「アップサイクル」の服でおしゃれに環境に優しく!製造現場に密着取材

「アップサイクル」の服でおしゃれに環境に優しく!製造現場に密着取材

  • 2022/04/21 (木)
  • 2023/12/04 (月)

SDGsやサステナブルなど、環境への意識が高まるなか、「アップサイクル」で作られた衣服への注目度が増しています。

アップサイクルで作られた衣服は、環境に配慮した商品であるだけでなく、個性的なデザインが生まれやすいのも特徴。「環境」と「おしゃれ」を両立するのに良いかもしれません。

この記事では、アップサイクルとはそもそも何かを紹介すると同時に、アップサイクルのアイデアや具体的な例としてスポーツブランドのデサントの取り組みや商品についても触れていきたいと思います。

アップサイクルとはどんな製法?

リサイクルとの比較から考えてみよう

アップサイクルとは、どんな製法なのでしょうか。それを考えるうえで「リサイクル」と比較すると分かりやすいかもしれません。

リサイクルは、不用品を回収した後、分解・融解などによって一度“資源”に戻してから、改めて商品を作るもの。

一方、アップサイクルは分解・融解などをせず、不用品の素材や形状を活かして、新しい商品に作り替えることを指します。

実際の例で比べると…

■リサイクルの場合

  • ペットボトル→ペレット(粒状にしたもの)→新たなペットボトル
  • ペットボトル→ペレット(粒状にしたもの)→糸・生地→衣料
  • 紙パック→溶解→古紙パルプ・再生紙→トイレットペーパーなど
  • POINT:不用品を資源に戻す過程がある。

    ■アップサイクルの場合

  • デニム古着→バッグ
  • 木材の余った端材→テーブルなど
  • POINT:不用品をそのまま使い新しい商品へと生まれ変わらせる。

    アップサイクルならではの良さとは

    元の素材や形状を活かすことで、ゼロから作った商品にはないユニークさや独特なデザインが生まれやすいと言えます。また、古いものの良さを活かしつつ、新しい価値を加えられるのも魅力です。

    同じく環境配慮の視点で語られる「リユース」「リデュース」とは

    なお、アップサイクルやリサイクルのほかに「リユース」「リデュース」という考え方もあります。

  • リユースとは
  • 一度使ったものを捨てずに、何度も繰り返して使うこと。自分が繰り返し使うだけでなく、ほかの人に譲ることもリユースと言えます。繰り返し使うことでゴミを減らし、環境への負荷を抑えるものです。

  • リデュースとは
  • 無駄なゴミをできるだけ減らすという考え方です。私たち生活者の行動で例えると、買い物ではマイバッグを持参する、なるべく割り箸は使わない、必要のないものは買わない、使用頻度の少ないものはほかの人とシェアする、などが挙げられます。

    アップサイクルのアイデアから生まれた衣服とは

    では、アップサイクルで作られる衣服とはどんなものでしょうか。

    スポーツブランドであるデサントでもアップサイクルの商品を製造しており、今回はその商品を例に、アップサイクルの衣服がどんなものかをお伝えします。

    背景にあったサステナブルな取り組み「RE: DESCENTE」

    デサントがアップサイクルの商品を作ったきっかけは、環境保全に関するサステナビリティ活動/ブランドとして実施している「RE: DESCENTE」です。

    自然由来の素材を利用した製品づくりと、使用後製品の回収によるリサイクル活動といった取り組みを通して、人々がスポーツを続けることができる世の中づくりに貢献することを目指しています。

    その活動/ブランドの一つである「RE: DESCENTE BUILD」では、モノづくりで生まれる廃棄資源をできるだけ少なくするとともに、資源の再利用を行い、新たな価値として再構築する取り組みを続けています。

    RE: DESCENTE BUILDのロゴの画像

    例えば、アパレル業界の課題である廃棄問題に取り組むため、1枚の生地をなるべく効率良く使い、廃棄する生地量を減らす新たなパターン「ZERO WASTE PATTERN」もこの取り組みから生まれました。

    2枚の商品を組み合わせることで生まれたアップサイクルの衣服

    同じく「RE: DESCENTE BUILD」から誕生したのが、アップサイクルの商品です。

    どんなものかというと、お客様に届けることができず眠っていた商品を2枚組み合わせ、新しいデザインのアイテムとして再商品化。廃棄を減らすだけでなく、既製品の組み合わせにより、ユニークさや面白さという新たな価値が生まれることを狙っています。

