肌の温度の上昇、さらに肌の奥まで届き、
ダメージを与える近赤外線。
近年、研究が進んできた近赤外線。東京女子医大の名誉教授であり、近赤外線研究会の前理事長でもある川島先生に、夏の太陽光が身体に与える影響や予防法についてお聞きしました。

1978年東京大学医学部卒業。アトピー性皮膚炎をはじめ、美容、皮膚ウイルス感染症、接触皮膚炎などを研究してきた東京女子医科大学名誉教授。日本香粧品学会前理事長、日本美容皮膚科学会前理事長、近赤外線研究会(現日本フォトダーマトロジー学会)前理事長、日本コスメティック協会理事長、NPO法人皮膚の健康研究機構副理事長。
夏の強い日差しの下では身体に何が起こるかというと、まずジリジリとした暑さを感じ、数時間後に皮膚が赤くなってヒリヒリしてきます。この皮膚がヒリヒリする、赤くなる、黒くなる、これは紫外線の作用です。
一方、暑さを感じる、つまり肌の温度を上げる最大の要因は太陽光線の赤外線、中でも力の強い近赤外線の領域になります。遠赤外線も肌の温度を上げる作用はありますが、近赤外線に比べるとその力は小さく、例えば、遠赤外線を主に発する暖房器具はじんわり温めることができます。しかし、近赤外線領域が豊富な夏の太陽光を浴びるとジリジリとした不快をすぐに感じることからも近赤外線を浴びることが肌の温度上昇の要因と考えられます。
さらに、温度上昇以外に“たるみ”や“深いシワ”も近赤外線による作用であることと言われ始めています。これまで、真皮で起きるシミやシワなどは紫外線が原因であると言われていましたが、特に顔に目立つ“たるみ”や“深いシワ”は単に真皮の変化だけでは説明がつきませんでした。近赤外線の組織学的な研究結果において、筋肉や筋膜に変性を起こすことが分かったことから、筋肉や筋膜、骨といった身体の深い部分にまで達すると考えられます。
近赤外線の研究から、屋外でスポーツを行う際は、近赤外線の抑止効果を持ったウェアを身に着けることで、ジリジリとした不快感を軽減、パフォーマンスを低下させない、といった効果が期待できます。
