【累計25万本以上】開発担当デザイナーと紐解く「エアスタイリッシュパンツ」がヒットした理由

【累計25万本以上】開発担当デザイナーとひも解く「エアスタイリッシュパンツ」がヒットした理由

  • 2021/05/14 (金)
  • 2023/06/19 (月)

エアスタイリッシュパンツを眺める青林氏

2018年春夏にローンチしたルコックスポルティフの「エアスタイリッシュパンツ」。スポーツシーンに対応する動きやすさと、街でもはける美シルエットにより絶大な支持を集めています。

現在はトレーニングからライフスタイルまで幅広いデザインの9型を展開し、累計25万本を超えるヒット作となりました。

今回は、そんな「エアスタイリッシュパンツ」の魅力を探るべく、開発を担当したルコックスポルティフのアパレルチーフデザイナー・青林充氏に、誕生秘話やこだわりなどを伺いました。

目指したのは“普段使いできるトレーニングパンツ”

――エアスタイリッシュパンツを開発するに至った経緯を教えてください。

デサントでは昔から立体パターンの開発が行われていて、そのなかからトレーニング用のNEXTEPパンツを開発し、それがエアスタイリッシュパンツの原型になりました。

それまでトレーニングパンツの単品訴求というものはなく、ジャージやスウェットなどセットアップ展開しかありませんでした。そこで、なんとかしてパンツ単品として強いアイテムが欲しい、そしてコーディネートの幅を広げたいというところからスタートしたんです。

エアスタイリッシュパンツ 型紙

青林氏

――いわゆるトレーニングパンツだけど、上下セットではなく別アイテムと合わせてコーディネートできるということを目的に生まれたと。

当初展開していたNEXTEPパンツも含め、基本的にすべてニット製品だったんですね。でも普段はくのはだいたい布帛のウーブンパンツだよねっていう話から素材も変更しました。そこからは布帛の素材でパターンを使って、という感じで開発を進めました。

――セットアップではなく、コーディネートを目的にするために布帛を採用したのですね。

はい。単品パンツとしての強さというか、トレーニングパンツは普段ばきにも使えるという目論見があったので。機能的だけど普段ばきできるというのは、エアスタイリッシュパンツの狙いの一つでした。

布帛は軽さを最優先として、素材から開発しました。あとはもちろんストレッチです。しっかり伸びて、それでいて戻りが良い。ストレッチの効いたパンツははいているうちに膝が伸びきってしまうのですが、エアスタイリッシュパンツには“膝抜け”しにくい生地を選んでいます。

また、それだけのストレッチに耐えられるよう、縫製部分の強度も試行錯誤しました。

片足1枚構造で、縫い目を外側に。これが普段使いのカギとなる

――布帛のほかに、普段ばきのために工夫したポイントを教えてください。

そうですね、3Dパターンの片足1枚構造にすることで、ストレッチ性を確保しながら細身のシルエットも担保しています。普通のパンツは片足に2枚の生地を使うのですが、エアスタイリッシュパンツは1枚なので内股に縫い目がなく、“縫い止まり”がないんです。

すごく伸びる生地も結局は縫い目で伸縮が止まってしまうので、それを解消しました。

さらに効果的にダーツも入れることで、“細いけど動きやすいパンツ”に仕上がっていると思います。細身で動きにくいのは本末転倒だし、動きやすくてもシルエットがイマイチだと普段ばきには適さないので。

そして縫い目を外側に設けたのもポイントです。既存のNEXTEPパターンも片足1枚構造ですが、内股に縫い目があるので、その点も大きな違いになっています。

――縫い目が外側にあるだけでそこまで違うものなのでしょうか?

機能面というより、どちらかというと見た目の話ですね。やっぱり布帛で外側に縫い目が入ることによって、結構スマートに見えたりデザインのポイントになったりするので、普段ばきとして使えるようにするためには大事な要素だと思っています。

縫い目の位置というのは、地味だけど結構見た目の印象を左右するものなんですよ。横から見るとつるんとしているのが意外と気になってしまうので、縫い目を外側にしたかったんです。

――外側に縫い目がないとスポーティーに見えすぎるというか。

おっしゃる通りで、本当にスポーツウェアのように見えてしまうし、インナーっぽく見えてしまうところがあって。外側にあるだけで普通のパンツに見えるし、のちにファスナーを付けたりテープを付けたりとデザインのポイントにしやすいんですよ。

そういったデザインを入れやすいこともあって、縫い目を外側にすることにはこだわりましたね。内股に縫い目がないので、単純に肌当たりも良くなりますし。

――確かに、外側に縫い目があるだけで普通のパンツっぽい見え方になりますね。

開発当時はデサントの「ZEROパンツ」が人気で、これは生地を部位に合わせて立体裁断をして縫製するパンツになっています。この立体裁断は見た目も機能的に見えますし、体の動きに合わせられているので、スキーやサイクルウェアにも採用されています。

ですが、ルコックスポルティフはそれとは逆に、1枚構造で素材を活かすほうがブランドに合っていると考えたんです。パターンを何枚もつないでいくとどうしてもスポーティーな印象になるので、普段使いを狙うなら機能を前面に出さないで作ろうと。そのバランスがとても難しかったですね。

青林氏

25万本超えのスマッシュヒット!でも当初はあまり売れなかった!?

