衣替えの前には“より丁寧な”洗濯を!洗濯と収納のポイント教えます

衣替えの前には“より丁寧な”洗濯を!洗濯と収納のポイント教えます

  • 2023/03/17 (金)
  • 2023/05/22 (月)

全国的に雪が降るなど厳しい寒さが続いたり、春を思わせる暖かい気候になったりと、変化が激しい2月も終わり、3月になるといよいよ春も本番を迎えます。

冬に着ていた厚手のコートやダウンジャケットなども出番がなくなり、そろそろ衣替えを考える時期ではないでしょうか?

今回は、“洗濯王子”の愛称で各種メディアにも出演している洗濯家・中村祐一さんに、衣替え&収納のポイントを教えていただきました。

<識者紹介>

中村祐一さんのプロフィール画像
洗濯家
中村祐一さん

長野県伊那市のクリーニング会社「芳洗舎」3代目。 2006年から「家庭洗濯アドバイス」という分野を切り開いてきた、第一人者。 洗濯から考える、より良い暮らし方の提案を行い、「衣・食・住」における「衣文化」の革新に洗濯の側面から取り組む。「洗濯王子」の愛称で、テレビ・雑誌など各種メディアにも多数出演。

なんで必要?衣替え前に洗濯が必須である理由

複数の服がハンガーで掛けられている画像

そもそも、衣替えの際にはどうして洗濯が必要なのでしょうか?これは、衣類を長期間しまっているときに発生するさまざまなトラブルを防ぐためだと、中村さんは話します。

「次のシーズンまで長期間しまっておくタイミングで汚れが付いたままの状態だと、衣類を傷めてしまうことにつながります。例えば、黄ばみ。体の皮脂や汗が付いたままの衣類は時間の経過とともに酸化して、ゆっくりと黄ばんでしまうのです。色物であれば変色してしまうこともありますよ。」(中村さん)

さらに、汚れが付いたままの状態だと虫食いによる衣類へのダメージにもつながります。

「冬が明けて春になる時期は、虫も活発に動き出す時期です。保管する場所が密閉されていなくて外から虫が入り込んだり、いつの間にか衣類に付いていた虫の卵が保管場所で孵化したりして衣類を食い散らかしてしまうんです。

虫が積極的に食すのがウールやカシミアといった動物性繊維。そして次に、綿や麻といった植物性繊維ですので特に注意が必要です。

ポリエステルなどの合成繊維は通常虫食いの対象にはならないのですが、人間の皮脂やタンパク質、それに食べこぼしの汚れなどが付着している場合は格好の餌食になってしまうので、やはり衣替え前の洗濯は必須と言えるでしょう。」(中村さん)

衣替え前の洗濯「しまい洗い」のポイントを解説

洗濯をする女性の画像

衣替え時の丁寧な洗濯が必須な理由が分かったところで、実際に中村さんに「しまい洗い」のポイントを解説してもらいました。

「しまい洗いも日常の洗濯も考え方は一緒ですが、長期間保管する分、すすぎをしっかり行うなど“余計なものを衣類に残さない”ことが大切です。まずは、素材・タグに付いている絵表示でどんな服なのかを確認した後に、『その服を次のシーズンどう着たいのか?』を明確にしましょう。

服の持つ素材感や機能を維持して大事に着たいものはクリーニングへ、逆にプライベート寄りで色合いや風合いなどを気にしない服とか、どちらかと言うとそこまでロングランを考えていないアイテムは家庭でという形で判断してみてください。」(中村さん)

●肌に直接触れるものは「温水洗浄」がおすすめ!デリケートなものはクリーニングへ

「体に直接触れる衣類は、自宅でも温水洗浄がマストです。皮脂や汗の影響が一番出やすいカテゴリーなので、洗い・すすぎともにしっかり行いましょう。

ただし、デリケートなものや洗いにくいものは、優しい洗い方しかできず汚れが残ってしまいがち。そういった衣類の場合は、プロであるクリーニング店に任せてしまうのがベストでしょう。

また、ビジネスでの着用など対外向けの服や長く大切に着たい衣類に関しても、クリーニング店に依頼するのがベター。体に近い衣類ほど自宅で、体から遠い衣類(コートなど)ほどクリーニング店に任せるようなイメージですね。

デリケートな服ほど、洗うときだけでなく着用の仕方も気を付けたり、汗をたくさんかくことが想定される服は、ケアのしやすい服かどうかを考えて購入することも大切です。」(中村さん)

