやすい構えは人それぞれです。自分の土台が安定する構えを見つけてから、その構えに合った長さのパターを探すのがパター選びのセオリーになります。
パターの構え方・打ち方
昔からあるゴルフの格言に「パットに型なし」という言葉があります。
近年は科学技術の進歩により、ヘッドの動きやボールの回転を解析することでパッティングにも基本原理があることが分かってきましたが、フェース面が目標に対して真っ直ぐ向いており、ボールが目標に向かって真っ直ぐ転がるのであれば、基本的にどんな構えでも問題ありません。
打ち方に関しても、ヘッドを低く引いてボールに当てるストローク式と、上から打ち込むように当てるタップ式があります。どちらが正解というものではなく、自分にとって距離感と方向性が出しやすい打ち方を採用すればOKです。
パターの選び方。距離感とボールの回転をチェック!
では実際、どのようなパターを選べば良いのか。ゴルフ5にて、お客さんにパターのフィッティングもしている大川さんに教えてもらいました。
「最初は『今、お使いになっているパターはどういうタイプですか?』と聞きます。そして、普段はオーバーすることが多いか、ショートすることが多いかを確認します。さらに、ボールを打っている様子を見させてもらいます。
ボールを打つとき、『右に行った』や『左に行った』と気にされる方が多いですが、左右のブレはいくらでも修正できるんですね。私たちが見ているのはボールとカップとの距離感です。自分が打ちたいと思った距離をイメージ通りに打てることが一番重要です。
距離感の出し方は人それぞれです。ゆっくり振ったほうが距離感が合う人もいれば、速く振ったほうが距離感が合う人もいます。フェースを開閉したほうが距離感の合う人と、真っ直ぐ引いたほうが距離感の合う人もいます。
グリップを握る強さも、ギュッと握りたい人とフワッと握りたい人がいます。本当に人それぞれなので、その人の好みを確認しながら、打ち方に合ったパターを探していきます。
一方チェックするのは打ち方だけでなく、ボールの回転も見ます。ボールが順回転で転がったときに距離感が合うことが大事です。
お客様の感覚が良かったとしても、ボールの転がりが悪かったら『これはちょっと違います』となります。そういったことをチェックしながらお客様に合ったパターを選び出します。」(大川さん)
グリーンを観察しよう
また、ゴルフショップのパッティングエリアは平らですが、ゴルフ場のグリーンには傾斜があります。そのことも踏まえてパターを選ぶそうです。
「傾斜のある場所でフェースを開閉すると、ヘッドを後ろに引いたとき地面に近付きます。そうするとネオマレットタイプのような大きいヘッドだと地面に突っかかってしまいます。
ですから、フェースを開閉したい人はピンタイプのほうが合わせやすいです。逆にフェースを開閉しない人は、マレットタイプやネオマレットタイプのほうが合わせやすいということになります。」(大川さん)
グリーンの傾斜の話が出たので付け加えると、パットがオーバーしたりショートしたりするのは、必ずしも打ち方だけで決まるわけではありません。
下り傾斜を強く打てばオーバーし、上り傾斜を弱く打てばショートします。グリーン上で距離感を合わせるには、傾斜を正確に読むことと、傾斜に応じてストロークの強弱を調整することがポイントになります。
その前段階として、平らな場所で一定の距離を一定の振り幅で打てるパターを見つけることが、パッティング上達の足がかりになります。
Alpen TOKYO
住所:東京都新宿区新宿3丁目23-7ユニカビル
営業時間:平日11時〜22時/土日祝10時〜22時
撮影/中田悟
文/保井友秀
編集/GetNavi web