ルコックスポルティフのスニーカーラインナップを象徴するシリーズ、LCS R。
その生誕30周年を記念し、シューズのアートワークからカラーリング、外箱まで、あらゆる場所にアーティストSHETAさんがカスタマイズを施した、スペシャルコラボレーションモデルが登場。
その制作ウラ話やアートにかける想い、そしてパーソナルなバックボーンなど、SHETAさんご本人にお話を聞いてきました。
――まずはご自身の紹介と、アーティストを志したきっかけを教えてください。
出身は湘南で、ずっと海の近くで育ちました。お父さんはサーファーで、すっごいファンキーな人。お母さんはとにかく優しくて、よく洋服を作ったり絵を描いたりしていました。
そういう家庭だったから、小さい頃からサーフカルチャーやスケートカルチャーに親しみながら、物心付く前から自然と絵を描いていたそうです。小学生の頃は授業中もずっとノートに絵を描いているような子で、当時は漫画家になりたいと思っていましたね。
それから中学生くらいでスケートボードを始め、スケートデッキの裏に描かれているグラフィックに衝撃を受けて、ストリートっぽいアートを描くようになっていきました。
だけど専門的な勉強をしたことはなくて、普通に学校を卒業してからサーフ/スケート系の会社に就職。グラフィックデザイナーとして働きながら、週末だけ自分の好きな絵を描いていたんですが、30歳になる前に自分の作品1本で勝負してみたいと思い、29歳で退社。アーティストとして独立して活動を始め、現在に至っています。
――現在の主な活動内容や、お仕事の範疇は?
うれしいことに少しずつ作品も売れ始めてきているので、今はひたすら自分の作品を描き続けていますね。
あとはブランドさんとのコラボレーションワークだったり、最近だと、高知県と三重県でパブリックアートを制作させていただいたり。今年の3月には、初めて個展もやらせていただきました。今後もっと本格的にアート界に進むにあたって、とても貴重な勉強になりましたね。
――インスピレーションの源は?
音楽からヒントを得ることは多いかもしれません。だけどそれ以前に、まずラブ&ピースとかハッピーとか、ポジティブなマインドを作品創りのメインコンセプトにしています。そこを地盤に、その時々のテーマやメッセージを表現していくイメージですね。
そういうスタイルを確立したのが独立して2年後くらいだから、2017年頃。作品を見てくれた方に言われたんです、「SHETAの絵には、いつも悪がないよね」って。意識していたわけではないんですが、そう言われて改めて見返してみると、確かにそうだなって。そこで気付いたんです。
それが僕のアート性であって、作品を通して伝えたいことなんじゃないかなって。だったらそれを突き詰めていこう、と。どうしてそうなったのかは分かりません。だけど多分、両親の人柄や家庭環境、生まれ育った湘南の空気が影響してるんじゃないかと思います。
――今後、描いていきたいテーマは?
ラブ&ピースっていう大前提は変わらないですが、もう少し細かいテーマ設定っていうのは、時代の流れで変わっていくでしょうね。
最近だと、やっぱりコロナの影響が大きかった。僕自身、家族の大切さに改めて気付かされましたし、そういう誰かにとって大切な誰かを応援したいっていう意味で、この前の個展では『エール』というテーマを設定して制作しました。今は、環境問題について表現していきたいと思っています。
――アーティストとしての目標は?
日本だけに限らず、もっとグローバルに活動していきたいですね。もともと海外でやりたいっていうのはあったんですが、高知県と三重県で絵を描かせていただいてから、ますます思うようになりました。
もちろんパブリックアートって、キャンバスに向かって好き勝手描くのとは訳が違うから、制約も多いんですよ。だけどそれを依頼してくれた方々の根底にあるのは、街をもっと良くしたい、美しく守っていきたいっていう、すごく純粋な想いなんですよね。
そういった純粋な想いを、僕の絵を介してみんなで一緒に、それこそ子どもたちとかにも手伝ってもらいながら、一致団結してカタチにしていくっていう作業が、すごく心に響いて。
だって手伝ってもらってるのはこっちなのに、最後に「ありがとうございました!」とか言ってくれるんですよ?改めて、アートの力ってすごいなって実感しました。
やっぱりアートには、人と人とをつないだり、人の心を動かしたりする力があるんだなって。この素晴らしい経験を、国境も人種も超えて、もっとさまざまな場所でさまざまな人々と共有したいと思っています。
――今回のコラボレーションについて。まずオファーがあったときの気持ちは?
