健康やダイエットのためにランニングを始めてしばらくすると、「もう少し距離を延ばしてみたい」「ハーフマラソンに挑戦してみたい」という気持ちが芽生えてくるもの。
と同時に、自分でも走れるのかと不安にもなります。長い距離を楽に楽しく走るためには、どうすれば良いのでしょうか。
今までにフルマラソンを29回完走し、JRTA認定ランニングトレーナーの資格を持つ中村優さんに、コツを教えてもらいました。
<プロフィール>
中村優
1987年生まれ。2005年にミスマガジンでデビュー。2008年に仕事でフルマラソンを走ったことをきっかけにランニングが趣味になる。これまでにフルマラソンを29回、ウルトラマラソン(100km)を2回完走している。そのほか60kmのレースを2度、82kmのレースを1度完走。JRTA認定ランニングトレーナー。走るタレントとして、スポーツイベントへの出演や大会のゲストランナーを務める。ランニングイベントも定期的に開催している。
無理をせずに楽しむことを考える
健康維持やダイエットを目的にのんびりと走っていた人が、距離を延ばすことを考えた際に大切なのは、無理をしないこと、頑張りすぎないこと、ゆるく楽しむことが大切だと中村さんは言います。
「私自身、普段のファンランで走る距離は5~10kmほどですが、おしゃべりしながら走れるペースで走ることがほとんどです。例えば1km7分くらいのペースでも、フルマラソンで5時間を切れるくらいなのですが、実際に走ってみると案外速くありません。
すでに走ることが習慣になっている方なら、結構ゆっくりだなと感じるかもしれません。それでも速いなと感じたら、早歩き程度のペースでも十分です。頑張ってハァハァと息が上がるスピードで走ってしまうと、長い距離を走るのが大変です。
友達とおしゃべりしながらでも良いですし、景色を楽しみながらでもOKです。無理のないペースを見つけて楽しく走りましょう!」
リラックスすることが一番大切
長い距離、長い時間のランニングに挑戦しようとした際に気になるのが、ランニングのフォーム。どのようなことに心掛けて走ると、楽に走ることができるのでしょうか。
その秘訣を中村さんに聞くと「まずは、とにかくリラックスすることが大切です。」との答えが返ってきました。
「良いとされているフォーム、良いとされている姿勢っていうのはもちろんあるのですが、まずは力まずにリラックスすることが大切だと思います。例えば“胸を開きましょう”と言われると、それを意識しすぎて背中を反りすぎたり、体が後傾してしまったりすることがあります。
長い距離を走れるようになって、もっと速く走りたい、タイムを向上させたいというレベルになると改善したほうが良いポイントはたくさん出てくると思いますが、ちょっとずつ距離を延ばしてこうとする段階であれば、力まずにリラックスすることが最優先かなと思います。」
体に力みがあると、すぐに疲れてしまう、長い距離を走りきれないといったことにつながってしまいます。また、力むことで呼吸が浅くなったり、心拍数が必要以上に上がってしまったりすることも。
いつもより長い距離に挑戦するからこそ、よりリラックスすることが重要なのです。
「とにかくリラックスしましょう」と話す中村さん。
斜め上から糸で吊られているような感覚で走る
リラックスをすると、確かに疲れは少ないけれど、前に進む感覚が得られない感じがするという人もいるかもしれません。力まずに、リラックスしたまま楽に足を前に運ぶコツはあるのでしょうか。
「1つだけ意識するのなら、頭頂部を上から1本の糸で吊られているようなイメージで走ると良いかなと思います。真上というよりは、ちょっとだけ斜め前方という感じです。意識するのはそんなに難しくないですし、力むこともないかなと思います。
このときに、ちょっとだけ下腹を胸の方に引き上げるというか、お腹を軽く引き込むようにイメージすると重心が上がって、脚が軽くなったような感覚が得られるはずです!」
頭頂部が上から1本の糸で吊られているようなイメージや、下腹を胸に引き上げるイメージは、日常生活のなかで歩いているときにも意識しておくと良いそうです。
「走るときに突然イメージしようとしても、難しいという人もいるかもしれません。日頃から意識していれば、ランニングをするときにスムーズにイメージできるのではないかと思います。
姿勢についても同様です。猫背だと呼吸がしにくかったり、推進力が得にくかったりするので、ランニング中は背すじが伸びていたほうが良いのですが、走るときだけ修正しようとするとどうしても力みが生まれたり、腰を反りすぎたりしてしまいます。
もちろんランニングを始める前にストレッチなどをすることも大切ですが、日常生活のなかで良い姿勢を保つように心掛けることのほうが姿勢改善には有効だと思います。」
頭を斜め上から糸で吊られているようにイメージして走ると、重心が上がって脚が軽くなる。
腕振りや着地はどうしたら良い?
