運動不足を感じている人や、新たにスポーツを始めたいと思っている社会人におすすめなのが「テニス」です。
実は、テニスは痩せやすく、体力づくりのために継続しやすいスポーツで、適切なストレッチをすることでケガの予防にもつながります。
また、テニスは社会人になってからでも始めやすいところも魅力です。
その理由と、初心者がテニスを始めるために最適な方法について、スポーツトレーナーの武井敦彦さんに詳しく聞いてきました。
撮影協力/楠クラブ
テニスが痩せやすく、続けやすい理由とは?
国内外のプロ野球チームでトレーナーとして活躍し、現在も日本代表のプロからジュニアアスリートのパーソナルトレーニングまで行う武井敦彦さん。
ご自身も高校からテニスを楽しみ、ジュニアテニスアカデミーでも指導を行っているそうです。
今回、そんな武井さんに、「テニスが社会人に最適な理由」や「運動面でのメリット」、「初心者がテニスを始める方法」などを伺いました。
“走って打つ”動きが体力づくりに最適
――なぜテニスは「痩せやすい」と言われているのでしょうか?
テニスはラケットでボールを打つのでどうしても上肢(腕や手)だけに注目がいきがちですが、ボールを打つためにはフットワークを使い、良いポジションに入る必要があります。
また、しっかりとボールを打ち返すためには、下肢(脚)から伝わるパワーを上肢に伝える正しい身体の使い方の習得が必要になります。
そのためテニスは、“全身運動”になるということが前提としてあります。
そして、必然的にコート上で走らなくてはいけないので心拍数が上がり、全身を使うため全身の筋力も向上します。
筋力が向上すると痩せやすいというか、脂肪燃焼を促しやすいので、そういう意味でもテニスは体力づくりに最適だと思います。
――テニスの動きは脂肪燃焼効率が高いのですか?
そうですね。先ほどお話したように、テニスは全身運動ですので、全身の筋力を向上させることが可能になります。
そして、テニスは断続的にポイントを取ることを目指すスポーツですので、そのような動きを行うことで自然と体力がつき、結果的に脂肪燃焼効果が期待できます。
もし皆さんが、仲間と2時間断続的にテニスをプレーすれば、楽しみながら体力が向上し、脂肪燃焼を促してくれる、まさに“理想的なスポーツ”となりますね!
――仲間と楽しく汗を流せる。これもテニスの魅力で続けやすい理由でしょうか?
この点が一番大事かと思います。
もし皆さんが選手を目指すのであれば黙々と練習やトレーニングに打ち込むことも大事になるかと思いますが、平日の仕事終わりや週末に仲間とテニスを行うのであれば、日頃のストレス発散の場となるかと思います。
また、仲間と共に楽しい時間を共有することで、よりコミュニケーションが取れ、心身共に充実した時間が過ごせるのではないでしょうか。
やはり“楽しいこと”は自然と長続きするものですから!
テニスはケガをしにくいスポーツ!?
テニスは全身運動により、脂肪燃焼効率が高いスポーツであることが分かりました。
仲間と一緒に楽しめるため、続けやすいというメリットもあります。でも日頃から運動していない人にとって、新たにスポーツを始めるとケガしてしまうのではないかという不安も…。
武井さんは、その点についてもテニスは安心して楽しめるスポーツだと話します。
競技者同士の接触がない「非コンタクトスポーツ」
――大人がスポーツを始めるにあたって、ケガのリスクも気になるところです。
スポーツには、サッカーやラグビーなどの「コンタクトスポーツ」と、テニスやバトミントンなどの「非コンタクトスポーツ」の2種類があります。
サッカーやラグビーは競技者同士の接触があり、スライディングやタックルといった動きにより、いくら自分のコンディションを整えていてもケガをするリスクが必ずあるんです。
一方、テニスは相手とネット越しで対峙するスポーツですので、ケガをするとすれば自らのアクションによるものとなります。
例えば、サーブを打つときに肩を痛めてしまったり、ボールを追いかけているときに転倒してしまったりする場合などが挙げられます。
ですから、テニスをするうえでは、自らのコンディション=心身の調子を整えることが重要になります。
――ケガをしないためには何をすれば良いのでしょうか?
