ストレッチには大きく2種類があります。運動前に行うことでケガの予防やパフォーマンス向上が期待できる「動的ストレッチ」と、心身のリラックス効果などが期待できるため運動後に向いている「静的ストレッチ」です。
今回は、運動前に効果的な「動的ストレッチ」について、トレーナー・中川翔太さんが解説します。さらに、おすすめの動的ストレッチメニューも動画付きでご紹介します。
中川翔太(なかがわ しょうた)京都府福知山市出身
海上自衛隊に6年勤めたのち、トレーナーとして数多くのトップアスリートのフィジカル、ランニングトレーニングを指導。またトレーニング、栄養学、心理学の資格を保有し、パーソナルトレーナーとしては年間2,500セッションを越える一般の方のダイエット、食事管理、姿勢改善、生活習慣のサポートをはじめ、メディアでの発信など幅広く活躍中。
動的ストレッチと静的ストレッチ
動的ストレッチと静的ストレッチは効果が異なるため、その違いを把握したうえで目的に合わせて使い分けることが大切です。
動的ストレッチ
動的ストレッチは、体を大きく動かし筋肉の伸縮を繰り返すことによって、筋肉の柔軟性と関節の可動性を高めます。
ダイナミックストレッチとバリスティックストレッチに大別され、スポーツのパフォーマンス向上や体温の上昇のほか、交感神経を優位にする効果があります。
静的ストレッチ
静的ストレッチはスタティックストレッチとも言われ、筋肉を伸ばして一定時間保持することで、筋肉の緊張を和らげ、柔軟性を高めたり、副交感神経を優位にしたりする効果があります。
各ストレッチの使い分けとタイミング
運動を行う際は、軽いウォーミングアップ(ジョギングなど)の後、動的ストレッチを行うことで筋肉が温まり、運動のパフォーマンス向上が期待できます。
また、動的ストレッチでは関節も動かすため、ケガのリスクをより軽減します。
一方、静的ストレッチは、運動後のクールダウンに取り入れることで回復を早める効果が期待できます。運動後の筋肉は乳酸がたまり、収縮して固くなっているため、老廃物が流れにくい状態です。
静的ストレッチを行うことで、筋肉の緊張が和らいで元の位置に戻り、老廃物が流れやすくなります。
運動時以外に取り入れる場合は、午前中に動的ストレッチを行うと良いでしょう。動的ストレッチを行うことで交感神経が優位になり、目を覚ます効果があります。
また、寝る前に静的ストレッチを行うと副交感神経が優位になり、リラックスすることで睡眠の質を上げる効果が期待できます。
動的ストレッチとは
動的ストレッチはダイナミックストレッチとも呼ばれ、伸ばしたい筋肉【主動作筋】と反対の筋肉【拮抗筋(きっこうきん)】を交互に伸び縮みさせると同時に、関節も動かすストレッチです。
ダイナミックストレッチは、体全体を温めて血行を促進し、筋肉の柔軟性と関節の可動性を高めます。
動的ストレッチの一つに、バリスティックストレッチがあります。筋肉を最大限に伸ばしている状態から、リズミカルに反動をつけて行うストレッチです。
陸上競技における短距離種目や跳躍種目、ゴルフやサッカーなど、筋肉を急激に収縮させるような爆発力(パワー)や瞬発力を必要とするスポーツのパフォーマンスアップに用いられます。全体的に体を動かすような運動の場合は、ダイナミックストレッチのみを行いましょう。
バリスティックストレッチは、ダイナミックストレッチでしっかりと体を温めてから行います。
いきなりバリスティックストレッチを行ってしまうと、筋肉に負荷がかかりすぎてしまい、筋肉を痛めやすくなったり、肉離れなどを起こしてしまったりする可能性があるため、注意しましょう。
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動的ストレッチの効果
動的ストレッチの主な効果をまとめると、次のようになります。
運動パフォーマンス向上
体が温まっていない状態では筋肉の柔軟性は低く、本来の力を発揮できない状態です。運動前に動的ストレッチを行うことで、筋肉が持つ本来の力を引き出せるようになります。
基礎代謝の向上
筋肉が収縮することで温まり、体温が上がるため基礎代謝の向上につながります。
ケガの防止
スポーツでのケガのほとんどは、関節に関わるものと言われています。そのため、動的ストレッチで関節の可動性を高めておくことでケガの防止につながります。
肩こり予防や冷え性・むくみ改善
動的ストレッチは筋肉や関節を動かすため、肩こりなどの予防にも効果が期待できます。また、血行が良くなるため冷え性やむくみの改善効果も期待できます。
自宅や職場でできる簡単な動的ストレッチ
動的ストレッチメニューを5つご紹介します。息を止めないように、自然な呼吸をしながら行うことが大切です。
最後に動画も載せているので、ぜひ一緒にやってみましょう。
肩のストレッチ
運動時は肩の関節を使うことが多いため、入念にストレッチしましょう。肩関節は円を描くような動きをすることができるため、なるべくいろいろな方向に動かすと柔軟性が高まります。
- 両手を真っ直ぐ天井に向けて上げる
- 上げた両手を真っ直ぐ下ろす
- ①~②を10~15回繰り返す
- 右手を上に、左手を下に向けて両手を大きく広げる
- 広げた両手を胸の前でクロスさせる
- 左手を上に、右手を下に向けて両手を大きく広げる
- 広げた両手を胸の前でクロスさせる
- ④~⑧を10~15回繰り返す
お腹の側面のストレッチ
お腹の側面の筋肉は固くなりやすいため、運動前にしっかりと伸ばしましょう。
- 足を肩幅に開いて、親指1本分外側に向けて立つ
- 左手を上げ、頭上を通り右側に向けて伸ばす
- 右手を上げ、頭上を通り左側に向けて伸ばす
- ②~③を10~15回繰り返す
胸と背中のストレッチ
上半身を動かすときに使う筋肉を伸ばすストレッチです。
- 腕を90度に曲げ、胸の前で両手のひらを上に向けて拳を作り、両手をくっつける
- できる限り背中を丸めて肩甲骨を開く
- 両腕を外側に開き、胸を張って肩甲骨を寄せる
- ①~③を10~15回繰り返す
ハムストリングス・ふくらはぎのストレッチ
走る・ジャンプ・蹴るなどの運動に欠かせない筋肉のストレッチです。運動前にしっかり伸ばしましょう。
- 足を肩幅に開き、右手で右足首を、左手で左足首を持つ
- 膝をできる限り曲げる
- 膝をできる限り伸ばす
※足首を持ったまま膝が伸びきらない場合は、手を膝に置いて行う - ①~③を10~15回繰り返す
お尻(大臀筋)のストレッチ
大臀筋には大腿骨を支える筋肉や靭帯が集まっているため、柔軟性を上げることにより、下半身へのケガのリスクを軽減できます。
- 椅子に座り、右足を左膝の上に乗せる
- 左手で右足のつま先を握り、右手は右足の膝に置く
- 右手を下に押しながら、上半身を前に倒す
- 上半身を元に戻す
- ③~④を10~15回繰り返す
- 元に戻り反対側も同様に行う
動的ストレッチの注意点
ストレッチは、強くやりすぎてしまうと筋肉や関節を痛めやすくなってしまうので、痛くない程度にじっくりと気持ち良いぐらいに伸ばしましょう。
筋肉を100%伸ばすのではなく、70~80%ぐらいに伸ばすイメージで行うのがおすすめです。
ご紹介したストレッチを参考にぜひ運動前に取り入れて、パフォーマンス向上やケガ防止に役立ててください。
撮影/森カズシゲ
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