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ブレない男のメンタリティ
遠藤保仁選手インタビュー 後篇

日本代表の最多出場記録保持者である遠藤保仁選手
Jリーグでの出場試合数と合わせると、Jリーグ史上最高の666試合に達する(※5月27日時点)。
前人未到の領域でさらに進化を続ける稀代のボランチは何を考え、何を大切にしているのか。
どんな大一番でも自然体を崩さない男の思考法を探った。
遠藤保仁選手 インタビュー 前篇

プロ入り17年目を迎えた遠藤保仁が、デビュー時から最も成長したと実感しているのは、テクニックやプレーの精度ではなく内面だった。
「多くの経験をして、今ではいろいろなものにしっかり対応できるようになったと思います。技術や戦術はやればやるほど身につくものですが、メンタルが一番成長したかな。プロ一年目からある程度試合に出させてもらって、そのおかげでユースの代表、オリンピックの代表にも選ばれた。若い時にたくさんの試合に出られたことが大きいですね」
遠藤選手はJ1だけで出場試合数449(5月27日時点)を誇る。これは、歴代6位の記録だ。さらにJ2で33試合、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で35試合、クラブワールドカップで3試合、Jリーグスーパーカップで4試合出場しており、全て合わせると524試合にのぼる。
代表戦と合計すると666試合。
これは断トツでJリーグ史上最多であり、平均すると年間41試合を戦っている計算だ。1999年に行われたワールドユース選手権の予選と本大会、シドニーオリンピックの予選も含めれば、試合数はもっと増える。
また、ACLでアジアを制し、クラブワールドカップ準決勝ではマンチェスター・ユナイテッドと対戦するなど、試合数だけでなく経験値や密度でも群を抜く。
日本代表としての不遇の時代を乗り越え、今や歴代のJリーガーの中でも前人未到の域に達している遠藤選手だからこそ、大舞台でも動じない、逆境にも屈しない強靭な精神力を身につけることができたのだろう。

読書の効用

もうひとつ、遠藤選手のメンタルを補強するものがある。
それは書籍だ。
遠藤選手は読書好きで、日本代表の遠征にも本を持参することで知られる。誰か特定の人のファンではなく、「いろいろな人の本を読むのが好き」というのが遠藤らしい。
読書は遠藤選手の思考にどんな影響を与えているのだろうか?
「松下幸之助さんの本や、ユニクロの柳井社長の本は何度も読み直しました。大企業のトップに立った人の考え方や発想はすごいなと思います。人を動かすという意味では同じような立場にいるので、いろいろな人がそれぞれのモチベーションの上げ方を持っているのを知ると面白いですね。サッカー選手も人それぞれ性格が違うので、接し方もすべてが同じようにはいかない。そのへんを頭に入れながら、一言、二言かけてあげるだけで違うとは思いますし、そういう部分で経験の多い選手が必要なのかなと思います」
ガンバ大阪では主将を務め、日本代表では最年長のベテランだけに、求められる役割は若手の頃とは違ってくる。広い視野と冷静な判断力でチームの現状を把握し、目標に向かって正しい方向に進んでいくように気を配らなくてはいけない。遠藤選手は自ら率先してチームを引っ張るようなタイプではないだけに、年を重ねてリーダーとしての役割を担うようになった時、大企業のトップが記した様々なマネジメント術は、ピッチの内外で振る舞い方に対してヒントになっているのだろう。

遠藤選手は「いろいろな人の本を読むと、こういう考え方もあるんだなとか、自分のためになりますよね」とも語っているが、読書における多様性への興味や寛容さ、フラットな姿勢はプレー面でも共通している。
「日本代表でのプレーで意識しているのは、新しく代表に入ってきた選手のプレーや癖を見抜けるかどうか。もちろん、サッカー観が似ている選手も全然違う選手もいますけど、サッカーは正解がひとつではないスポーツなので、多少のずれはあって当然です。全然違う感覚を持っている選手と話すのはすごく楽しいし、それがうまく融合すれば面白いですよね。プレーをしていてやりやすい、やりにくいはもちろんあるので最初は苦労しますけど、それも当たり前のこと。やりにくいままで終わることは避けるようにしています」
影響力のある選手の言動は、チームの雰囲気を大きく左右する。自分と違う感覚を持つ選手との会話を「すごく楽しい」と受け入れ、異なる感性が交わる可能性を「面白い」と信じられる遠藤選手は、海外組が増え、個性派が顔を揃える日本代表で不可欠の存在だ。

「楽しむこと」へのこだわり

この「面白い」「楽しい」という感覚こそ、遠藤選手が重視していることでもある。
「一番大切にしているのは、サッカーを楽しみながらやること。自分が楽しんでサッカーをしていれば、見ている方々にも楽しんでもらえると思っています」
外野の声に惑わされず、ピッチに立つために最大限の努力をし、どんなタイプの選手とのプレーも前向きに捉える。遠藤選手の独自のスタイルは、どうすればよりサッカーを楽しめるかを追求した結果ということもできる。
そして「楽しむこと」に貪欲な遠藤選手が求めるのは、ワールドカップのような大舞台だ。
「ブラジル、アルゼンチン、フランス、イングランドなど強豪国ともたくさん試合をしてきましたけど、強い相手や世界のトップレベルの選手との対戦はいつも楽しみですね。例えばワールドカップでも対戦するヤヤ・トゥーレ(マンチェスター・シティ所属・コートジボワール代表)はスーパーな選手で、自分と比べてすべての面でレベルが高いと思いますが、そういう存在が良い刺激になります」
遠藤選手はどんな試合でも感情を露わにすることがほとんどないが、きっと大一番であればあるほど、相手が強ければ強いほど、期待に胸を膨らませているのだろう。

(ライター:川内 イオ)

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