寝袋やダウンで有名なNANGAとルコックスポルティフ ゴルフ(以下ルコックゴルフ)とのコラボレーションが実現。NANGA独自のダウン素材を用いて、ゴルファー向けのさまざまな機能を盛り込んだ特製ウェアが誕生しました。
商品の発売に合わせ、NANGAの生産管理を担当されている山田まい氏と、ルコックゴルフのデザイナーである藤井俊輔氏、同企画担当の加藤源太郎氏の対談が実現。
「ダウンの暖かさ×ゴルフの動き」を両立したデザインのポイント、両ブランドが抱えるものづくりへの想い、そしてコラボレーションの裏話までをたっぷりお届けします。
「保温力」を追求するNANGAのこだわり
歴史の深いフランスではなく、スペインの羽毛を選んだ理由
NANGAの山田さん。
藤井:NANGAといえば、特にダウンシュラフやダウンジャケットが人気で、アウトドア好き、ファッション好きにとって憧れのブランドです。当然、僕自身もダウンを愛用させていただいています(笑)。
以前、NANGAの横田社長とお話しした際、一番の武器は「保温力」と伺ったのですが、どのような工夫をされているのでしょうか。
山田:NANGAというブランドは、もともと寝袋の開発から始まりました。寝袋は、冬場の登山など使用シーンによって人の命に関わるものです。そのため、「保温力」を損なうことがないよう、「羽毛」にとてもこだわっているんです。
具体的には、羽毛のクオリティを追求するため、社長自らが海外に赴き、現地で品質を確かめて工場と契約をしています。
現在はスペインの契約工場で2回洗った羽毛を仕入れ、国内でもう1回洗ってきれいにし、そこから商品に使用する羽毛を選別していますね。これにより、他社に負けないダウンの膨らみや暖かさをご提供できているんです。
藤井:なるほど!現地に足を運ぶからこそ素材の良さを見極められる、と。確か、NANGAは特注の羽毛を使っていらっしゃるんですよね。
山田:そうなんです。ほかのダウンブランドも使用しているフレンチダックダウンは、歴史があり良質なダウンとして有名ですが、NANGAでは強いこだわりからスペインのダウンを採用しています。
フランスに比べてスペインのダウンの歴史は浅いですが、歴史が浅いからこそ、最新の機材がどんどん投入されているんです。それにより、洗練された質の良いダウンが作られているんです。
藤井:もう一点コラボを検討するなかで素晴らしいと思ったのが、NANGAのダウンは日本の環境を考慮して作られていますよね。
日本のように雨の気候が多いと、雨に濡れた際に羽毛が水分を含んで偏りが出る。そうすると膨らみが保てず、保温力が落ちてしまう。そのため、羽毛にはっ水加工することで防いでいるとお聞きしました。
山田:それも「保温力」に対するこだわりの一つです。UDD(ウルトラ・ドライ・ダウン)という商品で、羽毛が水に浮くくらいのはっ水加工を施しているため、水の濡れに強いダウンができます。
羽毛だけにとどまらない生地へのこだわり
加藤:今回のコラボ商品には、ダウンのほかにも「オーロラテックス」という生地を使用させていただきました。こちらも相当こだわっていらっしゃいますよね。
山田:この生地も、寝袋を作るときに「お客様がどんなものを求めているか」を考えて生み出したものです。開発当時、防水透湿かつ薄くて軽い生地がなかったため、生地をどうコーティングするかなど、生地屋さんと話をしながら試行錯誤して作りました。
藤井:オーロラテックスのすごいところは、薄くて柔らかいのに強度があることだと思います。ダウンの保温性を高めるためには、生地は柔らかく膨らみを持たせ、羽毛を潰さないようにすることが必要ですよね。
山田:その通りです。ちなみに現在も、オーロラテックスをもとに進化させた、軽くて薄い生地の開発を続けています。保温性を高めるために寝袋の構造にもこだわった、なるべく羽毛を潰さないような独自の構造が特徴です。創業からずっと「お客様に喜んでもらえる商品を届けたい」という想いで、ものづくりをしていますね。
NANGAとルコックゴルフの想いが重なる商品づくり
NANGAのものづくりへの想いに共感してスタートしたコラボ
