ときに、自分が持っている力以上のパフォーマンスを発揮できる瞬間があります。
2013年に日本代表入りを果たして以来、数多くの国際大会で活躍されてきた清水咲子選手(ミキハウス)も「特に試合では、チーム力は自分の大きなエネルギーになる」と話します。
チームの結束力を高める方法やその効果、そして清水選手が考えるチーム力について、今回はじっくりとお話いただきました。
――2020年、新型コロナウイルス感染拡大もあり、理想とするようなトレーニングができないこともあったかと思います。改めて、この1年を振り返ってみていただけますか?
今振り返ると、もう一度世界と戦うための土台を作るための時間ができたと思えます。ただ、2020年も大変ではあったんですけど、実は2019年のほうが私にとっては、水泳をやってきたなかで一番辛いシーズンでした。
何をやってもうまくいかないし、試行錯誤しても前に進んでいない感じがしていましたから。水泳を辞めようとすら思った時期もありました。
苦しむ私を助けてくれたのは、今まで一緒に世界と戦ってきた仲間でした。入江陵介さん(イトマン東進)もその一人で、落ち込む私に優しい言葉をかけてくれました。
仲間が私のことを気にかけてくれることで「自分は1人じゃない」と勇気をもらえました。
声をかけてくださる方もたくさんいましたし、仲間からたくさん励ましのメールをいただきました。
そういうことが積み重なっていくにつれて、水泳を辞めてはいけない、というところから始まり、自分がもう一度世界と戦う準備をするために一つひとつできることを積み重ねていこう、と前向きに取り組めるようになっていきました。
――清水選手がチームとして戦うなかで大切にされていることはありますか?
個人的に大事にしているのは、誰に対しても同じ態度で接することですね。年齢が上だからとか下だから、ではなく、先輩にも後輩にも、同い年の友達にも同じように接することを心掛けています。
きっかけは、私が日本体育大学の3年生のときのことでした。総合優勝に向けて、4年生の先輩が「あなたたちの活躍が鍵だから」と、競技に集中する環境を率先して作ってくださったんです。それもあって、日本学生選手権ではすごく良い結果を出すことができました。
だから、私も4年生になったときには、自分が先輩からしてもらったように、下級生にも気を遣えるようになりたいと思ったんです。本当のチーム力というものは、上が下にも気を遣えるような環境でないと生まれない。それを教えてもらいました。
2020年 第96回 日本選手権水泳競技大会にて。
――素敵ですね。皆がそれぞれを信頼するから、チームとしての力を発揮できる。
世界と戦う、日本代表というチームであっても同じだと思います。それと、もう一つ大切なのは、思いや目標を共有することだと感じています。
――共有とは?
あの選手は今こういう目標があって、こういうタイムで泳ぎたいと思っているんだ、ということを知っておくことです。それを共有しているからアドバイスを送れたり、応援したり、一緒に悔しがったりできると思うんです。
やりたいこと、達成したいことを皆と共有することで、仲間のレースを見て、それがうれしいことか悔しいことかがはっきり分かるわけです。そうすると、その結果が自分のことのように喜んだり、悔しがったりできる。
そういう仲間の姿を見たら、もっと自分も頑張ろう、って思えますよね。それが、自分が持っている以上の力を発揮できるパワーになるんじゃないでしょうか。
リレーだったら、1泳の選手が何秒で泳ぎたいと思っているかをチームに公言したり、周りが知っておくと、良い意味での責任感も生まれます。
自分が口にした目標は何が何でも達成するんだ、という力になったり、私も負けていられないという思いになったり。他人任せではなく、自分に責任を持って戦いに行く。それがチーム力になると思うんです。
――清水選手にとって、チーム力とは何でしょうか?
自分が持っている力以上のことを出せるようになる一つのアイテムですね。チームがあることで、どうしても自分1人ではできなかったことができることもある。特に試合のときには、自分のエネルギーになるものだと思っています。
――チーム力を高める方法の一つとして、チームウェアがあると思います。清水選手は、チームウェアの思い出はありますか?
