マスターズ制覇の松山英樹選手と共同開発を行うゴルフウェア。彼が求め続けた「こだわり」とは?担当者が開発秘話を語りました
#SRIXON(スリクソン)

マスターズ制覇の松山英樹選手と共同開発を行うゴルフウェア。彼が求め続けた「こだわり」とは?担当者が開発秘話を語りました

2021年4月に開催されたゴルフのメジャー大会「マスターズ・トーナメント」。松山英樹選手は節目となる10回目の挑戦で、日本人初優勝を達成しました。

今回は、2015年より松山選手のウェア企画開発を担当する岡田育朗氏に「開発のきっかけ」や「ウェアに対するこだわり」などについて語ってもらいました。

松山選手が1年かけて選択したスイングを阻害されない「素材」と「デザイン」

笑顔の岡田育朗氏

――デサントが松山選手とウェアの共同開発を始めたきっかけを教えてください。

2015年より、住友ゴム工業株式会社との業務提携により「スリクソン」ブランドのゴルフウェアを当社で企画・生産することになりました。

「スリクソン」ブランドの契約選手のサポートも両社で協力して行っていくなかで、ウェアについても非常にこだわりが強い松山選手と、当社の機能性や商品開発力を生かしたウェアの共同開発をすることになりました。

松山選手着用のモデルのウェア

――ウェアの企画開発を始めるときに、松山選手が求めたことは何だったのでしょうか?

まず、デサントがウェア開発の担当をすると決まったときに「何ができるのか」「マイナス点はないのか」という疑問が生まれることを懸念し、2015年には松山選手にアプローチをしていました。

そのなかで、松山選手が一番重視していたのが、肌に当たる裏面部分の「素材」でした。当時、私たちはストレッチが効いた伸びる素材で作成したウェアが良いと考え、自信を持って渡したところ、「これは伸びすぎてダメです」と言われ、衝撃を受けましたね。

何が問題なのかを聞いてみると「スイング時、体を回すときにいくら伸びてもいつかその生地の伸度で、自分のスイングの回転を止められるんじゃないか?」と言われました。

極論、ウェアは伸びなくて良いから衣服の裏地と肌の摩擦が「0」で、めちゃくちゃ滑りが良ければ、スイングを一切阻害されることなく衣服の中で自分の体が回転できるというのが、プロの感覚だったと思います。

ウェアの生地を確かめる岡田育朗氏

――松山選手が求めるウェアが完成するまで、どのくらいの時間が掛かりましたか?

約1年で、20回以上試着をしてもらいましたね。なかには、触った段階でダメというものもありましたし、袖を通してみて「これ肌触りがザラザラするから改善して欲しい」と言ってスイングをしなかったウェアもありました。

そして、彼からフィードバックを何度ももらいながら、吸汗速乾、汗でべたつかないように裏面をメッシュ組織にするけど、滑りが良いというものを開発していき、最終的にたどり着いた素材が「サンスクリーンメッシュリバース」です。

肌面への当たりがフラットで滑りが良く、吸汗速乾に優れ、太陽光の熱を遮りウェア内の温度上昇を抑えるクーリング機能があります。松山選手は、この素材のウェアを着用してから、今まで1度もウェアの素材を変更したことがありません。

松山選手の要望を聞き続けて分かってきたことは、松山選手は外的要因の変化を好まないのではないか、ということです。

何かが変わってプレーに影響が出たとき、ウェアやギアなど変わったものに原因を追求することはせず、シンプルに自身のプレーを見つめ直し、技術やフィジカル面を改善すれば良いという結論に至っているんだと思います。

――デザインの部分にもこだわりを持っているのでしょうか?

