サンシャイン水族館と考えた、人とペンギンの幸せな関係性

サンシャイン水族館と考えた、人とペンギンの幸せな関係性

  • 2021/04/07 (水)
  • 2023/06/09 (金)

4月25日の「世界ペンギンデー」は、ペンギンへの理解と保護の大切さを学ぶ大切な1日です。

この日に向けて取り組みを行っている、サンシャイン水族館飼育スタッフの與倉氏とペンギンがトレードマークのゴルフウェアブランドマンシングウェアの小林氏に、それぞれの活動や、私たちができる行動について話を伺いました。

Photo:Kanta Matsubayashi
Interview&Text:Minori Okajima[MANUSKRIPT]

泳ぐペンギン

――年に一度の「世界ペンギンデー」に、なぜ4月25日が選ばれたのですか?

與倉:餌を求めて大移動するアデリーペンギンが、毎年この頃にアメリカの南極観測基地「マクマード基地」を通過することから、研究者たちが“ペンギンの日”として祝ったことが始まりと言われています。

世界中の水族館や団体にとって、多くの人にペンギンへの理解を深めてもらったり、環境保護について学んでもらえる機会として、とても大事な1日。

サンシャイン水族館でも、SNSや公式WEBサイトなどを通じて情報を発信しています。今年は動画配信にもチャレンジしていきたいですね。

サンシャイン水族館與倉氏

――マンシングウェアは「世界ペンギンデー」にどのように関わっていますか?

小林:2019年から、ペンギンの保護に貢献できる取り組みを行っています。きっかけはブランドのトレードマーク、リトルピートです。

マンシングウェア ロゴ

右側のペンギンがリトルピート。

ペンギンは6属18種類生息していると言われていますよね。それを引用して、6個の星と18本の線を使い星条旗のようなデザインを作ったことがあったのですが、そのうちの10種もが絶滅危惧種であると知り、何か行動しなくてはと思いました。

そこで誕生したのが「SAVE THE PENGUIN」シリーズ。今年はポロシャツとキャップ、Tシャツ、ミニトートの4種類で、購入すると売り上げの一部がWWF(世界自然保護基金)によって地球環境の保全に活用されます。

SAVE THE PENGUIN シリーズ

與倉:素晴らしい取り組みですね。ちなみに刺繍のペンギンは、クチバシにオレンジが入っているので、コウテイペンギンかキングペンギンですかね?

小林:正解!もともとリトルピートのモデルは、コウテイペンギンと言われているんです。

コウテイペンギン。クチバシにオレンジが入っているのが特徴。

コウテイペンギン。クチバシにオレンジが入っているのが特徴。
※サンシャイン水族館では展示しておりません。

與倉:そうでしたか。確かにペンギンにタキシード、シルクハット(一種の擬人的表現)を着せているイラストは1900年代初頭から描かれており、「ペンギン=紳士」というイメージは世界的にも共通なものだったようです。

小林氏

小林:この「SAVE THE PENGUIN」シリーズは、サステナブルな取り組みにも参加しています。

去年はサクラやクチナシなどを使った植物染め、今年はジャムやジュースを作る際に残るブルーベリーやコーヒーなどの出し殻を染料として再利用するのこり染めを採用しました。ペンギンの刺繍に合う、淡く優しい発色です。

小林氏(画像左)はブルーベリーでのこり染めを、與倉氏(画像右)はクチナシで植物染めをしたポロシャツを着用している。

與倉:僕が着ているこのポロシャツは、昨年の「世界ペンギンデー」にマンシングウェアと一緒に作ったものです。左胸にはサンシャイン水族館のロゴを、右胸には「SAVE THE PENGUIN」の刺繍が入っています。4色のなかから飼育スタッフで多数決を取ったのですが、一番人気だったこの水色が選ばれました。

小林:この色は、クチナシを使って植物染めしていますね。

與倉:サンシャイン水族館や、ケープペンギンがすんでいる海のイメージにぴったりだなと思い、私もこの色を選びました。ロゴや刺繍とも合っていてかわいいんですよね!

水族館の良いところは、さまざまなお客様に足を運んでいただき、生き物について楽しんで知ってもらえること。4月25日にこのポロシャツを着ることで情報発信にもなりますし、そこからマンシングウェアの取り組みを知るきっかけにもなる。

そして、環境に良い「SAVE THE PENGUIN」シリーズを買うことでペンギンの保護にもつながっていく。とても良い連鎖が生まれるので、喜んで協力させていただいています。

アデリーペンギン

アデリーペンギン。クリッとした目が特徴。
※サンシャイン水族館では展示しておりません。

――次に、ペンギンの行動展示について、サンシャイン水族館が実施していることを教えてください。

與倉:サンシャイン水族館では、主に南アフリカ共和国の沿岸に生息しているケープペンギンを約50羽飼育しています。一般的にペンギンと聞くと氷の上で過ごす光景を思い浮かべますが、野生のケープペンギンは海や岩場、写真のような植物に囲まれた自然で暮らしているんです。

