テニスウェアと言えば、男子はショートパンツで女子はスコート——。そんな既成概念を打ち破る、テニスをプレーするためのロングパンツが誕生した。
新たなスタイルを築くウェアは、その名も“アドバンテージパンツ”。果たしてこのロングパンツの、どこが既存のウェアの一歩先を行くのか?
それらを実証するためにも、男女ともに実業団最高峰の日本リーグに属し、女性チームは昨年準優勝した名門・明治安田生命のテニスチームの精鋭たちに、実際にはいてプレーしていただいた。
彼・彼女たちが感じた、アドバンテージパンツのアドバンテージたる所以とは?
さらには、ウェアへのこだわりや「選ぶ楽しみ」についても、商品の開発に携わったルコックスポルティフのマーチャンダイザー・渡邊麻美氏も交えて、語り尽くしてもらった。
写真左から:足立真美さん/米原実令さん/田村迅さん/德本翔さん/野田哲平さん
男女で異なる“ロングパンツ”の捉え方
ウェアで自己表現できるのも、個人競技のテニスの魅力。ファッション性に機能性、そして対戦相手への意思表示も!?選手のみなさんがプレーするときのスタイルや、ウェアを選ぶ際のポイントをまずは伺った。
野田:普段テニスをするときの格好は、今くらいの時期ですと、上がTシャツで下が短パン。試合前は、その上に長袖、長ズボンのジャージをはきますが、ウォームアップの途中でジャージは脱いで、試合のときは半袖・短パンになると思います。動くと身体が温まるので、ジャージは上下とも脱ぐ感じになると思います。
徳本:上着もロングパンツも、ファスナーが付いていると脱ぎ着がしやすくて良いですね。学生の頃は、見栄えを気にして若干派手目なのを着てましたが、社会人になってからは、どちらかというと機能性のほうを重視します。デザインは、シンプルなものを選ぶようになりました。
米原:私はウェアを選ぶのが好きなので、デザイン性も重視します。もちろん機能性は大切ですが、色も自分に似合うものを考えつつ…写真に納まったときをイメージしたりします。スコートも今はいろいろなデザインや長さがありますし、寒いときはロングスパッツをはくことも多いですね。
足立:私は正直、あまり色などは気にしなくて。デザインとしては、シンプルなのが好きです。色も、単独で見た印象より、上下が合わせやすいもの…着回しがきくものを選ぶことが多いです。一度、全身青色のウェアを着て、脱いでも脱いでも青という、マトリョーシカみたいなことをネタでやりましたが(笑)。
米原:あれは笑った!
足立:頻繁に脱ぎ着するのは苦ではないので、インナーの上に半袖や薄手のシャツを着て、冬ならその上にジャージを着ることもあります。上着はかぶるタイプだと面倒なので、ファスナーやボタンが付いているものが良いと思います。あと日焼けが気になるので、最近は長袖、長いスパッツをはくことも多いです。
米原:そこ、すごく大切ですね。私も社会人になってからは、すごく日焼け気にします。
渡邊:男性は、ロングパンツをはいてテニスをすることはないんですか?
野田:あまりないですね。テニススタイルの風潮で、短パンというイメージがあるので。それに長ズボンのまま試合をすると、対戦相手に、「本気出してないんじゃないか、余裕あるんだな」と思われてしまうと思うんです。ですから礼儀ではないですが、「本気出しているぞ!」という姿勢を見せるというのもあります。
徳本:それがすべてですね!相手への礼儀です(笑)。
プレーして感じた、アドバンテージパンツの魅力とは
対戦相手への「礼儀」もあり、ロングパンツをはくことは少ないという男性陣。対して女性陣は日焼け対策もあり、脚全体を覆うことへの抵抗感はない模様。
そんな選手のみなさんが、アドバンテージパンツを体験し覚えた驚きの数々とは…?
野田:けっこう汗っかきなのですが、長時間プレーした後も肌触りがサラサラで、そこがすごく好きですね。発汗性が良いのかなと思います。
徳本:私は、ビニールっぽい素材だとシャカシャカするのが気になるんです。でもこのパンツは、それがなかった。あとは、先端部がスリムなのも好きです。脚と布の間に空間があると、動いたときに布が肌に当たり、それがストレスに感じることがあるんです。でもこのパンツは、脚が包まれているような安心感がありました。
米原:言わんとしていることは分かる!(笑)
田村:私も、シャカシャカするのが嫌なんです。これまでダボッとした長ズボンにしか出会ってこなかったので、今日は新鮮でした。実際にはいてプレーしても動きやすかったので、忘れがたいひとときになりました。
足立:私は長ズボンをはいたとき、裾の長さが一番気になるんです。長いと引きずりそうで嫌だし、でも短すぎると、ツンツルテンでかっこ悪いし(笑)。その点、このパンツは私的にはちょうど良い長さですし、動いても、裾が上がってくることがなかったのも良かったです。
あと、ボールが入れやすい。3個…頑張れば4個入ると思うので、いちいちボールを取りに行かなくて良いのがうれしいですね。ストレッチ性の素材でポケットが作られていて、伸びるのが良いのかなと思います。
大きなポケットは、ボールを1個しか入れていないと中で動くのが気になりますが、これは伸びるので、ボールの数が変わっても違和感がないです。
田村:確かに、ボールをポケットに入れていても気にならない。それが一番大きいですね。深すぎないし浅すぎない。しっかりボールが入るし、取り出しやすいです。
渡邊:ポケットは、今回のこだわりなんです。左右のポケットが内側でつながっているので、ボールを取り出すときに裏地が出てこないようになっているんです。
一同:あー!だから取り出しやすいんだ!