    アップサイクル商品製造の現場に密着!通常とはまったく違う服づくり

    現在、デサントでアップサイクルの商品を製造しているのが、宮崎県西都市にある「デサントアパレル西都工場」です。

    デサントアパレル西都工場の画像

    通常の衣服は、1枚の生地をパターンに合わせて裁断・縫製して作りますが、この衣服は、既に商品となっていたアイテム2枚を裁断。そうして、それぞれを組み合わせて縫製し、新しい衣服へと生まれ変わらせます。

    デサントアパレル西都工場の画像

    デサントアパレル西都工場の画像

    もともと別々の商品だった2枚のアイテムを裁断。

    裁断した生地の画像

    裁断された2つの商品の組み合わせを変えることで新たな商品へと生まれ変わる。

    デサントアパレル西都工場の画像

    この商品を生み出したデザイナーとパタンナーにインタビュー

    それぞれ個性的なデザインを持つアップサイクルのアイテムたち。こういったデザインや、そもそものアップサイクルのアイデアはどう生まれたのでしょうか。

    そこで話を聞いたのが、この商品を開発したデサントの曽我部恵美子さん(デザイナー)と、鈴木智香子さん(パタンナー)。2人は、先述した「ZERO WASTE PATTERN」の開発者でもあります。

    まず聞いてみたのは、アップサイクルのアイテムを作ろうと考えたきっかけ。曽我部さんはこんな風に語ります。

    デサントのデザイナー曽我部恵美子さんの画像

    「コロナ禍でなかなか衣服を買っていただけない時期があったのですが、そのときに思ったのは、余った商品を処分せず、もう一度買っていただくチャンスを作れないかなと。既存の商品に別のデザインや今のトレンドを入れ込むことで、新しい魅力をお客様に再提案できないか考えたのが始まりでした。」

    RE: DESCENTE BUILDのアップサイクルTシャツの画像

    そうして生まれたのが、2つの既製品を組み合わせるアップサイクル。とはいえ、実際に作り始めると、2つの既製品を組み合わせるからこその“誤差”が出てきました。

    例えば、ウェアの裾にできた段差はその象徴。鈴木さんはそのときの2人のやりとりをこう振り返ります。

    デサントのパタンナー鈴木智香子さんの画像

    「試作する前、曽我部さんには『このまま作ったら裾に段差ができるよ』と話したのですが、いったんそれで作ることに。そうして完成品を見たら、2人で『意外に良いじゃん』と、意見が一致したんです(笑)。」

    曽我部さんは、そのデザインを偶然のたまものだったと言います。

    「良い意味で違和感があるデザインなんですよね。気になる違和感というか、心引かれる違和感というか。その違和感こそが、アップサイクルならではの面白さだと思います。」

    アップサイクルTシャツのポケット部分の画像

    ポケットが半分で切れているのも同様。普通の服づくりではなかなか生まれない絶妙な違和感が、アップサイクルの魅力だと2人は考えます。

    偶然ではなく、曽我部さんが狙って生み出した違和感もあります。例えば商品のなかには、裏返しの生地で縫製されているものも。今回のラインナップのなかで、この裏返しが一番お気に入りだと曽我部さんは笑顔を見せます。

    RE: DESCENTE BUILDのアップサイクルTシャツの画像

    そして取材の最後、アップサイクルの商品とお客様が出会う形として、鈴木さんはこんな期待を口にしました。

    「デザインに引かれてお客様が手に取ったら、その商品がたまたまアップサイクルでできていた。そんなケースが増えると良いですね。そして、手に取ったお客様が、商品をきっかけに環境について考えるような。良い衣服やデザインが入口になって、環境について考える機会が生まれたらうれしいですね。」

    アップサイクルならではのユニークなデザイン。自分に合った1着を探してみよう

    「RE: DESCENTE BUILD」のアップサイクル商品は、2022年春夏シーズンの新作も登場。

    主に「DESCENTE BLANC 代官山」「DESCENTE BLANC 福岡」の店舗にて展開しています。

    さまざまな組み合わせのウェアが出ており、裾やポケット、生地の裏返しなど、“アップサイクルならでは”のデザインは各商品に施されています。

    環境のためであることはもちろん、ユニークなデザインや独自性の詰まったアイテムが多いのもアップサイクルの魅力。生まれ変わった衣服たちが、毎日のおしゃれを一層楽しくしてくれるかもしれません。

    RE: DESCENTE BUILDのアップサイクルTシャツの画像

    文/有井太郎

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