リラックスをして、頭頂部を斜め上から1本の糸で吊られているようなイメージで走る。10kmを気持ち良く走るために意識するのは、それだけで十分だと中村さんは言います。
「フルマラソンであっても、スピードを求めないのであれば、この意識だけで大丈夫だと思います。もちろん練習をする必要はありますが。」
意識する必要はなかったとしても、腕はどうやって振れば良いのか、着地はどんな風にすれば良いのかといったことが気になる人もいるでしょう。もしこれらを意識するのであれば、何に気を付けたら良いのでしょうか。
「腕振りについては、肘を背中側に引く、前方向に向かって放り投げるように振るなどとよく言われるのですが、私個人の感覚としては腕を振ろうとすると力んでしまうほうが多い気がします。なので、肩を支点にして振り子のようなイメージで脱力してリズム良く振るのがおすすめです。
拳を握るのか握らないのかを迷う方もいますが、そこも脱力できるかどうかを優先してもらえれば良いと思います。卵を持つように柔らかく握るともよく言われますが、これも意識しすぎると力んでしまうので(笑)。」
肩を支点に振り子をイメージして腕を振る。何よりも力まないことがポイント。
着地についても、頭頂部を斜め上から1本の糸で吊られているようなイメージで走っていれば、おのずと良い場所で着地できるそう。
「自然な前傾姿勢が取れていれば、着地位置が極端に悪くなることはないと思います。骨盤が後傾してしまうと、膝への負担が大きくなってしまうのですが、前傾して重心位置が高くなっていればそういったこともないはずです。
もう1つ気を付けるとしたら、地面を蹴ろうとしすぎないことですね。地面を蹴ろうとすると力みにつながりますし、ふくらはぎの筋肉がパンパンになってしまうことがあります。」
ランニングシューズは自分の足に合ったクッション性の高いものを選ぶ
長い距離を安全かつ快適に走るためには、シューズ選びも重要とのこと。
「まずは自分の足にしっかりとフィットしていることが大切です。大きすぎたり、小さすぎたり、足幅が合っていなかったりすると、靴擦れやマメなどのトラブルやケガの原因になります。
できればショップに足を運んで、スタッフの方に相談しながら試着をしてほしいですね。どんなに高機能なシューズでも、足に合っていなければ意味がありません。機能面で言えば、スピードを求めないうちは、クッション性重視で選んでもらえればと思います。」
トラブルやケガを予防するためにも、シューズは足にフィットしたものを選ぶことが大切。
もちろんシューズのデザインやカラーも大事だそうです。
「お気に入りのシューズは、走るモチベーションになってくれますからね!私は走る機会が多いので常に何足かキープしているのですが、どんな格好にも合わせられる白や黒のシューズと、コーディネートの主役になるビビッドなカラーの両方をそろえるようにしています。みなさんも、お気に入りのシューズを履いてランニングを楽しんでください!」
突然ですが、夏場に暑さを感じたとき、Tシャツの生地をつまんでパタパタとあおぐと涼しさを感じるはず。きっと、誰もがやったことのある行為ではないでしょうか。これは、Tシャツの中にたまった暑い空気を換気することで涼しさを感じていると言えます。[…]