左:ルコックゴルフMD加藤、右:ルコックゴルフデザイナー藤井。
藤井:今回、NANGAとコラボしたいと思ったきっかけは、「創業時から磨き上げてきた寝袋のノウハウを活かしてダウンを作っている」というストーリーにとても共感したからなんです。
そして、「お客様に良いものを届けたい」という想いがこもったものづくりは、ルコックゴルフにも通じるなと感じました。私たちは、「ゴルフをプレーする人にとって最適なウェアを届けたい」という想いを持って商品をデザインしています。
今回、ゴルフウェアとしてプレーダウンを作ろうと考えたときに、NANGAと一緒にものづくりができたら、きっと良いものができると思ったんです。
山田:実は、コラボのお話をいただいたときに工場のキャパシティの問題があって、お受けして良いのか迷っていた部分もありました(笑)。ですが、私たちは今まで、アウトドアやタウンユースのダウンしか手掛けてこなかったこともあり、新しくゴルフウェアに挑戦する良い機会だと思い、コラボさせていただくことにしました。
実際、ルコックゴルフとのコラボはとても勉強になりました。スポーツウェアならではの特徴だと思いますが、生地の強度や規格にとても厳しいですね。
また、企画の段階から商品のディテールまでを詳しく考えられていて、ゴルファーのためにさまざまな工夫をしていらっしゃることを、身を持って知ることができました。
藤井:当初は社内でそんなことになっていたんですね!無事にコラボしていただけて良かったです(笑)。
今回のデザインでは、NANGA独自素材の保温力を活かし、それを阻害せずにゴルフウェアに落とし込むことが一番のポイントでした。
保温力を保つために膨らみを維持したい、しかしゴルフのスイングを邪魔してもいけない…。真逆の要素を組み合わせているような感じで、デザインにとても苦労しました。
NANGAの皆さんに保温のノウハウをお教えいただきながら、ゴルフの動きの邪魔になってしまう部分のダウンをそぎ落としていく作業になりましたね。
山田:普段、私たちがダウンを作るときとは全く異なるパターンなどがあって新鮮でした。「どうしてこんな形にするのか?」と思うところも、必ず理由があって、「こう作ったらこう動けるようになる」という検証をされているんですね。
加藤:今回はコラボということで、ゴルフシーン以外でも着用できるように「カジュアルだけどスポーティー」に見えるようこだりました。
藤井:オーロラテックスの良さを活かすために、ストレッチ性があり、防風機能を持ち合わせた「ストームフリース」という素材を組み合わせました。
ゴルフのスイングから解析して、この2つの素材をうまく組み合わせてカッティングを入れたり、パターンを工夫することで動きやすさを追求しています。
両ブランドの良いところを結集したコンセプトモデルが誕生
山田:デザインにこだわっていただいたことで、今回のコラボでは、NANGAのダウンの保温性を維持し、ゴルフで着用してもプレーの邪魔をしないという、お互いの良いところを結集したコンセプトモデルが完成したと思います。
アウトドアとゴルフ、その両方を楽しんでいる人はもちろん、片方だけに関心がある人にも、それぞれのブランドの良いところが伝われば良いなと思っています。
また、見た目のデザインを気に入って購入いただいた場合にも、実際に着てみて「機能もすごく良かった」と思っていただけたらとてもうれしいです。
加藤:ありがとうございます。ルコックゴルフのファンの皆さまに、NANGAの素晴らしさを知っていただける良いウェアができたと実感しています。
腕を通してもらえれば、NANGAの寝袋の良さが伝わってくるようなウェアです。寝袋に包まれている感覚があって、上下のウェアを着ればそのまま寝れちゃうかもしれませんね(笑)。
NANGAとルコックゴルフ、両ブランドのものづくりへの想いが詰まっていますので、より多くの皆さまに着用していただきたいと思います。
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