野生のケープペンギン

野生のケープペンギン。

そのため、スタッフが実際に現地に調査へ行き、なるべく飼育環境を近付けるための工夫を凝らしています。岩や植物を四方に配置した「草原のペンギン」水槽は、その象徴的な展示です。

サンシャイン水族館「草原のペンギン」水槽のケープペンギン

サンシャイン水族館「草原のペンギン」水槽のケープペンギン。
※近県での高病原性鳥インフルエンザの発生を受け、生物保護の観点から屋外エリア マリンガーデン「草原のペンギン」水槽での展示を休止している場合がございます。

「天空のペンギン」水槽の前で話す2人。

「天空のペンギン」水槽の前で話す2人。

また、ペンギンが泳ぐ姿を間近で見られるオーバーハング構造の「天空のペンギン」水槽にも隠れたポイントがあります。両脇に小さな穴があり、ここから餌が出てくるのですが、ペンギンたちはいつ、どこから出るか分かりません。

野生と違い、飼育下では単調な生活になってしまいがちなので、ペンギンたちにルーティーンではない刺激のある生活をしてもらえるよう工夫しつつ、ダイナミックに泳ぐ姿を見ていただけるようになっています。ぜひチェックしてみてください。

小林:それは知らなかった!お客さんにとっても、ペンギンにとっても楽しい取り組みですね。

サンシャイン水族館「天空のペンギン」水槽で泳ぐケープペンギン

サンシャイン水族館「天空のペンギン」水槽で泳ぐケープペンギン。

――そんな自然で暮らす野生のペンギンの生態を守るために、今私たちができる行動は?

與倉:ケープペンギンは南極に生息していないので、地球温暖化の影響を受けにくいのでは?と思われることもありますが、とても深く関係しています。

海水温度が上昇することで、餌となる魚の回遊ルートが変わってしまうのです。魚が別の場所に移動してしまったら、ペンギンの繁殖地から離れる可能性が出てくる。

そうなると、魚の大群に会えるためにはもっと遠くまで泳いでいかなくてはならないので、餌にありつける数が減っていくんです。量が獲れないと、ヒナも育たなくなってしまいますしね。

小林氏と與倉氏

與倉:南極大陸に生息するペンギンの生態も危機にさらされています。海氷が溶けてすむ場所がなくなる問題もありますが、同じように餌の確保が難しくなっていることも原因の一つ。

温暖化の影響で海氷が溶けたり小さくなったりすることで、氷の下で生きる南極オキアミの数が減る。そうするとペンギンが食べる餌がいなくなってしまいます。

結局、生き物同士ってつながっているので、ペンギンを守るためにはほかの生き物を守る必要がありますし、環境問題について考えていく必要もあるんです。

エコバッグを使う、ポイ捨てをしない、ペットボトルはラベルやキャップを分別して捨てる。小さな行動の積み重ねが、地球上の動物や植物を守ることにもつながっていると僕は信じています。

※生息しているポイント、ペンギンの種によっては氷が溶けて海にアクセスしやすくなり、餌が食べやすくなった結果数を増やしているもの(アデリーなど)もいるようなので、一概には言えない複雑な問題です。

泳ぐペンギン

小林:僕も含め、何か行動したいという気持ちは皆さん心のなかにあるはず。身近にできることから始めるって大切ですよね。「SAVE THE PENGUIN」シリーズも、きっかけの一つになればうれしい。そこからペンギンの生態や未来について興味を持って、ぜひ水族館へ足を運んで欲しいです。

與倉:最初は、ペンギンってかわいいよね!という理由でもちろん良いんです。そこから、かわいいのその先、水族館の展示で感じたことを家族や友達に話すことで、それがいつか大きな輪になっていく。一人ひとりができることを始めていくことが大切だと思います。

<プロフィール>

與倉陵太さん プロフィール写真

與倉陵太(よくらりょうた)
サンシャイン水族館 飼育スタッフ

ケープペンギンをはじめ、コツメカワウソやカメなどを担当。物心がついた頃から水族館の飼育員に憧れを抱き、2年前から現職に就く。丸い目が愛らしいアデリーペンギンが一番好き。

小林準さん プロフィール写真

小林準(こばやしじゅん)

デサントジャパン株式会社
ブランドマーケティング部門ゴルフマーケティング部マンシングウェアMD課(※2021年3月時点)

好きなペンギンの種類「マゼランペンギン」(ペンギンのなかでも特に絆が強くとても愛情深い種ということを以前どこかの水族館で聞いてからお気に入り。)マンシングウェアを担当し、ペンギンマークの服が増えた。自身の子どもも自然とペンギン、そして水族館が好きになっていった。

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