火の粉に強い難燃ウェアで、焚き火に興じるキャンプの夜も安心

火の粉に強い難燃ウェアで、焚き火に興じるキャンプの夜も安心

  • 2021/08/19 (木)
  • 2023/05/30 (火)

密な状況が避けられる遊びとして、昨今ますます勢いを増すキャンプブーム。

料理や各種アクティビティなど、その楽しみ方はさまざまですが、キャンプの夜の醍醐味と言ったら、やっぱり焚き火。

「焚き火マイスター」として各種メディアで活躍する猪野正哉さんをお招きし、実際に着用してもらいつつ、焚き火にまつわるお話を聞いてきました。

撮影協力/TOKYO CRAFTS(焚火台KUBERU)

焚き火を楽しむ前に必要な心得とは?

キャンプ場でインタビューに答える猪野正哉さん

「焚き火に限らずアウトドアを楽しむには、まずは天候をしっかりチェックしましょう。そしてもしも天気が芳しくなければ、絶対に無理しないこと。中止する勇気、延期する選択肢を、常に持ち合わせることが大切ですね。

もちろん、貴重な休みに向けて前々から組んでいた予定なわけですから、多少無理をしてでも決行したいという気持ちも分かります。

しかし、雨に降られてしまったらギアはずぶ濡れになってしまうかもしれないし、それが山登りだったら、遭難につながってしまうかもしれない。

無理をしたい気持ちは分かりますけど、フィールドは逃げませんから。『天気が悪かったらしょうがない』くらいの、割り切った気持ちを忘れないでほしいですね。

また、焚き火に関して言えば、どんなに天気が良くても、風が強いときはなるべく避けたほうが良い。火の粉が飛ぶ可能性も高くなるし、それが原因で他人のテントに穴を開けてしまう可能性もありますからね。

ほかにも、隣のサイトとの位置関係だったり、キャンプ場の状況やルールだったり、さまざまな要素を鑑みて、リスクが高いと判断したら、勇気を持って諦めましょう。」

これが猪野さんの焚き火道具!

猪野さんの焚き火道具

焚き火マイスターの名に相応しく、サイズ違いの斧に鉈(ナタ)、のこぎり、薪の水分計測器など、さまざまな道具がずらり。

「とはいえ、これが全部必要なわけじゃないですからね。道具にこだわりだしたらキリがないので、まずはしっかり安全性を確保したうえでトライしてみることが大切です。」

焚き火マイスターに近付くための4つの手順

その①薪割り

薪を切る猪野さん

太い薪にいきなり火を着けるのは、たとえ猪野さんのような焚き火職人でも至難の業。まずは小さくカットして、焚き付け用の小さな薪を作りましょう。

薪割りのコツは、振りかぶった斧を、膝と同時に真下に落とすイメージで。もしも空振りしてしまっても斧が股の間を抜けるよう、大きく脚を開いたガニ股スタンスが基本。

また、薪を選ぶ際には樹種もチェック。

「一般的に針葉樹のほうが火は着きやすいですが、その反面、燃えも早い。それとは逆に広葉樹は、針葉樹に比べて着火しにくいですが、一度火が着いてしまえば火持ちは長い。

最近はホームセンターやアウトドアショップでも樹種が表記された薪が売られているので、焚き付け用に針葉樹、火持ちをさせる用に広葉樹と、使い分けたほうが良いですね。」

その②バトニング

バトニングと呼ばれるナイフで細く薪を裂く猪野さん

斧で割った薪は、バトニングと呼ばれるナイフを使った「薪裂き」作業でさらに細かく。刃から柄まで一体形成のフルタングナイフがおすすめです。

「バトニングは、しっかり木の目に沿ってナイフを当てましょう。その際の姿勢は、絶対に正面には構えないこと。もしもナイフが滑ってしまったときも、腕の軌道に体が当たらないよう、写真のような横座りで構えてください。ちょっとオネエっぽいですけどね(笑)。」

その③フェザースティック

フェザースティックを作る猪野さん

薪もここまで細くしてしまえば、あとは着火剤さえあればOK。しかし、着火剤が少ない、あるいはそもそも着火剤がないなどの場合は、こちらのフェザースティックを作っておくとモアベター。焚き火前の儀式としても一興です。

「ボクの場合は、地面と膝で薪を固定して、両手でナイフを持ってそいでいくイメージですね。片手で薪を押さえて片手でナイフを使う人もいますが、個人的には両手でナイフを持ったほうが均等に力がかけられるので、やりやすいと思います。その際、片手は刃先を持つことになるので、レザーグローブはマストです。」