●衣替え時のトラブル対策は洗剤・柔軟剤よりも基本的な考え方にある

黄ばみやカビ、ダニや虫食いを発生させないための洗剤商品なども多数販売されていますが、本質的な問題は洗濯や保管の基本的な考え方にあります。

「多くの方が勘違いしているのですが、トラブルに遭う場合は『汚れが残ってしまっている』もしくは『きちんとしまえていない』など基本的な前提がないことがほとんど。その状態で、いくら洗剤などの対策商品を使用しても効果は現れにくいでしょう。

洗剤を考え直す前に、その服にとって適した洗い方やしまい方が何なのかを考え、適切な洗濯と保管をすることで衣替え時のトラブルが発生しにくくなるのです。」(中村さん)

収納方法も大切!「衣替え収納」で失敗しないために

服を収納している画像

手間をかけて洗濯した衣類も、収納方法を間違えてしまえば意味がありません。長期間保管するうえで、意識したいポイントを中村さんにお聞きしました。

「先ほどお話ししたように、大前提としては衣類の汚れをしっかり落としておくことです。しかし、保管が原因となる衣類トラブルが多いのも事実。例えば、同じ『ニット』でも綿などの植物性素材はギュウギュウに詰め込むと、きついシワになりやすいです。

逆に化学繊維やウールのニットは折れにくいので、詰め込んでもそこまで影響はありません。収納環境に加え、素材によっての畳み方・詰め方も意識してみてください。」(中村さん)

●ダンボールはNG!湿気がこもらない&空気の出入りがない密閉環境を作る

「まずは洗濯後にしっかりと乾燥させた衣類を『密封できる衣類専用のケース』に入れるのがベストです。湿度は衣類にとっての大敵。カビなどが発生する恐れもありますので、衣替えの際はクローゼット全体の除湿も意識してみてください。

また、空気の出入りがない密封したケースであれば、外部からの湿気や害虫侵入も防げます。ダンボールは湿気ってしまうことや、保管用ではないプラスチックのケースの場合、酸化防止剤が空気中のガスと反応して服に黄ばみを作ることもありますので、購入の際は必ず『衣類の保管用』のものを選んでくださいね。」(中村さん)

●防虫剤の特性を活かすために衣類の上に置く

「防虫剤はガスを発生させて、全体を包み込むような形で虫から衣類を守ります。そのため、下部に置いてしまうと効果が半減してしまうのです。もし防虫剤を使用するのであれば、畳んだ衣類の一番上に置くようにしましょう。」(中村さん)

次のシーズンで「出し洗い」は必要?

畳んで積み重なっている服を持つ画像

衣替えをした衣類を次のシーズンに着用する前に行う「出し洗い」。そもそも、衣替え前に洗濯をしているのに、再度洗濯をする必要があるのでしょうか?

「理屈からすれば、しっかりと洗って保管方法も最適な環境であれば出し洗いを行う必要性はありません。出し洗いが必要ということは、洗濯や保管のときに何らかの不具合が発生しているということです。その場合は、洗い方や保管方法を見直す必要があります。

例えば、シミ・黄ばみ・汚れがある場合は衣替え前の洗濯が不十分な可能性があり、一方、カビ・ほこりが気になったり、くしゃみ・鼻水が出たりするのであれば保管環境を見直すことも必要かもしれません。」(中村さん)

衣類害虫の行動パターンも関係!「衣替え」はいつまでに済ませたら良い?

穴が開いた服を持っている画像

最後に、衣替えの時期についても中村さんに伺いました。冬〜春にかけての衣替えは、湿度や温度の影響に加え、害虫が活発に動き始めるシーズンと重なることから、より意識する必要があるとのこと。

「春になると、衣類害虫を含め虫の動きが活発化してきます。日常生活を送っているだけでも知らないうちに虫や虫の卵が衣類に付着していることもあるので、そのままにしておくと虫食いなどが発生してしまう可能性があります。長期間しまう前には、虫食い防止の確認の意味でも洗濯してからしまうのがマストです。

しまう順番としては、コートやダウンジャケットなどのアウターから、徐々に肌に近い衣類をしまっていきます。最後には、毛布や羽毛布団などの寝具を収納するのが定番の流れになります。時期としては、3月に入った頃から始めて、梅雨の季節がスタートする6月くらいまでに終わらせるのがベスト。

湿度や温度が上がると、落としきれていない汚れが衣類に悪影響を与えることが考えられますから、それまでに『しまい洗い』の準備を済ませましょう。」(中村さん)

お気に入りの衣類を長く着るためにも、今回教えていただいたポイントを意識して適切な衣替えを行ってみてくださいね。

文/マイヒーロー
編集/GetNavi web

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