渡邊:あとはポケットにマチが付いているので、ボールが入れやすく、でも飛び出しにくくなっています。
一同:なるほど!確かに。
渡邊:良いリアクション、ありがとうございます。
ポケットに隠された製作者のこだわりに、驚きを覚えた選手のみなさん。
さらには機能性、そしてデザインへのひと工夫にも驚嘆の声が。
足立:素材自体が伸びるからなのか、動いても布が引っかかる感じがないのも良いです。長いパンツは、リターンのときに腰を落として構えると、太ももあたりが突っ張るので手で布を引っ張ることが多いんです。でもこのパンツは、その必要がなかったです。
米原:確かに。スコートでも突っ張ると感じることがあるけれど、これはなかったね。長いパンツは重いし動きにくいという印象があったんですが、純粋に動きやすかったです。特に開脚したときに、動きが制限される感じが全然なかったので。
あとはデザインで、ここ(ストレッチ素材部分)を広げると、色が変わるんですよ!ストレッチしていたときに気付いたんです。動いたときにピンク色になるので、それはすごくかわいいなと思いました。
渡邊:それも、この商品のこだわりの一つなんです。伸びるニット素材と、軽い布帛素材の両方を組み合わせることで、柔軟性と軽量性の両立を実現しているんです。股下にもストレッチ素材を入れているので、より脚が開きやすいようにしています。180度脚を開いて、ボールに追いつく!
足立:その性能を活かすには、脚を180度開ける柔軟性が必要になりますね。
一同:間違いない(笑)。
渡邊:米原さんがおっしゃっていた、ストレッチしたときに色が変わるのも工夫しました。
田村:私も、色が変わるのはすごく良いなと思ったんです。トレーニング後で脚がパンと張っているときは、布が伸びて色が見えるんじゃないかなと。そうすれば、自分で身体の変化や仕上がりに気付くこともあるだろうし、そういう楽しみ方もできるかもしれないです。
渡邊:実は色の変化には、パフォーマンスを視覚的に認識できるようにする狙いもあります。ストレッチ素材は関節部に用いられているので、「伸びてるよ!」と色で訴えるようにしているんです(笑)。太ももも、力が入ったときにグッと太くなると思うので、そのような部分にもストレッチ素材を配置しています。
いきなりハードルを上げる必要なし!自分らしい格好でコートに立とう
プレイヤーがウェアに求める機能やデザインは、人によって異なり、まさに好みは十人十色。そんな選手のみなさんに、最後に一般プレイヤーたちへのアドバイスや、テニスウェアへの提言を伺った。
野田:これからテニスを始めようという方は、いきなり半袖・短パンになる必要は全然ないと思います。身体を冷やすのも良くないし、心地良い格好が良いと思います。
徳本:私は、今日は短パンをはいて、その上にアドバンテージパンツをはいてます。お尻まわりは余裕があるので、全然違和感はないですね。
米原:私はさっきも言ったように、テニスウェアを選ぶのが好きなので、もっとカラーバリエーションなどが多ければ良いなとも思います。私服でも着られるようなウェアが、もっともっと増えて欲しいなとも思うんです。そうすれば一般の人も手に取って、「これでテニスができるなら、やりたいな」と思うのかなと思います。
足立:私もテニスウェアを選ぶときは、普段も着られることも念頭に入れています。ただゴルフウェアに比べると、テニスはまだバリエーションが少ないので、もっと多いと良いなと思います。
渡邊:貴重なフィードバックの数々、ありがとうございました!
<選手実績>
田村 迅:平成30年度インカレ複ベスト4
野田 哲平:平成26年度新進複準優勝/平成27年度夏関複ベスト4
德本 翔:第91回関東オープン単準優勝
足立 真美:平成28年全米大学室内選手権複優勝/第34回日本リーグ優秀選手賞受賞
米原 実令:第92・94回全日本選手権複優勝/第34回日本リーグ優秀選手賞受賞
<プロフィール>
ルコックスポルティフ・アリーナマーケティング部門 ルコックスポルティフマーケティング部
アパレルカテゴリーマーケティング課 商品企画担当
渡邊 麻美
内田 暁
国内外のテニス大会を中心に取材・執筆活動を続けるフリーランス・ライター。著書に、錦織圭の幼少期からの足跡を追ったノンフィクション『錦織圭 リターン・ゲーム』(学研出版)や、神経科学者との共著『勝てる脳、負ける脳』(集英社)がある。
脚にフィットするスマートなシルエットにこだわり、従来シリーズ以上に“テニスに特化”した機能性を深く追求したパンツ。ルコックスポルティフのテニス専用パンツ「アドバンテージパンツ」が2020年8月にデビューしました。今回は「アドバンテージパ[…]