松山選手の場合、ウェアの背中部分に切り替えが入るデザインは嫌がります。切り替えが入ってしまうと段差ができてしまい、その切り替え部分が背中に当たり、バックスイングの感覚を変化させてしまうということで、背中の部分はフラットな1枚仕立てにしてほしいというのが要望です。

そして、襟も身生地に使用しているものと同様の素材で作成してほしいと言われています。要は、バックスイング時に襟が顎に当たるので、そこも身生地同様、「滑りが良いもの」ということでした。

また、アシンメトリー(左右非対称)のデザインも好みません。左右非対称のデザインだと、クラブを握ってアドレスをするときに、視覚的に少しバランスが悪く感じてしまうのだと思います。彼がさらに高いレベルでゴルフをプレーするために、デザインの細部にまでこだわりを持っていることが分かりましたね。

ウェアを誰よりも長く着用している松山選手 だからこそ彼の言葉には説得力がある

スイングをする松山英樹選手

――2016年から現在まで、松山選手のウェアの開発に携わっていますが、素材以外で進化しているところはありますか?

進化というよりも、年々無駄をそぎ落としていると言ったほうが良いですね。前述したように、元々は後ろに切り替えがあったデザインのウェアもありましたが、そのデザインをなくしました。

また、2017年までは現在の「サンスクリーンメッシュリバース」と消臭機能がある「デオダッシュ鹿の子」、2つの素材のウェアを着用していた時期がありました。しかし「デオダッシュ鹿の子」のほうが若干、素材として伸びたことや肌面に凹凸感が目立っていたこともあり、今は1つの素材のみになっていますね。

――コーディネートは松山選手自身がしているのですか?

ウェア、シューズ、キャップとトータルコーディネートを松山選手自身がしています。基本的には、色を合わせたいという考えがあり、例えば黄色のウェアを着用するときはシューズとキャップも黄色と、1日ごとに色をそろえて着こなすというこだわりがあります。

また松山選手からは、1つのデザインに対し、最低6色を用意してほしいと言われます。火曜日の練習ラウンドから始まり、最終日の日曜日まで計6日間、同じデザインですが色違いで準備をしています。

なぜそのような要望があるかというと、やはり感覚を変えたくないというのが理由です。同じ素材でもデザインが違うと本当に若干ですが、染料の差などで肌触りが違ってしまうんです。松山選手は1つの試合に対して、練習ラウンドの時点からその感覚で調整をしていくので、それを変えたくないという想いがあるのだと思います。

また、毎シーズン10~13デザインを2セット用意して渡していますが、自身でクリーニングに出して着用するケースもあるので、実は毎回新品を着ているわけではないんです。気に入ったものであれば、2、3回着るときもあります。

肌面にこだわりを持つ松山選手ですが、クリーニングに出しても十分に耐久性のある縮みにくい素材で開発してきたので、そこに対しての不満や要望は彼からは出てきていないですね。それだけしっかりとしたものを提供できていると思います。

スリクソンゴルフウェアと岡田育朗氏

――2021年から、松山選手が実際に試合で着用しているモデルを販売されました。2016年から共同開発し約5年の歳月が掛かりました。

そうですね。2016年から松山選手が実際に着用しているデザインのモデルは販売していましたが、素材が一部異なっているものなどもありました。やはり、最終的な素材にたどり着くまでに時間が掛かりましたし、松山選手用にオリジナルの仕様にしていたこともあり、販売に落とし込めずにいました。

しかし条件が整ったことで、今年初めて忠実に再現した完全プロモデルシャツを販売することができました。カラーも松山選手が要望している6色を用意しています。(通常、松山選手へ特注カラー含む6色を用意するうち、3〜4色を一般で販売)

2017年以来優勝から遠ざかっていたなか、このようなタイミングでマスターズという大きな舞台で優勝を成し遂げてくれたので、本当に嬉しかったです。

――最後に、共同開発からウェア開発に役立っている部分があれば教えてください。

世界で活躍している松山選手が長時間ウェアを着用してプレーをしているので、フィードバックで返ってくるコメントには一番説得力がありますね。「背面の切り替えをなくす」「衿も共地で作成」するなど、そういうところの感覚は、彼の意見を聞かなければ分からなかった部分です。

「スリクソン」ブランドは、トップアマチュアなども対象に、本気でゴルフに挑む人に向けられて作られたブランドです。松山選手が着やすいというもので、アマチュアゴルファーの方が着にくいということはないと思いますね。

松山選手がこだわる素材やデザインのウェアを着用し、プレーを楽しむ方が増えれば嬉しいです。

松山英樹プロ共同開発シャツ

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