以前ジムやプールに通って身体を動かしていたのにもかかわらず、コロナ禍の影響で日常的な運動習慣がなくなってしまったという人も多いのでは?
この記事では、コロナ禍も終わりに近付きつつあるなか、運動を再開したいという人に向けて、プロのスイムコーチがブランクを解消するための「水泳練習メニュー」を解説していきます。
プロスイムコーチ 前田康輔さん
3歳で水泳を始め、競泳界の名門中央大学では全国大会インカレで優勝。社会人スイマーとしても活躍後、25歳で現役引退。2017年より、日本初のプロスイムコーチとしてスポンサー契約を受けながら企業でのコーチングやトライアスロンチームの指導など、泳ぎの魅力を伝えるために幅広く活躍している。競泳マスターズでは現在、日本記録4個、世界記録1個を保持。アスリートの引退後のキャリアを支援するアスリートプランニング所属。
まずは陸上でのウォーミングアップが必要
久しぶりの水泳を行ううえで、陸上でのウォーミングアップは必須。まずは身体を温める意味でも基本的なストレッチを行いましょう。
「ケガを防ぐためにも、身体が温まる程度のストレッチ・準備運動は必須です。特に水泳は、普段使わない筋肉が多いので意識して動かしておく必要がありますね。
トレーニングチューブを使って、三角筋・広背筋を中心に軽い刺激を与えてあげるのもベストです。トレーニングチューブがない場合は、腕を上げる動作をゆっくりと複数回行うだけでも大丈夫です。」(前田さん)
さらに、「入水する前には呼吸と姿勢の2点を確かめる作業をするのが良い」と前田さんが教えてくれました。
「久しぶりのスイミングは、呼吸が浅くなりがち。ですから入水前に深呼吸を行い、呼吸の感覚を取り戻しましょう。腹式呼吸と胸式呼吸の2パターンがありますが、水泳で必要なのは胸式呼吸。肺を膨らませる感覚で2〜3度ほどの深呼吸を取り入れましょう。
また、泳ぎの基本姿勢で4泳法すべてに共通している“ストリームライン”(※)を意識しながら、鏡の前でシャドースイムするのもおすすめ。正しい姿勢を身体に思い出させることもウォーミングアップに取り入れると良いですよ!」(前田さん)
※ストリームライン…泳ぎの基本姿勢。人が浮きやすい姿勢にプラスして、泳ぐために水の抵抗をできるだけ減らして流線型をイメージした姿勢。
練習メニュー作りのポイントについて
実際に水泳を行う際の練習メニューも、ブランクがあることを意識して作成する必要があると前田さんは話します。
「コロナ禍は水泳も含めて、運動があまりできない環境下にいた方が多いはずですから現役の頃よりは確実に技術・体力が衰えているはずです。まずは現実的な目標設定を行い、短い時間でも良いので継続して泳ぐことが大切です。」(前田さん)
目標値は、個人のレベルやライフスタイルによって異なりますが、“ただ泳ぐ”だけではなく細かいポイントを意識することが必要です。
「まずは時間or距離を設定することで、トレーニング内容もおのずと設計できるようになります。ウォーミングアップから始まり、キック(脚のみで泳ぐ)、プル(腕のみで泳ぐ)など部位別の練習を取り入れながら身体を少しずつ慣らしていくことが大切です。
最初に設定した練習メニューに慣れてくれば、徐々にレベルアップしていくのがおすすめ。例えば、30分泳ぎ続けられるようになったのであれば、今度は同じ時間のなかで距離を伸ばす、または設定時間を長めに取るなどですね。
ただ無理をしないこと、または飽きないようにすることが大切。週3日ほど通えるくらいの目標を決めて、楽しみながら泳いでほしいです。」(前田さん)
知っておいてほしい水泳メニューの用語解説
水泳の練習メニューでは独特な表現や専門用語など、英語での表記が多くなります。
以下では、水泳メニューに用いられる代表的な用語を前田さんに解説していただきました。水泳再開のタイミングで、もう一度確認してみましょう。
■泳ぎ方や種類
■メニュー表の表記
■距離や時間
■泳ぐ種目
■強度
久しぶりの水泳練習。おすすめのメニューとは?
今回は水泳を再開する人に向けて、実践的な水泳練習メニューを前田さんに作成していただきました。
「こちらのメニューは基本的な4泳法が泳げるものの、水泳にブランクがある方用のメニューです。バタフライが泳げなかったり距離が少し長く感じたりする方は、こちらからアレンジして自分なりのメニューを作成してみてください。」(前田さん)
メニュー
■W-up
※けのび…プールの壁を蹴って、伏し浮きをキープする状態。
■Main
「合計800mでおおよそかかる時間は45分程度のメニューだと思いますが、自身のペースで泳いで問題ありません。慣れてきたらサイクルを設定したりして強度を上げても良いですが、まずは距離だけの目標設定を行いましょう。丁寧に泳ぎ切ることが重要だと覚えておいてくださいね。」(前田さん)
プールから上がる前のアフターケアの大切さ
トレーニングメニューを終えた後のアフターケアも、水泳ならではのポイントがあると前田さんは話します。
「陸上より、水中で行うクールダウンのほうが乳酸が取れやすいという研究結果から、アフターケアも入水中に行うのが効率的です。ストレッチをする際は、ゆっくり呼吸をしながら自身の身体で張っている部分を意識して伸ばしてあげることで後日の筋肉痛を和らげる効果があります。」(前田さん)
撮影/大田浩樹
文/マイヒーロー
編集/GetNavi web
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