“どんな人にも、どんな場所にも、どんな時にも 似合う服” をコンセプトに掲げるレーベル「SHIPS any」。
2020年のスタートを機に制作した「Munsingwear」の別注ポロシャツは、大人から子どもまで着用できるサイズレンジが話題になりました。
そして今季は、前作よりも幅広いリーチを目指してアップデートされた第2弾が発売。
開発エピソードや商品のこだわりについて、バイヤーの石幡瞬氏、SHIPS any渋谷店副店長の力石優介氏、Munsingwearのマーチャンダイザー小森優敏氏に伺います。
Photo:Takahiro Idenoshita
Interview&Text:Masayuki Ozawa[MANUSKRIPT]
――まずは取り組みの経緯について教えてください。
小森:ちょうどSHIPS anyさんがスタートする際だったと思います。キッズまでそろうレーベルということでMunsingwearのアイコンである“リトル・ピート”のかわいらしい魅力をフォーカスしたい、というお話をいただきました。
石幡:以前から、SHIPSのカジュアルやドレスで別注企画をお願いしており、高い親和性を感じていました。クラシックなモデルをアメリカ製で再現するなど、オリジンに忠実なものづくりを追求していましたよね。
小森:そうですね。素材と原産国にこだわっていたので、なかなかの高価格帯でした。Munsingwearは歴史の長いゴルフウェアブランドであることから、お客様の年齢層が高いので、「かわいいペンギン」という新しいアプローチができるのは、すごくうれしかったです。
石幡:世の中的にロゴブームなところもあり、クラシックブランドのアイコンを再評価する動きが高まっています。確かに40歳より上の世代からは、紳士のブランドだと思いますが、僕くらいの世代以下は、そのイメージがあまりありません。
多くのお客様にも、そうした先入観なく接することができる。それでいて、伝統という安心感もある。まさにぴったりだなと思いました。
力石:店頭でも、「ゴルフウェアだよね」という印象で見ていただける方から、「このペンギンかわいいね」というキャッチーな部分に目が留まって手に取ってくださるお客様もいて、接客のスタイルも幅広くできるブランドだな、と改めて気付きました。
小森:この“リトル・ピート”もアメリカではその「愛らしさ」がゴルファーだけでなく、歴代の大統領やハリウッドスターからの注目を集めてきました。
ブランドのセールスマネージャーが機内に持ち込んだ剥製のペンギンを見た老婦人に「このかわいいペンギンがあなたのマスコットになれば良い」と話しかけられたことがヒントだと言われています。
加えて、その剥製が倒れて傷付いたときに、CAさんが蝶ネクタイを首に巻いてあげたエピソードもあり、紳士的な魅力も備わっていったのです。
――今回の別注ポロシャツは、どんなテーマで企画されましたか?
石幡:昨年に続いて2作目となりますが、時代に相応しいことと、大人から子どもまでカバーする2つのコンセプトは変わりません。
今回も綿とポリエステルの混紡素材をお願いしました。見た目や手触りはとても綿タッチで、着心地が軽い。そして汗をかいても速乾性があり、縮みやヨレも少ないといった、良いとこ取りの発想が時代のニーズに合っているな、と。
力石:スポーツウェアとカジュアルウェアの垣根が以前に比べてなくなったように思います。昔は綿100%が正義みたいなムードがありましたけど、今は機能性とは標準的に備わっているものという感覚があるように思います。着ていて快適、長く着られる、といった服が時代に合っているのでしょう。
石幡:そういった角度から別注を依頼して、素材を選ぶ段階から携わらせていただき、さらに大人からキッズまでカバーできる7サイズを展開しています。これはSHIPS anyだから提案できるおもしろさかな、と思います。
力石:少しオーバーに着られる多くの若いお客様は、とにかく大きいサイズを選ばれます。また、僕らの世代30〜40代も、きっちりというよりほど良く緩く着たいという方が増えていますね。時代的にもリラックスは重要なテーマです。
石幡:これまではTシャツがトレンドで、シャツ離れが進み、サマーニットの売れ行きも良くない状況でした。でも、そんなTシャツ一辺倒にみんなが飽き始めていて、もっとかっちり、上品に着たいムードになってますよね。
