【藤田菜七子騎手インタビュー】JRA公認メーカーとして日本初のデサントのジョッキーベスト、その開発秘話とは

【藤田菜七子騎手インタビュー】JRA公認メーカーとして日本初のデサントのジョッキーベスト、その開発秘話とは

  • 2020/12/18 (金)
  • 2023/07/10 (月)

落馬により、常に生命の危機や大ケガのリスクと隣合わせの競馬の世界。そんな危険な環境のなかで、ジョッキーたちを守ってくれるのがジョッキーベストです。軽さと動きやすさにこだわりながらも、落馬時の衝撃を吸収してくれるジョッキーベストは、今やジョッキーたちに欠かせないアイテムと言っても良いでしょう。

そんなジョッキーベストをJRA(日本中央競馬会)の公認のメーカーとして日本で初めて開発したのがデサント。ベストの開発を皮切りに、今ではさまざまなアイテムを展開し、多くのジョッキーから支持を集めています。

JRA女性最多勝利記録を樹立した藤田菜七子騎手も、デサントのアイテムを愛用するジョッキーの一人。

12月下旬にはデサントとのコラボアイテムも発売される藤田騎手に、ジョッキーベストをはじめとしたアイテムの使い心地について伺いつつ、ジョッキーベストの開発秘話をお届けします。

JRA公認メーカーとして日本初のジョッキーベスト開発秘話。デサントのこだわりとは

まずは、デサントがジョッキーベストを作るようになった経緯について見ていきましょう。

それは、JRAがプロテクターの開発を公募したことに遡ります。1990年代、JRAの騎手が1年で数名亡くなってしまうことや、大ケガをするようなことがありました。

そのような事態を見かねたJRAは、当時はまだ日本製のプロテクターがなかったため、日本初のプロテクター開発の公募に踏み出します。その結果、デサントがコンペを勝ち取り、1999年にメッシュ素材で軽量かつ通気性に優れ、落馬時の衝撃も吸収してくれるデサントのジョッキーベストが誕生したのです。

ジョッキーベストを作るにあたり、デサントはジョッキーのトレーニングセンターやパドックの計量室に何度も足を運び、サンプルを持っていってはヒアリングを重ねました。実際にジョッキーに試着してもらうことで、馬に乗る姿勢をとっても痛くならないよう、腰・脇に素材を入れないなどの改善が施されたのです。

藤田騎手も絶賛するデサントジョッキーベストの魅力とは

デサントのジョッキーベストを触る藤田菜七子騎手

デサントのジョッキーベストを愛用する藤田菜七子騎手は、ベストの使い心地についてこう語ってくれました。

 

藤田:安全性はもちろんのこと、使い心地も最高です。ファスナーが大きくて開け閉めしやすいので、バタバタとしているときもスムーズに着れます。

とても軽くて邪魔にならないのに、頑丈に作られているので落馬したときの衝撃もほとんど吸収してくれるんです。

今使っているベストも3~4年利用していますが、メッシュ部分が多少破れただけで、本体はまだまだ使えそうです。

 

藤田騎手も絶賛するデサントのジョッキーベスト、実は騎手たちとそのパフォーマンスを守るためにさまざまな工夫がなされています。

例えば、使用されている衝撃緩衝材は、強度にこだわるため100回以上の実験を行い、そのなかから最適な材料を割り出しました。夏でも着用されることを考え、緩衝材には小さな穴を開け通気性にも考慮。暑い日差しのなか、アンダーウェアや勝負服と一緒にベストを着る騎手のことを何より考えています。

特徴は高い耐久性だけではありません。ジョッキーベストをよく見ると、細かなパーツがパズルのように敷き詰められていますが、もちろんこれにも理由があります。

緩衝材のパーツが大きいほど衝撃は吸収しやすいものの、騎手たちの動きやすさを損なってしまいます。そのため、小さなパーツを隙間なく詰め込んでいるのです。

特に背中を丸めたときは背中に沿うように、ベストの背面の素材は縦長で、正面は小さな素材で構成するという工夫が施されています。

製品が完成した後も、ボディに着せて高いところや砂地に落とすなどを繰り返し、何度も安全性を確認しました。それほどこだわって作られたベストだからこそ、藤田騎手をはじめとした多くの騎手に信頼されて使われているのです。