スニーカーが大好きなので、シンプルにめちゃくちゃうれしかったです。それと個人的に、ルコックスポルティフさんが同モデルで以前にコラボレーションしていたアーティストさんのファンだったっていうのもあって、とにかく光栄です!っていう気持ちでした。
――ルコックスポルティフ側からはどんなオーダーがありましたか?
オーダーは、カラーリングは白ベースで、テーマは『フランスのバカンス』。この2つでした。僕自身、白は好きなカラーだし、湘南育ちで海も大好きだから、とてもやりやすかったですね。
外側のアッパーサイドのロゴ部分には、ブランドイニシャルの“L”の文字をかたどったヤシの木のグラフィックをハメて、インソールはプールを真上から見たイメージで、浮き輪とかカクテルとかのイラストを散りばめています。
あとはシューズボックスもデザインさせてもらいました。当初、シューズボックスまでカスタムするのは難しいかもしれないと言われていたんですが、みなさんの尽力で実現することができました。
――特にこだわった点や、苦労した点は?
こだわった点は、シューレースですかね。今回特別にシューレースを2本付けてもらい、1本をベーシックなホワイト、もう1本をグラデーションのレインボーカラーにしたんです。
だけどこのグラデーションをバラつきなく量産化するのがすごく大変だったそうで…。まさかそんなに難しいことだったなんて想像できていなかったので、申し訳ないことをしたな、と。ですが、おかげさまでイメージ通りに仕上がったので、本当にありがたいです。
苦労した点は…いや、特にないですね(笑)。アイディアも比較的早い段階で決められたし、根本的にスニーカーが大好きなので、最後までずっと楽しみながら制作することができました。
――仕上がりの感想は?
僕の作業領域って、描き始めから納品まで、ずっと平面の世界じゃないですか。それが立体物としてでき上がってくるのは、素直に感動しますよね。
特に今回は、シュータントップのロゴを立体的なプリントにしてくれたり、ヒールのネームも刺繍にしてくれたりと、僕の手を離れた後のディテール創りにもすごくこだわっていただいていて。
てっきり普通のプリントで表現されるものだと思い込んでいたので、想像をはるかに超えるクオリティーに仕上がったと感じています。
あとはクッション性も良いから、履き心地もばっちり。ルックスうんぬんではなく、単純にプロダクトとしての完成度も相当高いと思います。
――最後に、本モデルのユーザーにメッセージをお願いします。
実はこのプロジェクトって、2年前くらいから動き出しているんですよ。そのときはまだコロナ前でしたから、まさか世の中がこんな風に変わってしまうなんて思ってもいませんでした。
だけど、だからこそこんなハッピーなデザインで、少しでも気分を上げてもらいたい。まだまだ海やリゾートでハジけることもできないかもしれないけど、雰囲気だけでもバカンス気分を味わってもらえればうれしいですね。
<プロフィール>
SHETA (シータ)
湘南出身。親しみとユーモアあふれる作品を色鮮やかさと大胆かつ力強い線で表現する。FILAやCOACH、STAR WARSとのコラボレーションやミュージシャンなどのCDジャケット、グッズのイラストを描き起こすほか、ミューラルアートなども手掛ける。主なアートワークスはCOACH, STAR WARS, Kimpton Shinjuku Tokyo, EARTHMANS HOTELS, FILA, KIEHL’S, BULK HOMME, RIP SLYME, TACO BELL, 四国八十八箇所霊場第三七番札所 岩本寺(高知県), 東海道関宿 SAKURA-SABO(三重県) and more.
instagram:@shetagram
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