日本体育大学に入学して、チームウェアに袖を通したとき、すごく新鮮な気持ちになりました。これから日体大の一員として戦うんだ、って。
日本代表ウェアを着たときも、同じように気持ちがギュッと引き締まりました。代表チームに入ったときは、そこに日本人として世界と戦うんだという責任感も生まれました。
――自分が頑張る源になりますよね。
そうですね。思い入れも強くなりますし、一生心に残るものになるのではないでしょうか。
高校時代のウェアとか大学のウェアは今も大事にとってありますし、今着ているミキハウスのウェアも一生捨てられないと思うのでとても大事にしています。
以前着ていたウェアを見ると、当時のことが一気に思い出されますよね。あんなことがあった、こんなことがあった、って。青春時代にワープするというか。
だからこそ、チームウェアを作るということは、水泳を楽しむ、競技を楽しむ一つのアイテムになると思います。
バックパックにはファンからもらったというキーホルダーが付いている。
――水着やキャップ、ゴーグルもチームでそろうと楽しいですよね。水着やゴーグル、キャップなどのギアを選ぶとき、何を大切にされていますか?
まずはフィーリングですね。
水着は着た瞬間の肌触りとか柔らかさとか、ファーストインプレッションで感じた直感を信じるようにしています。そこで自分に合うと思ったらすぐに決めちゃいます。私、全然悩まないんです。
ゴーグルは普段の練習と視界が変わらないようにすることですね。視界が変わると泳ぎも変わってしまいます。着けたときの感触もそうですけど、見え方が変わらないことを大事に選んでいます。
――ありがとうございます。さて、いよいよ新しい2021年シーズンがスタートします。まずは今シーズンの目標を聞かせてください。
長く語らず。まずは日本代表入りを決めて、国際大会で過去最高の結果を残すことです。私の水泳人生も、これから先がさらに長く続くかというとそうではなく、集大成に向かっていると思います。
だからこそ、最後の瞬間、自分が水泳をやっていて良かったと思えるように、1日1日を大事にして、練習も充実したものにしていきたい。そして、最高の舞台を迎えたときに、最高の結果を残したいと思っています。
――最後に、清水選手の将来の夢を聞かせてください。
私の水泳人生を振り返ると、良い経験しかありませんでした。清水咲子という人間の8割くらいは、水泳をしていたから作り上げられたものです。私が水泳を通して得た人生においての知識や考え方を、今度は後進に伝えたいという思いもあります。
ほかには、自分がそうしてもらったように、選手たちのサポートをするような仕事をしたいなとも思っています。
私がこれからのジュニア選手たちに何を残せるか、何を伝えられるか。それを考えるためにも、まずは今年、水泳人生最大の目標を達成したいと思います!
――清水選手、ありがとうございました。これからも応援しています!
チームウェアをそろえるには?
アリーナでは、ご希望のアイテム・カラー・サイズを選んで、チーム名やチームのマークを入れたオリジナルチームウェアをオーダーいただけます。
実際にウェアを見てから決めたいという方のために、もちろんオンラインだけでなく、アリーナショップでも同様の取り組みをしております。お気軽に店頭へお問い合わせくださいませ。
清水 咲子
ミキハウス 所属
栃木県出身1992年4月20日生まれ。専門種目は個人メドレーながら、バタフライも平泳ぎもこなす。2014年に400m個人メドレーで日本選手権初優勝。リオ五輪では400m個人メドレーの予選で日本新記録を樹立(当時)して決勝に進み8位入賞を果たす。
環境の変化は、時として人を大きく成長させてくれるトリガーになります。大本里佳選手(ANAイトマン)も、大学進学を機に地元の京都から東京に練習環境を移したことで、選手として大きく飛躍されました。練習内容も大きく変わり、さまざまな練習道具も活[…]