「まるで馬に乗っている人が作っているかのよう」藤田騎手がデサントを選ぶ理由

デサントのグローブを着用する藤田菜七子騎手

ジョッキーベストの開発を機に、JRAとのやり取りをするようになったデサントは、調教師や厩務員(馬の世話をする方)、整馬係(レースのスタートゲートに馬を入れる作業を補助する方)の意見をきっかけに、ほかの競馬アイテムの開発に手を広げました。

今ではジョッキーパンツやアンダーシャツ、グローブやサポーターといった幅広いアイテムの開発に至ります。

特にジョッキーパンツは通常のものに加え、雨用やストレッチ素材のもの、軽量に特化した製品などを展開しています。スポーツメーカーであるデサントは、スキーのダウンヒルスーツのパターンからヒントを得て、前かがみになったときの体勢に合わせて屈曲するような作りのジョッキーパンツも発明しました。

また、パンツを固定するために使用するサポーターは、内側に滑り止めを施しているといった細かな配慮もあるなど、デサントのアイテムはいずれも、ジョッキーの声を反映しながら作られているため、多くのジョッキーたちに愛されているのです。

普段からデサントのアイテムを愛用されているという藤田騎手は、使用している印象についてこう語ってくれました。

 

藤田:デサントはジョッキーベストから競馬用の手袋、練習用のウェアなど幅広く作ってくれるので、ほとんどのアイテムを利用させてもらっていますね。

デサントのアイテムは、馬に乗っている人が作っているのかと思うほど、ジョッキーのことをよく考えて作られているので、とても使いやすいです。日々の練習はもちろん、レースのパートナーとしても頼りにしています。

 

特に手袋は、デサントならではの使いやすさがあるようで、選び方にもこだわりがあるようです。

 

藤田:デサントの手袋はとても使いやすいです。馬を引く手綱はゴム製なので、雨の日はとても滑るのですが、グリップが効いて滑りません。

また、丈夫で長く使えますし、不思議と新品でも手になじんでくれるのもうれしいポイントですね。普通なら手になじむまで時間がかかるのですが、デサントの手袋は使い始めた瞬間から手になじんでくれるんです。

色の選び方にこだわりがあって、デサントは手袋を黒と白の2色で展開しているのですが、必ず白を使うようにしています。競馬学校に通っているときに、白のほうが目立つから馬が追いやすいと聞いてから、ずっとそうしていますね。

今では手袋を20枚はストックしていますし、練習用にもレース用にもデサントの手袋を利用しています。

 

12月下旬にデサントとのコラボアイテムも発売する藤田騎手。
多くのファンたちに向けてメッセージをいただきました。

デサントのウェアを持つ藤田菜七子騎手

藤田:今までデサントさんのジョッキーアイテムを使用してきましたが、今回は初めてコラボアイテムを作っていただきました。

馬に乗らない方にも使っていただけるものになっています。オリジナルロゴはとても気に入っています。かわいらしいうえに、かっこよさもあるので、ぜひ多くの方に使っていただきたいです。

とても身体にフィットして着心地も良いので、日々のフィットネスやジョギングなどで使ってもらえたらうれしいですね。私もこれからトレーニングで利用させてもらいます。

関連記事
「競馬界のアイドル」が内に秘める、勝利への飽くなき執念

「男性社会」の文化が色濃い競馬の世界。歴史的に見ても女性騎手は数えられる程度です。そんななか、16年ぶりに誕生したJRA生え抜きの女性騎手として注目を集め、2018年にJRA女性最多勝利記録を樹立したのが藤田菜七子騎手。翌2019年には女[…]

女性騎手・藤田菜七子さん
WRITER
この記事を書いた人
ABOUT ULLR MAG.
ULLR MAG.(ウルマグ)とは?

ULLR MAG.(ウルマグ)は、「カラダから心をデザインする、ライフスタイルマガジン」です。
身体を動かすと気分が良い、夢中になれる趣味やスポーツがある、おしゃれをすると心が弾む。
暮らしの中で大切にしたい瞬間は誰にでもあります。

私たちはそんな日々のちょっとした喜びを、
一人でも多くの人へ届けたいと考えています。