テニスによるケガは、打ったり走ったりの繰り返しの動作で障害が起きる「慢性障害」がほとんどです。
転倒して手をついて骨折するといった、予防できない障害である「急性障害」は少ない傾向にあります。そのため日頃からストレッチをして、プレー前に身体をしっかりほぐすことで、ある程度ケガを予防できます。
ストレッチはケガのリスクを軽減するだけでなく、柔軟性が生まれるためプレー向上にも役立ちますよ。
――ケガ予防につながるおすすめのストレッチを教えてください。
胸郭・股関節・足首まわりのストレッチ、そしてもも裏やふくらはぎを伸ばすストレッチがおすすめです。
ストレッチは、筋肉と腱を伸ばすものです。筋肉が固いと関節の動きが悪くなり、ボールを打つ際も肩関節などが回しづらくなります。
テニスの動きに基づいたトレーニングと併せて行うことで身体のコンディションを整えることができ、ケガの予防につながります。
あとは体幹トレーニング。ボールを追いかけて打つと身体がブレてしまうのですが、体幹を鍛えておくとしっかり踏ん張ることができます。
腕立ての姿勢で肘をついた状態を、最初は30秒くらいキープするだけでOKです。
慣れてくると片手・片足を上げると効果的。さらに進んで、バランスボールの上でこの姿勢をキープすれば、より体幹を鍛えられます。
初心者歓迎!テニスは“始めやすい”のも魅力
テニスは体力づくりの面で非常に優秀なスポーツであることが分かりました。
これだけのメリットがあるうえに、さらに“始めやすい”ことも大きな魅力だと武井さんは言います。テニスは“始めやすい”スポーツで初心者大歓迎。その理由について教えていただきました。
「ボールを打つ快感」を一度味わうとヤミツキに!
――そもそもテニスは初心者でも始められるものなのでしょうか?
テニスは社会人でも始めやすいスポーツだと思います。テニスコートやテニススクールが全国に点在していて、自宅の近くで始められるということがやっぱり大きいですね。
市営や県営など安価で借りられるコートや、天候に左右されずに楽しめるインドアコートもあるので手軽にテニスを楽しめます。
また、レンタルラケットやシューズなどを用意しているところもあり、仕事帰りなどにウェアやタオルなどの最低限の荷物でプレーが可能になります。
――初心者はテニススクールに入ったほうが良いのでしょうか?
本当に初めての方でも、スクールに入れば安心してテニスを始められます。
ボールの打ち方はもちろん、ラケットの持ち方から教えてもらえるので、無料の体験入学などでテニスに触れることから始めると良いと思います。
また、スクールでのレッスンは「初心者」「初中級」「中級」「中上級」「上級」とレベルに合わせて細分化されています。
無理なく自分のレベルに合わせたレッスンを受けられるので、達成感を味わいながら楽しく上達できるのがメリットですね。
――やっぱりうまくなっている実感がないと続けられませんよね。
最初にいきなりボールを出されてもなかなか打てませんが、スクールならコーチが打ちやすいところにボールを手出ししてくれます。
ラリーもコーチが相手なら打ちやすい球を返してくれるので、テニスの醍醐味である“ボールを打つ快感”を得ることができます。
「ラリーができるようになる」とか「仲間とダブルスを楽しめる」くらいを目標にしておけば、そんなに焦らなくても徐々にうまくなると思います。
こうして仲間と楽しく練習できたり、新しい仲間に出会えたりすることもスクールの魅力。テニスは仲間と一緒に汗を流せるので、楽しみながらできます。
だからこそ、一度テニスを始めると継続する人が多いんです。
テニスを始めるために必要なものは?
武井さんのお話を聞いていると、テニスを始めたくなりますね。
やる気になってきたところで、改めてテニスに必要なものを教えてもらいました。
ウェアや道具選びもテニスの楽しみの一つ
――テニスを始める場合、まず何を用意しておけば良いでしょうか?
最低限必要なものは、ウェアとシューズだけです。スクールの体験レッスンなどはラケットを貸してもらえるので、まずは“テニスを始める”ことが重要です。
テニスを始めると、ラケットなど必要な道具も分かりますし、どんなラケットを買えば良いのかも分かると思います。
テニスショップやスポーツ用品店で、実際に手に取り自分に合ったものを選べるはずです。
――ウェアはどういったものを選べば良いですか?
機能性はもちろんですが、デザインも自分に合ったものを選ぶことで、よりテニスを楽しむことが可能になります。やっぱり好みのデザインのウェアを着るとテンションもモチベーションもアップしますから。
今はテニスウェアもバリエーションが豊富。スポーツ用なので動きやすいし、日常使いできるデザインのテニスウェアも増えています。
テニスショップに行って、ウェアや道具を見るだけでも楽しいですよ。
――そういったウェアや道具選びも楽しいですよね。
そうなんですよ。体力づくりのつもりで始めたのに、いつのまにかテニス自体が楽しくなって、気付けばテニスショップに足が向いている。それがテニスの魅力です(笑)。
さらに次のステージに進めば、コートに合わせたシューズ選びなども楽しめるし、プロの選手が使っているウェアや道具も気になってくると思います。
その結果、ウィンブルドンなどテニスの試合も観戦するようになるはず。こうなってくると、本当の“テニス好き”ですね!
武井敦彦(たけい あつひこ)
1980年9月21日生まれ。高校卒業後、渡米。2006年よりMLBのアスレティックトレーナーとして数々の選手をサポートし、07年にはパイオニアリーグベストトレーナー賞を受賞。09年からのフリー活動を経て、11年に横浜DeNAベイスターズのアスレティックトレーナーに就任。13年、Passion Sports Trainingを立ち上げ代表に就任。現在テニス、ビーチサッカー、フットサル、馬場馬術を中心に、プロからジュニアアスリートのパーソナルトレーニングや各種スポーツ医科学セミナー講師などを行う。博士課程在籍。
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