その④薪組み

薪が組まれた写真

薪の組み方もいろいろなパターンがありますが、ここでは最も組みやすい方法を指南。ポイントは、空気の通り道。

「井桁型や合掌型などもありますが、ボクがいつもおすすめしているのは、まず太めの薪を枕木として置き、そこに細く裂いた薪を放射状に並べていくやり方。

すると、枕木と薪の下にスペースができますよね。そこに着火剤を仕込んで、その上にフェザースティックをセットすれば完璧。燃焼に必要な空気の通り道を確保しつつ、フェザースティックに着いた炎が勝手に上昇してくれるので、初心者でも簡単に着火可能です。

この状態でしっかり火が着いたら、あとは太い薪をくべていって問題ありません。」

マイスター猪野さんが思う焚き火の魅力とは?

焚き火の前で話す猪野さん

元ファッションモデルという肩書を持ちながら、今や焚き火の伝道師として活躍する猪野さん。その魅力について聞いてみました。

「ボクが考えるに焚き火の魅力って、相手の目を見なくても許されるというところだと思います。人と人とのコミュニケーションって、やっぱり目を見ながら話すのが基本じゃないですか。だけど実はそれって、けっこうストレスになっている場合もある気がして。

その点、焚き火を囲んでいる最中であれば、みんな焚き火を見ながら話しますよね。だから目を見なくて良い分ストレスが少ないし、なんなら無言でもその場が成立する。普段ちょっと言いにくいことでも焚き火を囲みながらだったら話しやすいっていうのは、そういう原理なんですよね、きっと。

あと、ボクは『焚き火マイスター』なんて人に呼ばれてはいますけど、実は焚き火のやり方なんて、安全性と周囲への配慮さえ欠かさなければ、何でも良いと思っています。

よくいるんですよ、マウント取りたがる人が(笑)。その火着けは粋じゃないとか、着火剤を使うのは邪道だとか。

もちろん安全性とか環境保護的な意味でのダメ出しなら分かるのですが、それ以外の作法的なことは正直どうでも良いと思っていて、それはその人個人で楽しめば良いじゃないですか。

だから、10人いたら10通りの焚き火のやり方があって良いと思うし、とにかくまずは安全性を確保したうえで、自由に楽しんでもらいたいですね。」

猪野さんが考える難燃ウェアの有用性とは?

焚き火から火の粉が飛んでいる様子

焚き火を生業にする猪野さんにとって、難燃ウェアとはどんなものでしょうか?

「難燃ウェアのアドバンテージは、火の粉に強いということですよね。例えば、薄手のナイロンなどは、小さな火の粉が付いただけでも一瞬で穴が開いてしまいますから、焚き火には不向きと言えると思います。

だけど正直言って、ボクは普段から難燃ウェアを着て焚き火をするわけではありません。なぜかと言うと、どうしたら薪が爆(は)ぜて火の粉が飛ぶか分かっているから。

具体的には、しっかり乾燥した広葉樹であれば薪が爆ぜる可能性は少ないし、爆ぜそうな薪は、見て触れば大体分かるので。だけど、そうじゃない方々は安心をまとうという意味で、難燃ウェアを着るのが良いでしょうね。

ここで勘違いしてほしくないのは、『難燃』素材っていうのは読んで字のごとく、あくまで『燃え難い』素材。だから決して、『それさえ着ていれば絶対に燃えないですよ』というわけじゃないんですよ。

例えば登山ウェアにしても、普段着よりは登りやすいけど、それを着たからって100%安全に山登りできるわけではないじゃないですか。

それと同じで、難燃ウェアを着ていたほうが服が燃えるリスクは下げられるけど、結局は、薪の選び方だったり風向きの観察だったり、そういう基本的な安全確保がベースにあったうえでの保険なんですよね。

その点だけは絶対に忘れないで、あくまで“より安心”という認識で、難燃ウェアを着るようにしてください。」

 

<プロフィール>

猪野正哉
アウトドアプランナー/焚き火マイスター/アウトドアライター

1975年、千葉県出身。浪人生時代に応募したオーディションに受かり、有名ファッション雑誌の専属モデルを2年間務めたのち独立。ファッション誌を中心に、モデルやライターとして活躍し、2015年から実家のある千葉市で、アウトドアスペース「たき火ヴィレッジ〈いの〉」をスタート。テレビ番組『石橋、薪を焚べる』(フジテレビ)では焚き火監修を担当。著書に『焚き火の本』(山と渓谷社)あり。

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