身体を動かすことを習慣にしている人も多いでしょう。運動は健康維持やストレス解消、リラクゼーション効果もあると言われています。
でも女性なら生理中に「今日って運動しても大丈夫かな?」と思う人もいるかもしれません。
そこで今回は、産婦人科医でスポーツドクターの高尾美穂先生に生理時の運動について話を聞きました。生理時に気をつけることや、おすすめのトレーニングについても解説します。
運動が生理痛緩和につながることも。体調と相談を
(Photo by Avrielle Suleiman on Unsplash)
もし体調の不安がなければ「運動をしてもOK」と高尾先生はいいます。「生理の前半は体調が優れなくても、後半は体調も良く運動をしたいと思う人もいると思います。本人が運動をしたいと思うような状態であれば、全く問題ありません」。
生理時の悩みとして多く聞かれる「生理痛」の原因について高尾先生は次のように説明します。
「生理中、子宮内膜から作られるプロスタグランジンという物質が、子宮内から経血を押し出すために子宮を収縮させる働きをします。これにより腹痛や腰痛、倦怠感といった症状を引き起こします」
産婦人科医でスポーツドクターの高尾美穂先生(Photo by Misa Nishimoto/Laundry Box)
こうした生理痛の症状がある人は、運動することで症状の緩和につながるケースもあるといいます。
「プロスタグランジンは、体内で血管の周りにある平滑筋を収縮するため、血流が悪くなる場合があります。こうした理由で生理痛が重い場合は、運動によって血流をうながし、冷えや倦怠感などの症状の緩和につながることもあります」
また高尾先生によると、生理痛が重くなる原因のひとつにストレス過多もあるそう。
「ストレスが原因で生理痛が重くなっている人にとっては、運動することがストレス解消になり、生理痛の緩和につながることもあります」
生理の症状や原因は人それぞれ。生理痛が重い人の中には、器質性月経困難症という子宮内膜症や子宮筋腫などの疾患による場合もあるため、婦人科を受診することも大切です。生理時の運動は問題ありませんが、運動の強度は体調と相談しながら判断しましょう。
生理中の運動で気をつけることは?
(Photo by AC)
生理中は体調に変化が出やすいため、激しい運動や、長時間の運動は避けた方がいいでしょう。めまいや立ちくらみなどによる転倒や怪我にも注意が必要です。そのため高尾先生は「基本的には無理をしないことが大事です。経血の多いときや生理痛があるときにわざわざ頑張らなくてもいい」といいます。
「生理は失血により酸素運搬能が下がる機会とも言えます。普段からヘモグロビンの値が少ない人は注意した方がいいでしょう」
生理中の運動は、一部の人をのぞけば「パフォーマンスの高い時期ではない」と高尾先生。「まずは自身の生理の状況に寄り添い、闇雲に頑張るのをやめること。運動をする人の中にはつい頑張りすぎてしまう人もいると思いますので、ご自身と向き合って考えてみてくださいね」
また生理中、運動をして汗をかくときはムレによる肌トラブルにも注意。なるべく生理用品を清潔に保つことも大切です。
「アルピニストやトレイルランナーなど山でスポーツする人は、トイレがなくて大変と聞きます。また競技の種類によってはこまめにトイレにいけない場合もあります。タンポンや月経カップなど挿入タイプの生理用品が苦手という人もいるでしょう。いまは、吸水ショーツなど、生理用品の選択肢が広がっているので、いろいろ試してみて合うものを活用するといいと思います」
生理中はどんなトレーニングをすればいい?
生理中は、軽いジョギングやウォーキング、ヨガ、筋トレ、ストレッチなどがおすすめです。その時の気分や体調に合わせて取り入れてみましょう。
高尾先生はアスリート向けに、生理中にからだを動かして前向きになってもらえたらと「ブルーデーストレッチ」を紹介しているそう。ブルーデーストレッチは主にヨガの動きを取り入れ股関節周りを動かすストレッチだそう。
高尾先生のおすすめはヨガの「鳩のポーズ」。
ヨガの「鳩のポーズ」。(Photo by AC)
また日常生活に取り入れやすい運動として「階段一段飛ばし」と「スクワット」を紹介してくれた。
「階段を一段飛ばしで上がると、股関節周りも動かせますし筋肉にもほどよく負荷がかかりますので運動した感を味わえます。私は普段からひとりでエレベーターを利用するときは、乗っている間に高速スクワットをしています。エレベーターの中の防犯カメラに写ってしまうことを考えるとちょっと恥ずかしいのですが(笑)、生理中にもできる簡単な筋トレとしておすすめです」(高尾先生)
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生理中の運動は、意外とメリットもあるとわかりました。生理中はいつも以上に自分のからだの声に耳を傾け、体調の変化に気をつけながら運動するといいでしょう。
(取材・文/川崎絵美)
産婦人科医でスポーツドクターの高尾美穂先生(Photo by Misa Nishimoto/Laundry Box)
高尾美穂(たかお・みほ)
産婦人科専門医、医学博士、スポーツドクター
女性のための統合クリニック イーク表参道 副院長
東京慈恵会医科大学大学院修了後、慈恵医大病院 産婦人科助教、 東京労災病院 女性総合外来などを経て現職。得意分野は女性スポーツ医学、婦人科内分泌。日々、婦人科外来診療に携わる。幼いころより様々なスポーツに親しむ中で、2003年にヨガと出会う。IYC アシュタンガヨガプライマリーシリーズ指導者養成修了。日本アスリートヨガ機構理事を務める。
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