なぜラジオ体操をやるのかという問いに、「ラジオ体操だから」とだけ答えた作家さん(高橋秀実『素晴らしきラジオ体操』)がいます。この答えは、ラジオ体操の普遍性を見事に言い表しています。
夏休みになると首からカードをぶら下げた子どもたちが近くの公園や公民館に集ったものですが、なぜやるかなんて特に考えずに、行くことになったから行っていた、だけだったはずです。
卒業した学校の校歌を最後まで歌えなくても、ラジオ体操ならば最後までやり切ることができる、一度体が覚えた体操は忘れないのです。
最近、ラジオ体操人口が減ってきているそうですが、ラジオ体操の魅力を今一度考え直してみましょう。
ラジオ体操の歴史がすごい
ラジオ体操の始まりは1928年ですから、かれこれ90年近い歴史を持つことになります。
逓信省簡易保険局が昭和天皇の御大礼を記念して「国民保健体操」として定められたのがラジオ体操の始まり。つまり、健康増進を目的とした国家的なメディア・イベントでした。
健康増進と言うからには「ただ病気になることから体を守ることではなく、積極的に心身を鍛えるという考え方」(高井昌吏・古賀篤『健康優良児とその時代』)のもとに行われていました。
健康「維持」ではなくて「増進」させるのがラジオ体操の目的ですから、ラジオ体操とは今も昔も、無駄な動きが一切省かれた理想的な「トレーニング」なのです。
「これから欧州列強と競争していく日本にとって、健康・体育の改善が緊急課題である」(同書)と記されていたのはいかにも時代を感じさせますが、体づくりの基本があのラジオ体操にはすべて凝縮されているのです。
みんなが同じ動きを知ってるってすごい
意外と知られていないことなのですが、ラジオ体操は学習指導要領に含まれていません。つまり、教育カリキュラム上ではやってもやらなくても良いものなのです。
それでも、夏休みには子どもたちは地域に集まりましたし、今でも運動会の始まりにはラジオ体操が欠かせません。とりわけ今は地域コミュニティが弱まっていますから、地域の子どもたちが一堂に集まる場面はとても貴重です。子どもからお年寄りまで、共通言語ならぬ共通動作を交わせるのはラジオ体操しかありません。
ラジオ体操の運動は、15分ほどで1日分の運動量に匹敵するとも言われていますから、ラジオ体操は長寿ニッポンの源とも言えるでしょう。
最近の給食はバランスが考え抜かれているそうですが、ならばラジオ体操だってバランスを考え抜いた逸品と言えるのではないでしょうか。要するに、毎朝野菜ジュースを飲むようなものなのです。
いくつものバリエーションがあるからすごい
ラジオ体操には幻の「第三」があったり、地域ごとの方言で作られたラジオ体操があったりと、スタンダードなもの以外のものもたくさん存在します。
体の動かし方についても、最初に教えられた先生によって微妙に違っていたりして、それぞれがラジオ体操の体験や小ネタを持っています。
テレビ放送/ラジオ放送共に、指導担当/アシスタント担当が年代ごとに変わっていますから、見覚えのある人がそれぞれ違うのもおもしろいです。
ちなみに、女性が初めて指導担当になったのは1983年、ピアノの伴奏者はこれまで何人も変わってきたのだとか…。
引き継がれてきた伝統芸としてさまざまなバリエーションのラジオ体操を味わってみると、新たな醍醐味が出てくるでしょう。
ダイエット効果がすごい
ご存知のようにラジオ体操は全身運動ですから、体の血行を促進し、新陳代謝を向上させます。
数年前からラジオ体操を題材にしたダイエット本が好評を博しているようですが、それもそのはず、基礎代謝が良くなることはダイエットにも有効ですし、血行が良くなれば冷え性などの解消にもつながっていきます。
最近では、学生時代から過剰な身体コンプレックスを持つがゆえに、サプリメントに頼ったり、無理なダイエットに励んだりする学生さんもいるそうですが、それは懸命な判断ではありません。体を満遍なくほぐすラジオ体操は、下手なダイエットより効果てきめんでしょう。
なぜラジオ体操をやるのかという問いに、「ラジオ体操だから」と答える、それは素っ頓狂な答えのように見えて本質を捉えていたのです。
ラジオ体操は長らく、その理由など考えられずに続けられてきました。ならばまだまだ「なぜ必要か」だなんて考えずに続けるべきなのですが、実際にじっくり考えて直してみても、歴史もバリエーションもあればダイエット効果もありと、これだけよく考えられた体操はないことに改めて驚かされます。
今一度、ラジオ体操のすごさを感じてください。
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