とはいえ、いきなりシャツに戻るより、Tシャツとシャツの中間的なポロシャツは気軽に手に取りやすく、需要が高まっているのを感じます。
小森:DESCENTE社内でもポロシャツを着る人がとても増えてきました。そのなかでも、20代前半の割合が高く、Munsingwearをかわいいという声も聞くようになって驚いています。また、私は以前に販売員の人事を担当していましたが、面接に来られる方もポロシャツを着ている人が多かったですね。
――ディテールなどのポイントを教えてください。
石幡:前作の販売実績を見ると、どのサイズも同じくらい発注していたにもかかわらず、大きいサイズがすぐに売り切れてしまいました。その反省を踏まえて、今回は同じサイズでも少し大きく設定しました。着丈はそのままに、肩幅で2cm、胴まわりで6cmほど横のフィット感を緩く変更しています。
力石:サイズは1と2がキッズ向け、3がユニセックスのXSにあたります。私が今日着ているのが一番大きな7(XL)ですが、ルーズすぎる印象はありません。品良く見える、ほど良いリラックスフィットですね。
石幡:あとはカラーリングでしょうか。SHIPSらしいアイコニックなカラーであるネイビーと、白×ネイビーのボーダーに、差し色でフェードしたオレンジを追加しました。今までのSHIPS anyにはなかった色味も今年らしい特徴です。
小森:3色で刺繍されたペンギンは、アメリカ製のインラインでしか採用していない特別なディテールです。通常は1色で、ペンギンのデザインも少し違うのですが、これは少しぽっちゃりと丸みがあって、蝶ネクタイとボタンのベストを着ています。特に女性から「かわいい」と好評です。
――SHIPS anyさんならではの着こなし提案はありますか?
力石:世代ごとにアプローチができるのは先に申し上げた通りですが、やはり親子でおそろいができるのは魅力ですね。お客様の声を聞いても、同じブランドでのおそろいはできても、同じ服は探しても、なかなか見つからないようです。特にポロシャツは珍しいかもしれません。
僕も子どもがおりますがまだ小さいので、大きくなったら親子共通のデザインをおそろいにしてみたいです。
石幡:うちは女の子なのでパパとのおそろいはハードルが高いですが(笑)、普段行かないようなところでご飯を食べるときなどに着たいです。でも、小学生くらいだとまだ親が服を選ぶので、自然と似てきますよね。
力石:家族連れのお客様を見ていると、お母さんが選ぶケースがほとんど。お父さんの意思はそんなに見られず「じゃあ着てみようかな」という感じで買ってくださる印象です。
石幡:僕は自分の感覚で選ぶと、シンプルでベーシックな服ばかり選んでしまいがちですね。
力石:最近はもうSNSを参考にしている方がほとんど。ポロシャツなどを着てみたいと思ったら、インスタグラムなどを見て「これに似たシャツ、パンツはありますか?」と画像を持って来られるお客様が多いです。
SHIPSでたくさんコーディネートを提案するように意識していますが、もう全然違うショップの画像でも若い方を中心に、男性でもSNSを教科書にしているな、と驚かされます。
――最後にMunsingwearから、SHIPS anyのお客様にメッセージをお願いします。
小森:SHIPS anyさんとの取り組みによって、サイズ感を変えるなど、自分たちにない発想によって新しいMunsingwearがどんどん作られていくのは、私自身、とても楽しいし、トレンドを打ち出すお店でそれが展開されるのは光栄なことです。
綿とポリエステルの混紡素材は決して珍しいものではありません。しかし、スポーツウェアやアウトドアウェアを手掛けるDESCENTEの検査はとても厳しく、高い基準をクリアした生地だけが店頭に並んでいます。
そういったこだわりにも価値を感じて、親子で楽しんでいただけるとうれしいですね。
石幡瞬
2020年2月のSHIPS anyのローンチより、メンズのバイイングを担当。本企画の別注アイテムも手掛ける。
力石優介
SHIPSのさまざまレーベルを経て、現在はSHIPS any渋谷店副店長。等身大の接客スタイルが話題に。
小森優敏
Munsingwearのマーチャンダイザー。カジュアルの企画からブランド、ショップとのコラボレーションを担当。
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