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ブレない男のメンタリティ
遠藤保仁選手インタビュー 前篇

日本代表の最多出場記録保持者である遠藤保仁選手
Jリーグでの出場試合数と合わせると、Jリーグ史上最高の666試合に達する(※5月27日時点)。
前人未到の領域でさらに進化を続ける稀代のボランチは何を考え、何を大切にしているのか。
どんな大一番でも自然体を崩さない男の思考法を探った。
遠藤保仁選手 インタビュー 後篇

遠藤保仁、34歳。
1998年、18歳で横浜フリューゲルスに加入してから16年の月日が流れた。フリューゲルスでは開幕戦デビューを飾り、翌年に移籍した京都パープルサンガでもすぐに主力として活躍。01年にガンバ大阪に移ってからは、チームの中心選手であり続けている。2度のJ2降格を経験したとはいえ、遠藤はJリーガーとして屈指のキャリアを誇る。
その一方、オリンピック代表やフル代表レベルでは決して順風満帆ではなかった。2000年のシドニーオリンピックでは予備登録メンバーだったし、02年の日韓ワールドカップでは海外組の陰に隠れ、06年のドイツワールドカップではフィールドプレーヤーの中で唯一、一度もピッチに立つことがなかった。
トップJリーガーのひとりでありながら、代表の試合ではベンチを温める。
現在、日本代表歴代最多出場試合数を誇る男にも、そんな不遇の時代があったのだ。
それでも、遠藤選手は腐らなかった。
ピッチに立てば、いつものように飄々とパスをさばき続けた。スランプに陥ることもなく、常に一定のパフォーマンスを見せてきた。
このぶれない精神力は、どのようにして培われてきたのだろうか。

チーム内で評価される選手を目指して

まず、遠藤選手の姿勢として一貫しているのは「外部からの評価は気にしない」ことだ。
メディアやファンによるプレーの論評はサッカーにつきものだが、遠藤選手は外部からの批判や意見を気にしない。意識して無視しているというより、「お好きにどうぞ」というスタンスで距離を置いている。
その徹底ぶりは「どんなプレイヤーとしてファンに記憶されたいですか?」という質問に対する答えからもうかがい知れる。
「全然、何も考えてないですね。『あんな選手いたよね』ぐらいでいいです。他人からどう見られるかは気にしていません。子どもたちが自分のことを気にしてくれるのは嬉しいし、その数が多ければ素晴らしいことですけど、ファンにこう思われたいというのはない」
他人に迎合しない。マイペースな遠藤選手らしいスタンスだが、決して個人主義というわけではない。
「一般の方でも、ほかの会社の人から仕事を評価されるより自分の会社で評価されたほうが良いですよね。それと一緒で、外部から何を言われても、内部のことは内部の人にしかわからないので、チームメイト、監督、スタッフに評価されることが一番大切だと思っています。もちろん、第三者の意見として指摘を素直に聞き入れるべき時もあると思いますが、結局は内部で判断することなので、チーム内で評価される選手になりたいですね」
この言葉から、遠藤選手の繊細な一面がのぞく。

外部からの評価を気にしないのはなぜか?
それは一喜一憂してもチームのプラスにならないどころか、時には大きなマイナス要因にもなり得るからだろう。常に注目を集める代表で142試合(5月27日時点)も戦ってきた遠藤選手だからこそ、肌で感じているはずだ。
しかし、チーム内での評価は違う。
長い時間を一緒に過ごし、ともに戦ってきた監督、チームメイトやスタッフからの評価が低いのであれば 、そこには何か理由がある。それを自覚し改善することが、自分のためであり、チームのためになる。そこで突っぱねても、誰のためにもならない。だから、遠藤は徹底してチームの内部に目を向けるのだ。
中でも特に意識しているのは監督だ。
「どれだけ良いテクニックを持っていてもピッチに立たない限り評価はされません。評価されるためには何をしなければいけないかというと、ピッチの上で監督の期待に応えなきゃいけない。監督の期待に応えられなければメンバーから外される。そう考えると、監督の評価が一番大切ですよね。監督が求めているものを理解して、監督に自分の持ち味を理解してもらうためにも、日々触れ合う中で良い信頼関係を築いていかなければいけないと思っています」

遠藤選手の代表での出場試合数は142だが、遠藤選手曰く「代表に招集された回数だけなら200回ぐらいある」。冒頭にも記したように、代表レベルでは出場機会に恵まれない時期も長かった。代表の中核として台頭するようになったのは、イビチャ・オシム監督が遠藤選手の戦術眼を評価するようなってからである。
それだけに、「監督の評価が一番大切」という言葉には重みがある。
かつて試合に出られなかったときも、控え組になることを甘んじて受け入れていたわけではなく、先発に選ばれるために人知れず試行錯誤を続けてきたのだろう。

日本代表最多出場記録保持者の後悔

難しいのは、監督が求めるプレーと自分の特徴をすり合わせることだ。試合に出たいからといって自分を抑えて言われた通りにプレーするのは違う。遠藤選手は監督の意思を尊重しつつも「自分のプレー」にこだわってきた。
「監督はみな考え方も、生きてきた文化も違うので、毎回それぞれの色が出ているなとは感じますが、普段のプレーを評価されて代表に選んでもらっているので、クラブでやっていることをそのまま代表で出せばいいと思っています。自分の力が50%、70%しか出せなくて、それで評価されないという状態にはしたくないので、まずは自分が持っている力を出しきる。自分が100%の力を出すためにしっかり努力して、それでも評価されないのであれば仕方ないと思っています。基本的に、すぐ逃げたりはしません。やるべきことをやってから、それでもだめなら別な道を探したいと思っています」
「やるだけやってダメなら仕方ない」という遠藤選手だが、恐らくこの「仕方ない」は諦めるという意味とは違う。「今の自分では試合に出られない」という認識であり、「別の道を探す」とは自分をさらに高めるためにどうしたらいいのか、という問いではないだろうか。
そう感じたのは、遠藤選手に「若い頃の自分にアドバイスするとしたら?」と尋ねたら、「もっと努力すれば良かった」という答えが返ってきたからだ。
「努力すれば試合に出られるということではないし、いろいろなタイミングもあると思いますけど、若いうちにもっとやるべきことをやっておけば良かったと思うので、そのことにもっと早く気付きたかったですね」
日本代表最多出場記録を持つ男の、若い頃にもっと努力すべきだったという後悔。
それは試合に出られなかった時期の悔しさと、飽くなき探求心を表している。

(ライター:川内 イオ)

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