――普段ばきもトレーニングもできるエアスタイリッシュパンツは25万本以上のヒット商品になりました。やはり発売当初から人気が高かったのですか?

いえ、これが最初はあまり売れなくて(苦笑)。やはりトレーニング系パンツの単品訴求が難しいという点もありましたから。

そんななか、最初に評価してくれたのは百貨店です。百貨店の店舗で、マネキンにはかせてシルエットのきれいさを見せて、しっかり特徴について接客していただいたことで徐々に上向きになっていきました。

百貨店のスタッフさんが、「一度はけば良さが分かりますよ」とお客様に声をかけてくれていて。それで試着をしたら「すごく良いね」ということで、そのまま購入につながるパターンが増えたそうです。

試着をすると、エアスタイリッシュパンツの一番の良さである“はき心地とシルエットの良さ”が伝わるはずですが、セルフの売り場ではなかなか難しいので。それを浸透させるまでにはちょっと時間がかかった、というのがありますね。

――美シルエットのエアスタイリッシュパンツだからこそ、百貨店で評価されたというのもありそうですね。

実際に購入された方は、普段ばきをメインに使っている方がほとんどという声をいただいています。細身でシンプルなので、仕事にはいて行かれる方が多いそうです。

百貨店の接客のおかげで消化率が良くなって、実績が出たくらいから大型スポーツチェーン店も入ってきたので、数が一気に増えたという感じですかね。これが2019年春夏で、そのときに数を見込んでバリエーションなども増やしましたから。

ルコックスポルティフではどうしても1シーズンで終わるアイテムが多いなか、このパンツは続けていこうと社内で話していたので本当に良かったです。続ける気があったからこそ名前も付けて販売しましたし。

――発売当初から商品名は「エアスタイリッシュパンツ」ですか?

デビューした2018年春夏には名称がなく、NEXTEPパンツがベースなので「ニューNEXTEPパンツ」と社内では呼んでいました。「エアスタイリッシュパンツ」として打ち出したのは2018年秋冬です。

前のMD担当が発案したネーミングなのですが、エア=軽さ、スタイリッシュ=細身のイメージを伝えたくて、ずっと頭の中にあったらしいです。当時“スタイリッシュ”という言葉は社内で猛反対されましたが(苦笑)、逆に懐かしいし、直球で分かりやすいということで「エアスタイリッシュパンツ」に決まりました。

青林氏

はけば分かる!スポーツブランドにしか生み出せない着用感

――商品名の分かりやすさは大事ですね。これもヒットにつながる一つの要因だったのかもしれませんね。

「エアスタイリッシュ」という言葉はインパクトもありますし、パンツのみで25万本以上という実績がついてきたので、この名称が付いていると社内外の反応も良いんです。

現在パンツは9型ありますが、このほか「エアスタイリッシュ」の思想というかコンセプトから生まれたジャケットやシャツなどのバリエーションも展開しています。

――「エアスタイリッシュ」は今後どのような方向で進化していくのでしょうか。

やはり「エアスタイリッシュ」の基本はパンツなので、今後もパンツをしっかり開発していこうと思っています。今は素材のバリエーションも増えてきて、良い素材も使えるようになってきたし、ディテールにもこだわれるようになってきたので、そのあたりもしっかり見せられるよう完成度をもっと上げていきたいと考えています。

パンツは衣類のなかでも、特に動きやすさが求められるアイテムです。パターンにこだわり、機能面と価格面のバランスが取れるのはスポーツブランドの強み。はいてもらわないと分からないかもしれませんが、一度はいてもらえればきっと良さが伝わるという自負はあります。

――体を動かすための服を作ってきたスポーツブランドにしか作れないパンツということですね。

はい、「エアスタイリッシュパンツ」のベースはスポーツです。背景にスポーツがあってこそのパンツだと思っています。NEXTEPパンツのときも一番最初はフットボールで開発して、そこからトレーニングパンツという形をとりました。

そういうスポーツ背景が最終的には大事になってくるのかなと思います。だからこそ、普段スポーツウェアを手に取っていない方たちにも、ぜひ一度はいてもらいたいと思っています。

青林氏とエアスタイリッシュパンツ

青林氏とエアスタイリッシュパンツ 

<プロフィール>

青林充

2009年入社。トレーニング、テニスカテゴリーをメインにさまざまなカテゴリーを経験。テニス4大大会をはじめ、国際大会で日比野菜緒選手が着用したウェアの開発に携わる。現在はテニス、サイクリングカテゴリーを担当。

 

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